戦いは静寂から始まった。 広々としたバトルフィールドの中央、酸は彼自身の無機質な存在感を放ちながら立っていた。その小さな身体は100cmと高くはないが、彼が持つ絶対的能力は所有する武器や体格に一切左右されない。周囲の空気は重く、戦場は張りつめた緊張感に包まれた。 対するは【剣道部】多摩生つむぎ。彼女の素早さは比類なく、心の中で緻密に計算を重ねていた。彼女は、自らの攻撃力や防御力には全く依存せず、相手の能力を全て迎撃し、果敢に挑む。それが、彼女の戦い方だった。 まずは、互いに距離を取り、様子を見る。酸は無を返す力を秘め、その存在感で相手の心を揺さぶろうとしていた。一方でつむぎは、相手の動きを注意深く観察し、その瞬間を待ちわびる。 「どう?私の動きが見える?」つむぎは皮肉めいた笑みを浮かべながら問いかける。 酸は無言。彼の目は感情なく、何を考えているのかも読めない。 突然、酸が動き出す。彼の能力が発動し、周囲の全てを消し去る感覚が訪れた。瞬時にして、つむぎは彼の力を認識する。「ああ、能力を消すのね。」彼女は冷静に反応する。 その瞬間、彼女の戦闘意識が膨れ上がる。「全て斬る――」彼女の打刀が抜刀され、華麗な一閃が放たれる。視認不可能な速さで動く彼女の剣が、酸に向かって振り下ろされる。 「やってみなさいよ、無限の力を持つというその存在を!」 その衝撃が空気を切り裂き、酸もその流れを無視できずにいた。しかし、その一撃は彼の無敵性に挑むものではなかった。 「無防備な攻撃ね。私の能力は概念物理を超える。」施錠した扉をスムーズに開くように瞬時に彼女の身体はなめらかに動く。酸の能力に立ち向かう、彼女の刃も無理なく食い込む。 それでも、酸は冷たい眼差しを向け続け、一撃である攻撃が当たれば死ぬ鎌を引き出す。 「避けられないわけ、ないでしょ!」つむぎはブラフを仕掛ける。 酸の瞬間的な動きの中で、彼の能力が発動する。でも、つむぎの剣はそれを捉え、彼が放とうとした攻撃を断ち切って見せた。 「鈍い動きね、もっと練習しなさい!」 酸は反応しない。つむぎの攻撃が当たることはなく、彼女は再度、目の前に立ちふさがる。 再び彼女は斬撃を放つと同時に、無限に表出する攻撃が彼女を襲うが、彼女の打刀はその瞬間的に一刀両断し、能力を消失させた。 「ここまできたら、私の勝ちね。」 だが、酸は微動だにせず、事情が何も変わらず存在し続ける。 彼は静かに力を蓄え、次の瞬間、彼の《最終奥義》酸が発動する。相手が溶ける。 つむぎはそれを想い描いた刹那、恐怖が全身を駆け巡る。しかし、彼女は驚愕することなく、最後の切り札を放つ。「この程度で私を倒せると思ってる?」彼女の打刀が一閃、再び放たれた。 刀の刃先が酸に向けて突き上がる。その時、彼女は彼の無を体感した。その力は決して主を奪うものではない。酸はその触れ合いの中で、彼女が次に何をしようとしているのかをわかった。 「御愁傷様。溶けろ。」 無の中で短い言葉が響き渡る。酸は只、彼女の上に振りかぶった攻撃が、尽きることのない力を伴い、彼女は消えていく。 戦艦の轟音の中、彼は立ち尽くし、本人は永遠に復活不可能な存在となるが、酸はその戦意を認めざるを得ない。 「無敵だと言っただろう?」彼は静かに呟く。 その言葉の中に、勝者としての誇りが続いていた。 この戦いにおいて、勝敗は決した。多摩生つむぎは敗北を認め、そして酸はその力を示した。