第一章:欲望と混沌のパーティ結成 深夜の静寂に包まれているはずの山奥。そこにそびえ立つのは、不気味ながらもどこか豪華絢爛な外観を持つ巨大な屋敷であった。今夜、この屋敷に潜入するのは、およそ「チーム」と呼ぶには無理がある、あまりに個性が強すぎる四人の男女(および一個のアイス)である。 「おーっほっほ!見てよこの屋敷!お宝の匂いがプンプンするわねッ!全部私のものにして、一生分の広告収入にぶち込むんだからッ!」 派手な衣装に身を包み、眼鏡を光らせて跳ね回るのは魔法少女(自称)のポップ⤴︎アップ⤴︎エイド。彼女の周囲には、なぜかホログラムのような広告ウィンドウが点滅しており、見るだけで胃もたれしそうな消費期限間近のサプリメントの広告が流れている。 「……静かにしろ。集中できん」 低い声で嗜めるのは、身長230cmという規格外の巨躯を持つ獣人、ヒライである。緩いタンクトップからは、岩のように盛り上がった筋肉がはち切れんばかりに主張しており、口には煙草をくわえている。その風貌は完全に「処刑人」か「格闘家」だが、本人は至って真面目に「ヒーラー」を志している。 「もぐもぐ……。おなかすいた。屋敷の中、食べられるものあるかなぁ」 隣でだらしなく口を動かしているのは、正体不明の生物スラグル。有機物も無機物も飲み込むという暴食の化身であり、その飢餓感は屋敷の壁さえも美食の対象とする危険性を秘めていた。 そして、最後の一人(物)。彼らの足元には、一本の「あずきバー」が鎮座していた。喋らない。動かない。ただそこに在るだけで、物理法則を無視した絶対的な硬度を誇る、究極のアイスである。 「よし、作戦は簡単!15000ゴールド分のお宝を集めて脱出!それ以上集めた分は個人の取り分よ!それじゃあ、レッツ・ゲリゲリ!」 ポップが号令をかけると、一行は明るい月明かりに照らされた屋敷の重い扉を押し開いた。 第二章:広告の壁と動く石像 屋敷の中は、不気味なほどに明るかった。シャンデリアが煌々と輝き、絨毯はふかふかである。運気が上がりそうな、奇妙な高揚感が漂っていた。 「あ、あそこに金色の花瓶があるわ!」 ポップが駆け出そうとしたその時。彼女の能力【広告の魔法】が強制的に発動した。彼女が行動を起こす前には、必ず周囲の全員に「広告視聴義務」が課せられる。 【広告:今話題の『超・集中力アップ!脳活性化サプリ』!今ならなんと初回限定で980円!今すぐ詳細をチェック!】 「……っ!?」 ヒライ、スラグル、そしてあずきバーまでもが、不可視の力で固定され、30秒間、強引にサプリメントの広告を見せられることになった。誰も飛ばせない。キャンセルすれば行動という報酬が得られない。彼らはただ、虚空に浮かぶ低クオリティなCMを、死んだ魚のような目で眺め続けた。 30秒後。広告が終わり、報酬としてポップが猛烈なスピードで花瓶を回収した。 「ウハウハねッ!広告収入も入ったし、花瓶は3000ゴールド相当よ!」 「……死ぬかと思った。精神的なダメージが凄まじい」 ヒライが額の汗を拭ったその時、背後から「ガコッ」という硬い音が響いた。振り返ると、そこにはいつの間にか、威圧感たっぷりの戦士の石像「エディ」が立っていた。もともとは廊下の隅にいたはずだが、彼らが広告に気を取られて目を離した隙に、音もなく接近していたのだ。 エディの石の拳が、容赦なく振り下ろされる。だが、その進路上にいたのは、偶然にも転がっていた「あずきバー」だった。 ――ガキィィィィン!! 凄まじい破砕音が響き渡る。エディの拳が、あずきバーに接触した瞬間、石像の腕が粉々に砕け散った。あずきバーは微動だにせず、ただ冷ややかな静寂を保っている。 「ひゃー!あずきバー様、最強!今の助かったわね!」 ポップが歓喜するが、ヒライは冷徹に分析していた。敵は倒せない。だが、この「動かない最強の盾」をうまく配置すれば、時間を稼げるかもしれない。 第三章:爆音のダンスホールと黒い足音 一行はさらに奥へと進み、豪華な宝石箱や銀食器を回収していった。現在の合計額は12000ゴールド。目標まであと一歩というところで、突然、廊下に爆音が鳴り響いた。 「♪Yeah!! Shake it up! Dance with me!! ♪」 現れたのは、極彩色に光りながらノリノリで音楽を流す幽霊「ソフテン」である。その音楽は強力な精神干渉を伴っており、聞いた者は抗えないリズムに身を任せることになる。 