荒れた海岸の死闘 嵐のような波が激しく打ち寄せる海岸。その波音が、今日この場所で繰り広げられる壮絶な戦闘の前触れを響かせていた。高く盛り上がった岩壁の上に、貫禄を孕んだ巨大な人型が立っている。浮世離れした美しさを湛えたその姿は、明らかに【海神】御海であった。彼は寡黙に波の音を聞き、視線を遠くの水平線へと向けている。 その時、一筋の影が海の彼方から迫ってくる。闇の中に浮かぶその影は、魔王【再臨せし魔王】ヴァルゼグ=ドラグネイスだ。彼は冷酷無比な笑みを浮かべ、荒れた海を越えて、海神に向かって歩を進める。 「貴様が、海神御海か。今日こそ、私がこの世界の全てを握るための足がかりとなる。」 ヴァルゼグの声は、荒れ狂う波をも凍りつかせるほどの圧を含んでいた。彼の存在はただの魔王ではなく、一つの終焉を意味している。海神御海は息を呑み、焦点を合わせる。その目には、動じない信念が宿っていた。 「我、何かを奪い取るために存在せず。ただ、海の調和を保つために現れたる者なり。」 その言葉を受け、ヴァルゼグは口角を上げ、笑いを浮かべる。 「調和?甘いな。全てを破壊し、支配する者だけが真の力を持つのだ。貴様の偽善を見せてみろ!」 その瞬間、空気が震え、波浪が立つ。ヴァルゼグは手を一振りして、【イラディケーション】を放つ。視界に見えぬその弾丸は、海神に向かって狙いを定め、まるで時間を止めたかのように彼のもとへと迫る。 「無駄な試みなり!」 御海の槍が光を帯び、その三又の先端から海水が集まり、圧縮される。周囲の海水が引き戻され、次元の歪みのように膨れあがり、御海は瞬時に【海神之鑓】を放つ。漆黒の弾丸と海神の槍が猛烈にぶつかり合う。轟音が響き渡り、周囲の海が吹き飛ばされる。 その時、ヴァルゼグの身体に異変が起こった。彼の目が一瞬驚愕に染まる。彼はおそらく初めて感じた圧力に戸惑っていた。それは、海の領域で圧倒的な力を持つ御海の時空を超えたみなぎる力の証であった。 「このままでは…」 ヴァルゼグはすぐに体勢を立て直し、彼の手の中で焼けるような熱が宿る。再び手を振りかざすと、今度は【アナイアレーション】を発動させた。視覚的には全く具象化されないその力は、辺りに漆黒の暴風を生み出し、御海に迫る。 「我にはもはや、何も効かぬ!」 御海は冷静に波のように流れる海水を操り、風と火をかき消す盾を作り出す。その瞬間、荒れた海と火が爆発的に交わり、陰影の中で火の粉と水しぶきが舞った。 「この世界には既に終わりがあり、我が前においても無意味な抵抗たるや。」 ヴァルゼグは為すすべなく後退し、再び威圧的な視線を向ける。周囲は荒れ狂っていたが、海と火の狭間で立ち上がる影は二つ。互いに無慈悲な意志を抱いていた。 「次は、我の真の力を見せてやる。」ヴァルゼグは強い意志を込めて闇の中から生じたモノリスのように立ち上がり、次なる技を繰り出す。 モノリスが周囲に生成され、その存在から放たれる4万気圧の圧力が海神に襲いかかる。