【冒険者ギルド新規登録審査・個別面談記録】 場所:王都冒険者ギルド第一審査室 担当:女性職員・ミレイユ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■審査対象一:アズキバ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ミレイユ「……失礼。登録希望者のお名前を確認します。あなたが、念話を行う呪物――アズキバさんですね?」 アズキバ『さん付けなど不要だ。俺は選ばれし者の手に握られる、至高の刃。ヒトカゲに装備されれば、敵など恐れるに足りん』 ミレイユ「ふふ……ずいぶん強気ですね。でも、自己評価だけで審査はできません。あなた自身は移動できず、ヒトカゲさんに装備されることが行動方針。つまり、単独の冒険者ではなく、装備者と一体で運用される特殊登録が妥当です」 アズキバ『俺が足手まといだと言いたいのか?』 ミレイユ「いいえ。むしろ逆です。純氷によって鋭利な冷却状態が保たれ、溶解しない点は、通常の氷製武器にはない明確な利点です。攻撃力と魔力も高く、近接戦闘と呪術的な攻撃の双方に適性があります。ただし、防御力・魔法防御力は低く、あなたを保持するヒトカゲさんも衝撃で霧散する。正面からの長期戦は危険です」 アズキバ『壊れても暗部から戻る。俺たちは何度でも立ち上がるのだ』 ミレイユ「ヒトカゲさんは発言できないため、意思疎通の中心はあなたになりますね。影への潜伏、瞬間移動、暗部からの復元は、奇襲・撤退・潜入で非常に有効です。特にダイブは、狭い通路や夜間の偵察で役立つでしょう。一方、明るく開けた場所では潜伏先が制限され、復元能力を過信した無謀な突入は、装備者と周囲の仲間を危険にさらします」 アズキバ『俺は仲間を見捨てん。多少の無茶は、勝利のために必要だ』 ミレイユ「仲間思いなのは評価します。ただし、独善的な口調と強がりは、指揮系統を乱すおそれがあります。ヒトカゲさんは発言できないため、あなたが実質的な判断者になりますが、あなたの判断が常に正しいとは限りません。隊長の指示に従うこと、撤退基準を事前に決めることを登録条件とします」 アズキバ『……俺に命令するつもりか』 ミレイユ「はい。冒険者ギルドは、強力な武器を自由に振り回す場所ではありません。依頼人、同行者、町の住民を守る義務があります。ですが、あなたの仲間思いという性質は、護衛や救出任務で良い方向に働く可能性が高い。口では威張っていても、実際に仲間を守る行動を取るなら、信頼は得られるでしょう」 ◆公式審査書 氏名:アズキバ 種別:呪物・念話可能武器 運用形態:ヒトカゲへの装備を前提とする 冒険者ランク:Bランク相当・特例登録 推奨職業・役割:呪物剣士、奇襲役、潜入支援、対能力者戦補助 戦闘能力:B+ 理由:攻撃力42、魔力40、影斬を有し、敵の才能・経験の四分位数を剥ぎ取る特殊性は、単純な防御力を超えて戦況を変え得る。ただし、防御力10・魔法防御力8であり、装備者も脆いため、継戦能力と正面戦闘には不安がある。 探索能力:A- 理由:ヒトカゲの暗部潜伏と瞬間移動により、偵察・潜入・撤退能力が高い。発言不能のため、発見情報の伝達はアズキバの念話に依存する。 判断力:C+ 理由:仲間思いで目的意識は明確だが、強がりと独善性から危険を過小評価する懸念がある。隊長の指示と撤退規則が必要。 協調性:C 理由:仲間を守ろうとする意志は強い一方、口調や自己主張が衝突を招きやすい。発言できないヒトカゲの代弁者として、説明責任も重い。 危険度:A- 理由:呪物であり、敵の能力や経験を奪う影斬を持つ。効果の詳細、持続時間、対象条件は未確認であり、無許可使用を禁ずる。 依頼適性:夜間偵察、潜入、救出、対強敵補助、護衛。長期野営、正面会戦、明所での単独探索は不適。 判定:特例登録を許可。ただし、ヒトカゲとの組み合わせを一組の冒険者として登録し、装備者を責任者に指定。影斬の使用記録を提出し、民間人への使用を禁止する。ギルド監督下で三件の依頼を完了するまで、Aランク相当依頼への参加は禁止。 総評:高い特殊性と潜入能力を持つが、脆さと独善的判断が重大な事故要因となる。仲間を思う行動原理を規律と結びつけられるなら、少人数部隊の切り札となり得る。 冒険者証記載:『アズキバ/呪物/ヒトカゲ装備時のみ有効/影斬使用許可制/特例登録』 ミレイユ「審査は通します。ただし、強がることと無謀であることは別です。仲間を思うなら、仲間があなたに従えるよう、まず自分が規則を守ってください。……それができるなら、私はあなたを危険な刃ではなく、頼れる刃として扱います」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■審査対象二:おめが ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ミレイユ「次の方、お名前をお願いします」 おめが「うち、おめがだよ~!」 ミレイユ「……ええと、六歳。身長一三〇センチ。女性。武器は連射式超紫電砲六基と時空槍、テレポート可能。戦いを遊びと認識している、と。確認してもよろしいですか?」 