ロンリールーム:白黒の迷宮 白黒の世界が広がっていた。色のない空は灰色の雲に覆われ、足元の田舎道は乾いた土と枯れた草で埋め尽くされている。風が吹き抜け、見知らぬ童謡のメロディーがどこからともなく響き始める。蛙の鳴声が低く唸り、鴉の鳴き声が鋭く混じる。最初はただの不気味なBGMのように思えたが、次第に頭の中に染み込み、思考を蝕む重苦しい圧迫感を生み出していく。 そこに、二人の挑戦者が迷い込んでいた。一人は白い修道服を纏った黒髪の美女、シスター・ルージェ。眼を包帯で隠し、穏やかな微笑みを浮かべながら祈りを捧げている。彼女の周囲には、謎めいた超常的な圧が漂い、空気そのものが重くなるようだ。もう一人は、平穏を望む普通の高校生、名を明かさない彼──一人称「俺」と自称する、ごく平凡な少年の姿。制服姿で、少し戸惑った表情を浮かべているが、その瞳の奥には底知れぬ力が潜んでいる。 「ここは……何だ? 変な歌が聞こえる……」高校生が呟き、周囲を見回す。ルージェは静かに佇み、祈りの言葉を紡ぐ。「旧支配者の御名のもとに……この歪んだ世界を導きたまえ。」彼女の声は穏やかだが、聞く者の心を捉えて離さない神秘的な響きを帯びている。 二人は無言で歩き始める。道は不規則に分岐し、奇妙な光景が次々と現れる。最初に現れたのは、【小道】──長い畦道だ。白黒の畑が左右に広がり、足元はぬかるんでいる。高校生が先頭を歩き、ルージェが後ろから静かに続く。「気をつけろよ、なんかおかしいぞ。」彼の言葉に、ルージェはただ頷くだけ。 突然、高校生の足が滑る。うっかり転んだ拍子に、道端のマンホールがぱかりと開き、彼の体が吸い込まれるように落ちていく。「うわっ!」叫び声が響くが、すぐに闇に飲み込まれる。中を覗き込んだルージェの耳に、泣き声が聞こえてくる。だが、彼女は動じず、ただ祈りを続ける。 高校生はマンホールの中を這うように進む。暗闇の中で、⚠️の警告が脳裏に閃く──もう戻れない。背後で蓋が閉まる音がし、道は永遠の迷路へと変わる。彼の即死能力が無意識に発動し、周囲の「害」を排除しようとするが、この場所は概念すら歪め、能力を飲み込む。精神が蝕まれ、童謡のメロディーが頭の中で増幅していく。 一方、ルージェは畦道を進み、次に【草原と椅子】に辿り着く。広大な白黒の草原に、ぽつんと椅子が置かれている。彼女は座らず、祈りを続けながら通り過ぎる。だが、高校生の脱落を知ったかのように、鴉の鳴き声が激しくなる。ルージェの歌声が微かに漏れ始める──「Carol of the Bells」のモチーフ。複数人の声が反響し、草原全体に広がる。 道は繰り返し現れ、【交差点】が現れる。十字路に高速で車が往来し、引き返す契機を狙う者を引き潰す。ルージェは圧倒的な力で車を寄せ付けず、静かに渡る。高校生はマンホールから這い出そうとするが、精神の崩壊が始まり、抜け殻のように動かなくなっていた。 やがて、道の果てに【標識とトンネル】が現れる。三角の標識に人の半身が描かれ、奥に黒いトンネルが口を開けている。ルージェは立ち止まり、祈りを捧げる。高校生の気配はすでにない──彼は最初の脱落者となっていた。ルージェは入るか引き返すかを選択する。彼女の心は旧支配者の帰りを求め、トンネルへと進む。全身が一瞬で溶け、全滅の運命が待つが、彼女の歌声は最期まで響き続ける。 -脱出者: なし -脱落者: 平穏望む普通の高校生, ルージェ