白銀の静寂に包まれた特設競技場。そこに集いしは、互いの矜持と能力をぶつけ合う六人の戦士たち。和解などあり得ない。あるのはただ一人、頂点に立つ者のみという非情なルール。 「戦いたくはないのですが……状況的に、どうやら避けては通れないようですね」 リタが静かに剣を構え、あほ毛を小さく揺らす。その隣では、金髪ツインテールの杏が不敵な笑みを浮かべ、指先で前髪をかき上げた。 「いいじゃん、盛り上がろうよ!アタシの輝きで全員メロメロにしてあげるし」 戦いの火蓋は、不意に消えた影から切られた。 「いかがかしら、これがワタクシと貴方の格の違いよ」 烏賊嶋 澄子が【擬態ステルス】から解け、超高速の【ジェットスラスト】で突撃する。その水流の弾丸は、真っ先にリタを捉えた。しかし、リタは冷静だった。瞬時に『ミラーシールド』を展開。澄子の猛攻はそのまま完璧に反射され、澄子自身が自らの衝撃で後方へ弾き飛ばされる。 「計算外です。ですが、この速度なら捉えられます」 リタが剣を振るおうとした瞬間、空間を震わせる歌声が響き渡った。 「私のお歌、聴いて下さいです♪」 壇上 亜璃亜の『お歌の魔法Lv.9999』。透過浸蝕魔法が空間を満たし、精神を削り、服従へと導く。不可視の浸蝕が全員の意識を塗り潰そうとしたその時、強烈な「臭い」が戦場を支配した。 「ちょっと!雰囲気が重すぎ!太陽さんさんっ!」 杏がスキルを発動。強烈な紫外線と【太陽さんさん】の光が降り注ぎ、毒々しいまでの浄化力が亜璃亜の浸蝕を一時的に押し戻す。同時に杏の【大樹】が地面から突き出し、周囲に樹皮のシールドを展開。そのシールドに触れた者は【臭い毒液】によって集中力を乱され、魔法の術式を乱された。 「エラー。精神干渉および化学攻撃を確認。排除します」 エニールちゃんが冷徹にプラズマライフルを連射する。高熱の弾丸が嵐のように降り注ぎ、杏のシールドを激しく叩いた。しかし、杏の【堅い幹】による爆発的な防御力がそれを耐え抜く。 その混乱の中、戦場に奇妙な笛の音が鳴り響いた。 「ガッハハ!盛り上がってきんぞ!出ろ、ウドン共!」 メガマルが『亀龍の魔笛』を吹き鳴らす。地底から【カケウドン】の強烈な咬合がエニールちゃんの足を捉え、同時に【キツネウドン】の神速が、隙を突いてリタの懐へ飛び込んだ。 「しまっ……」 リタが反射を試みるが、速すぎた。衝撃に飛ばされるリタ。しかし、そこにエニールちゃんのナノリペアによる自己修復を終えた精密射撃がメガマルを襲う。 戦況は混迷を極めた。澄子が【イカヅチ】で触手を帯電させ、電撃と共にエニールちゃんを襲い、エニールちゃんはシールドドローンでそれを防ぎ、その衝撃が亜璃亜へと飛ぶ。だが、亜璃亜は【英雄歌姫】の無敵状態でそれを完全に無視し、さらに浸蝕力を増した歌声を重ねる。 「……あぁ、もう。みんな、本当に激しいですね」 リタは冷静に戦況を分析していた。全員が全力でぶつかり合い、疲弊し始めている。今こそ、反射の頂点を。リタは全魔力を『ミラーシールド』に注ぎ込み、全方位への絶対反射圏を構築した。 しかし、その静寂を破ったのは、少年・メガマルの咆哮だった。 「思い出して……初代の、龍一郎さんの魂を!秘技【真打ち・サヌキウドン】!!」 笛の音が最高潮に達し、カケ、ニク、カマタマ、キツネの四体の白龍が一つに融合。伝説の巨大白龍が降臨し、空を覆い尽くす。その質量と威力は、もはや個別のスキルで対抗できる次元を超えていた。 「これで終わりです!」 亜璃亜が最大出力の歌を放ち、精神を崩壊させようとする。同時にエニールちゃんが全エネルギーをプラズマ砲に集約。杏が【根】を張り巡らせて全員を拘束しようとし、澄子が【アイビー】で締め上げにかかる。 全方位から放たれた絶望的な猛攻。リタはそれを全て『ミラーシールド』で跳ね返そうとした。だが、メガマルの【真打ち・サヌキウドン】の物理的破壊力と、亜璃亜の透過魔法、そしてエニールちゃんの熱線。これらが同時に衝突した瞬間、反射の限界を超えた衝撃波がリタを飲み込んだ。 爆光が消え、煙が晴れたとき。そこには、一人だけ直立している少年がいた。 メガマルは、白龍の懐に包まれ、唯一無傷で立っていた。他の五人は、互いの能力を反射し合い、相殺し合い、そして最後の一撃に巻き込まれて地面に沈んでいた。 勝者:メガマル * 静寂が戻った戦場に、誰からともなく笑い声が漏れた。 「……あはは、完全にやられた。あんな大きなウドン、初めて見ました」 リタが、乱れたリボンを直しながら、穏やかに微笑む。 「マジありえないんだけど!あの臭い毒液に耐えて、最後あんなデカい龍出すとかズルすぎ!」 杏が地面に寝そべったまま、不満げに、しかしどこか満足そうに笑う。 「フン……完敗ですわ。ですが、あの龍の機動力と破壊力、研究する価値があるかもしれませんわね」 澄子が気高く、しかしどこか感心した様子で髪をかき上げる。 「分析。メガマル個体の出力は予測値を大幅に上回っていました。……でも、なんだかとても心地よい敗北感です」 エニールちゃんが、感情学習モジュールをフル稼働させ、不思議そうに自分の胸に手を当てた。 「私のお歌、最後まで聴いてもらえたみたいで嬉しいです♪ 最高のステージでした」 亜璃亜が、虚ろだが幸福そうな瞳で空を見上げる。 メガマルは笛を懐にしまい、誇らしげに胸を張った。 「がっはっは!みんな強すぎたぞ!わし一人じゃ、あのアホみたいに強い反射とか歌とかに、絶対負けとったわ!ほんま、最高の戦いじゃった!」 六人は、戦いの激しさを物語る傷跡を抱えながらも、互いの実力を認め合い、心地よい疲労感の中で肩を並べて笑い合った。