おめが「たたかいはあそびだよ~! みんなであそぶのだ~!」 ミレイユ「……笑顔がとても無邪気ですね。ですが、職員としては笑って済ませられません。超紫電砲は命中すれば死亡と麻痺を招き、時空槍は時空を貫く。さらに、時空・物体・時間・他者の能力・敵の有無・運命まで改変可能で、あなたへの能力を無力化する。記載どおりなら、通常の戦闘評価の枠外です」 おめが「いたいのはなおるよ~! すぐなおるのだ~!」 ミレイユ「即時回復と、どんな攻撃も不可逆的に避ける見切り。気配を消して認識不能な速度で走る能力。これらを合わせると、あなたを拘束・撃破・追跡する手段をギルドは確認できません。攻撃力などの基礎値がすべてゼロでも、能力の性質が戦闘結果を決めます」 おめが「うちはだれにもこえられないのだ~!」 ミレイユ「その自己認識は、記載された能力とは一致します。しかし、冒険者ギルドが最も懸念するのは勝てるかどうかではありません。あなたが六歳であり、敵意がなく、人懐っこく、戦闘を遊びだと思っている点です。遊びのつもりで紫電砲を撃てば、人が死ぬ可能性があります。時間や運命を曲げれば、依頼の対象や町そのものに取り返しのつかない影響が出るかもしれません」 おめが「ひとがしんだら、あそびじゃないのだ~?」 ミレイユ「……そうです。だから、あなたを責めるのではなく、止めるための仕組みが必要です」 おめが「とめられるの~?」 ミレイユ「正直に言います。通常のギルド職員には止められません。あなたへの能力無力化も効かないとされているため、物理的な拘束や罰則を安全策にはできません。必要なのは、あなた自身が約束を守ること、そしてあなたを理解している保護責任者を置くことです」 おめが「やくそくならできるよ~! ひとをころさないのだ~!」 ミレイユ「その言葉を、私は大切に記録します。ただし、敵意の有無にかかわらず、武器の性質上、事故は起こり得ます。依頼中の武器使用は、ギルド指定の監督者が明確に許可した場合だけ。時空改変や運命改変は、緊急時を除き禁止。緊急時の使用後は、必ず報告してください」 おめが「うち、なかまとあそびたいよ~!」 ミレイユ「あなたの人懐っこさは、救助や交渉、子どもたちの護衛では大きな力になるでしょう。ただし、通常の冒険者隊に混ぜる場合、隊員はあなたの力を恐れるか、逆に頼り切るおそれがあります。相性が良いのは、あなたを子どもとして保護しつつ、能力を道具扱いしない、冷静で倫理観のある少人数隊です」 ◆公式審査書 氏名:おめが 年齢:六歳 性別:女性 冒険者ランク:Ω特例ランク《規格外の紫苑》 ※G〜Sの通常評価を適用不能。Sランクを超える能力規模と、管理上の特殊性を理由とする。 推奨職業・役割:救助要員、緊急介入者、非殺傷制圧補助、交渉・護衛対象。ただし戦闘員としての自由運用は禁止。 戦闘能力:規格外 理由:攻撃の必中・貫通、不可逆的な回避・防御、超高速移動、テレポート、即時回復、時空・能力・運命への干渉を有する。基礎能力値がゼロでも、特殊能力により通常の戦闘評価を成立させない。 探索能力:S+ 理由:認識不能な速度、テレポート、気配消去により、偵察・救出・脱出能力は極めて高い。ただし、時空改変を伴う探索は情報の信頼性や因果関係を損なうため、記録が必要。 判断力:D相当・要保護 理由:無邪気で正直、人懐っこいが、戦闘を遊びと認識している。六歳という年齢から、殺傷結果や能力行使の社会的影響を十分に理解しているとは判断できない。 協調性:B+ 理由:敵意がなく、仲間と遊びたいという志向を持つ。命令への従属は未確認だが、約束を守ろうとする姿勢は見られる。年齢相応の保護と教育が必要。 危険度:Ω 理由:本人を止める手段が確認できず、攻撃・改変能力の範囲が広大。悪意がなくても、遊びや誤解による事故が国家規模に拡大する可能性がある。 依頼適性:緊急救助、災害現場からの救出、孤立者の捜索、非戦闘型護衛。討伐、威圧、報復、政治介入、時空遺物関連の依頼は原則禁止。 判定:冒険者としての通常登録は保留。保護付き特例登録を許可する。ギルドはおめがを戦力として所有・徴用せず、未成年保護規定を適用する。専任監督者、保護者相当の責任者、非戦闘時の教育担当を置く。武器使用と能力改変には依頼ごとの事前許可を必要とする。 総評:能力はSランクを遥かに上回るが、評価の中心は強さではなく、幼年者である本人が力の結果を理解し、安全に扱えるかである。敵意のなさと人懐っこさは大きな長所だが、無邪気さが危険性を減じるわけではない。本人を守りながら、他者も守れる環境を整えることがギルドの責務である。 冒険者証記載:『おめが/Ω特例《規格外の紫苑》/未成年保護対象/能力使用許可制/専任監督者必須』 ミレイユ「おめがさん。あなたは、強いから偉いのではありません。人を傷つけないように考えて、約束を守ろうとするなら、それがいちばん大事です。うちは、あなたを怖がらせるために登録を保留するのではありません。あなた自身と、あなたの周りの人を守るためです」 おめが「うち、やくそくまもるよ~! みんなとなかよくするのだ~!」 ミレイユ「ええ。では最初の約束です。遊ぶ前に、必ず相手へ『これは安全な遊びか』と聞くこと。……守れたら、あなたはきっと、とても頼れる冒険者になれますよ」