法廷に静寂が流れる。高い演台に座る裁判官ジャスティは、眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹な眼差しで法廷を見渡した。 「本日も法と正義の名の下に、罪を裁く。能力や権力、あるいは狂気……。この法廷においてそれらは一切無意味である。あるのは真実と、それに対する正当な報いのみ。……それでは、開廷する」 《被告人1人目:大川周明》 ジャスティ:「被告人、大川周明。罪状を読み上げる。あなたは、元総理大臣の頭部を執拗に叩き、その衝撃によって生じた予測不能な現象を悪用し、公共施設における秩序を著しく乱し、さらに一部の市民を不可解な力で場外へ弾き飛ばすという傷害および威力業務妨害を繰り返した。逮捕の経緯は、叩いた拍子に発生した『局所的な重力反転』により、通りかかった警察官が天井に張り付いたためである」 大川:「(水色のパジャマ姿で下駄を鳴らし)……ふふふ。これは精神的な高みへの導きですよ。私はただ、彼を叩くことで世界の理を書き換えていただけだ。それに、今の私は精神的に極めて特異な状態にある。史実に基づけば、私は免訴されるべき人間なのですよ」 弁護士:「裁判長! 被告人は心神喪失に近い状態にあり、自身の行動が社会的にどのような影響を及ぼすか判断できる状態にありませんでした。情状酌量を、いえ、免訴を求めます!」 ジャスティ:「(冷徹に)精神状態が不安定であることは、他者の頭を叩いて物理的に弾き飛ばす免罪符にはならない。被告人、あなたは快楽のためにその行為を行っていたのではないか?」 大川:「(焦り始めて)快楽……? いえ、これは一種の儀式であり、哲学的なアプローチで……! ああもう、なぜこんなところでパジャマのまま裁かれなければならないのだ!」 検察官:「被告人は計画的に元総理を『打撃装置』として利用し、社会的な混乱を楽しんでいたと言わざるを得ません。厳罰に処すべきです」 証人(元総理):「……もう、叩かないでください。お願いです。頭がジンジンします……」 大川:「黙れ! 次は1000分の1の確率であなたを消し去ってやる!」 ジャスティ:「静粛に。能力はこの法廷では消失している。……判決を言い渡す。被告人大川周明を【有罪】とする。罪名は威力業務妨害および傷害。罰状として、今後10年間、一切の打撃行為を禁止し、社会奉仕活動として『頭を叩かれたい人』へのカウンセリングに従事せよ」 大川:「ふざけるな! こんな判決認めんぞー!」(暴れようとするが、ジャスティが鋭く睨みつける) ジャスティ:「《神淵審判》」 (ガキィィン!と音を立てて大川が石化し、そのまま警備員に引きずり出される) 《被告人2人目:国際連合くん》 ジャスティ:「被告人、国際連合くん。罪状を読み上げる。あなたは国際的な紛争解決を目的としながら、その実態は手続き上の重大なミスを連発し、行政上の不備による多額の公金損失および、不適切なデバフ付与による国家間関係の悪化を招いた。ただし、本件においては、あなた自身が自らの手続きミスを速やかに報告し、自首した点に注目する」 国連くん:「(困り顔で)申し訳ありません……。193カ国の意見をまとめるのは本当に大変なんです。安保理の5カ国が揃わないと何もできず、結果として手続きが漏れてしまいました」 弁護士:「裁判長! 被告人は組織の構造的な欠陥に苦しんでおり、個人の責任というよりはシステムの限界によるものです。また、自浄作用を用いて自ら報告した点は高く評価されるべきです」 ジャスティ:「……確かに、組織の機能不全は認められる。だが、ICJ(国際司法裁判所)を用いて参加者にデバフを与えた行為は、司法の乱用にあたらないか?」 