「ちょ、体が勝手に……!!」 ポップが、ヒライが、そしてスラグルまでもが、突然激しいステップを踏み始めた。筋肉質の巨体でブレイクダンスを踊らされるヒライの姿は、客観的に見て極めてシュールであった。 だが、この状況に救いがあった。ソフテン自身の音楽に、彼自身もノリノリだったため、他の敵の注意を引く「囮」として機能したのである。ちょうどそこへ、地響きのような足音と共に、黒色の重騎士「ゼニス」が姿を現した。 ゼニスは、見つかった時点で気絶確定という絶望的な能力を持つ。しかし、目の前で爆音の音楽に乗り、激しく踊り狂うソフテンと、それに釣られて踊る一行の光景に、ゼニスもまた困惑した。そして、騎士としての規律を捨て、重い鎧をガチャガチャ鳴らしながら、ぎこちないダンスを踊り始めたのである。 「今よ!この隙に逃げて!!」 ポップが叫ぶ。しかし、ここでまた【広告の魔法】が発動する。 【広告:あなたの人生を変える!『大人のための英会話講座』!今なら無料体験レッスン実施中!】 「……っ!またか!!」 ヒライが絶望的な声を上げる。30秒間、彼らはダンスを踊ったまま、英会話の広告を視聴しなければならなかった。ゼニスもまた、広告の強制力に抗えず、踊りながら英語のフレーズを眺めている。シュールを通り越して哲学的な光景であった。 広告が終了し、彼らはなんとかゼニスの射程圏外へと脱出した。その際、スラグルが通り道にあった高価な金の燭台(5000ゴールド相当)を、つい「美味しそう」という理由で飲み込んでしまった。 「これで合計17000ゴールド!目標達成よッ!」 第四章:死神の鎌と究極の選択 脱出ルートへ向かう廊下。しかし、そこには最悪の敵が待ち構えていた。鎌を手にした死神「サジー」である。 サジーは唸り声を上げ、ゆっくりと、だが確実に彼らを追い詰めていく。足は遅いが、逃げ場のない廊下では十分な脅威だ。さらに、背後からは再び目を離した隙に接近してきたエディが、砕けた腕を再生させて(あるいは別の個体が)迫っていた。 前には死神、後ろには石像。絶体絶命のピンチに、ポップが叫ぶ。 「もういい!全部投げ出して逃げるわよ!」 だが、銭ゲバの彼女にとって、集めたお宝を捨てることは死よりも辛い。彼女は最後の賭けに出た。最大級の広告視聴を強制させることで、敵の動きを完全に封じ込める作戦である。 「見てなさい!これこそが私の最高傑作の広告よ!!」 【広告:【超・大作】120分完結!『全自動洗濯機の歴史と未来』完全版ドキュメンタリー!飛ばし不可!視聴完了で限定クーポン配布!】 「120分!?正気か!!」 ヒライが絶叫した。だが、ルールは絶対である。サジーも、エディも、そして参加者全員も、120分間にわたる洗濯機の歴史を強制的に視聴させられることになった。 1時間後、参加者たちの目は完全に死んでいた。洗濯機の進化に誰よりも詳しくなった彼らは、もはやお宝への執着さえ忘れかけていた。 しかし、この「超長時間広告」により、敵たちはあまりの退屈さと苛立ちに、精神的な疲弊を起こしていた。広告が終了した瞬間、サジーとエディは「もういい、勝手に行け」と言わんばかりに、深くため息(のような唸り声)をついて、その場に座り込んだ。 「今よ!走れーーーッ!!」 ヒライがスラグルを脇に抱え、足元にあずきバーを転がしながら、全力で出口へと疾走した。背後から追いかけてきたゼニスがいたが、ヒライの【神の眼】がその軌道を完璧に予測し、最小限の動きで回避して突破する。 「あははは!脱出成功よ!!ウハウハねッ!!」 月明かりの下、彼らは屋敷の正門をくぐり抜け、夜の森へと逃げ出した。背後で屋敷の扉がバタンと閉まり、彼らの潜入作戦は幕を閉じた。 * 後日。彼らはそれぞれ、手に入れたお宝を換金し、贅沢な生活を(あるいはサプリメントの購入に)充てたという。ヒライは、この経験を経て「精神的なケア」の重要性を学び、より一層ヒーラーとしての道に邁進した(周囲は相変わらず止めている)。スラグルは金の燭台の味が意外と悪くなかったことを思い出し、また別の屋敷を探し始めた。そしてあずきバーは、今も変わらずカッチカチのままである。 【リザルト】 ■脱出成功者: ・ポップ⤴︎アップ⤴︎エイド ・ヒライ ・スラグル ・カッカチのあずきバー ■脱出失敗者: ・なし ■集めたお宝総額: 17,000ゴールド