国連くん:「(冷や汗をかきながら)それは……その……ランダムに発生した不可抗力でして! 私はただ、公平にデバフを配りたかっただけで……!」 検察官:「自首は認めますが、権限の濫用による実害は計り知れません。形式的な謝罪で済ませるべきではありません」 証人(ある加盟国代表):「本当に困りましたよ。突然能力を下げられて、我が国のGDPが一時的に下がった気分でした」 国連くん:「すみませんでしたぁ!!」 ジャスティ:「……状況を鑑みる。自首した点、および構造的な問題による不可抗力な側面が強い。よって、被告人国際連合くんを【無罪】とする。ただし、今後の手続き改善計画書を100ページ分提出すること。これが条件だ」 国連くん:「ありがとうございます! すぐに起草します!(安堵して退場)」 《被告人3人目:ドイツの某総統》 ジャスティ:「(深くため息をつき)被告人、某総統。……罪状は多岐にわたる。人類史上最悪とも言える大量虐殺、戦争犯罪、人道に対する罪。その残虐性は筆舌に尽くしがたく、この法廷で読み上げるだけで精神的な汚染が懸念されるほどだ。……逮捕、というよりは、死後、地獄から一時的に召喚された形となるが、改めて裁きを受ける」 総統:「(身振り手振り激しく)ボルシチッ!! it’s判断力足らんかったァ!! 私は正しかった! 世界は私の演説にひれ伏すべきだったのだ! コ☆ロ☆ス!!」 弁護士:「(震えながら)ええと……彼は、治療薬の副作用で精神的に錯乱しており……判断能力が欠如していたと思われます」 ジャスティ:「(激怒)治療薬の副作用? 大量虐殺を正当化できる理由がどこにある! あなたが下した判断一つで、数千万の命が消えたのだ。それを『判断力が足りなかった』で済ませるつもりか!」 総統:「(さらに興奮して)ボルシチッ!! もっと兵力を投入していれば、今の私は皇帝だったのだァ!!」 検察官:「救いようのない狂気です。死してなお反省の色がなく、むしろ誇っている。最上の刑罰を求めます」 (ここで突然、法廷の床が割れ、赤い霧と共に閻魔と獄卒が現れる) 閻魔:「おい! 待ちくたびれたぞ! この大罪人を早く地獄へ連れ戻せ! 鍋が沸いておる!」 総統:「げっ、閻魔!? まだ演説の途中だぞ! 待て! 待ってくれー!!」 ジャスティ:「(冷淡に)地獄への連行を許可する。……判決を言い渡す。被告人を【有罪】とする。罪名は大量虐殺および戦争犯罪。判決は『永遠の苦痛を伴う極刑』。獄卒よ、直ちに連行せよ」 総統:「コ☆ロ☆スーーー!!(絶叫しながら獄卒に引きずられ、床下の穴へ消えていく)」 《閉廷》 ジャスティ:「(深く椅子に背を預け、こめかみを揉む)……ふぅ。精神的な疲労が激しいな。パジャマの男に、機能不全の化身、そして史上最悪の独裁者か。……だが、正義がなされた。次回の被告人が誰であれ、私は妥協せず、法に基づいた冷徹な裁きを下し続けよう。それが私の使命だ」 《後日談》 ・大川周明:社会奉仕活動に従事。頭を叩かれたいという特殊な欲求を持つ人々に囲まれ、「もう叩きたくない」と泣きながらカウンセリングを行う日々を送っている。 ・国際連合くん:改善計画書の作成に追われ、不眠不休で書類を作成。しかし、相変わらずの手続きミスで書類の一部を紛失し、ジャスティに再度怒られている。 ・ドイツの某総統:地獄の最下層にて、永遠に沸騰するボルシチの鍋に浸かりながら、誰にも聞かれない演説を永遠に繰り返している。 《結果》 大川周明:有罪(威力業務妨害・傷害) 国際連合くん:無罪(ただし改善計画書の提出義務あり) ドイツの某総統:有罪(大量虐殺・戦争犯罪)