【第1日】 意識が戻ったとき、四人は鬱蒼とした緑の壁に囲まれていた。空を遮るほどの巨大な樹木、地面を覆う粘り気のある苔。湿度は限界まで高く、肌にまとわりつく空気が不快だ。楽出依々寧は地面に寝転がったまま「えー、ここどこ? めっちゃ面倒くさいんだけど~」と口を尖らせる。対照的にシェイドは即座に立ち上がり、弓を構えて周囲を警戒していた。ミシェル・ブロントは目を輝かせ、「なんて未知の植生だ! 記録に残っていない地域かもしれないぞ!」と興奮気味にノートを取り出す。キャリパーは自分の装備を確認し、「ここは危険な場所なのです! みんな、まとまって行動しないとダメなのです!」と声を張り上げた。 【第2日】 移動を開始したが、密林は残酷だった。道など存在せず、鋭い葉が皮膚を切り裂く。依々寧は「歩くの疲れた~」と何度も足を止めるが、省エネスキルのためか、他の者が肩で息をする中で彼女だけは涼しい顔をしていた。シェイドが先導し、ナイフで藪を切り開く。ミシェルが所持していた水2リットルを分配し、最低限の水分を確保した。しかし、夜になると気温が急降下し、同時に得体の知れない獣の遠吠えが響き渡った。彼らは急いで火を起こし、小さな陣地を作った。 【第3日】 食料の確保が急務となった。ミシェルが植物の知識を駆使して edible(食用)な果実を探したが、この密林の植物は狡猾だった。見た目は美味しそうだが、皮に強力な神経毒を持つ果実が混在している。キャリパーが誤って一つの果実に触れそうになったが、シェイドが瞬時に腕を掴んで止めた。「触れるな。皮膚から吸収される猛毒だ」と冷徹に告げる。幸い、ミシェルが所持していた携帯食糧で飢えを凌いだが、残り時間は少ない。 【第4日】 移動中、彼らは小さな川に突き当たった。依々寧は「ここでごろ寝しよ~」と川辺に横たわったが、その瞬間、水面から色鮮やかなヘビが飛び出した。猛毒を持つ水蛇だった。蛇の牙が依々寧の太ももに深く突き刺さる。鮮血が舞い、依々寧は悲鳴を上げた。しかし、彼女はパニックにならず、大量に溜め込んでいた水分を一度に飲み干す「給水」を発動。体力を強引に回復させ、毒の回りを遅らせた。ミシェルが即座に救急セットから抗毒剤のような処置を試みたが、毒は強く、依々寧の脚はどす黒く変色し、激痛が走った。 【第5日】 依々寧の脚の傷が化膿し始めた。密林の細菌は凶悪で、傷口から膿が溢れ出す。キャリパーが「カットイン!」の技を使い、不具合を修正しようと試みた。奇跡的に傷口の炎症は抑えられたが、完全な治癒には至らなかった。肉体が物理的に損壊し、細菌に侵食された状態を完全に「無かったこと」にするのは、この密林の法則では困難だった。シェイドは周囲に罠を張り、夜間の襲撃に備えた。彼らは次第に、ここが逃げ場のない地獄であることを理解し始めていた。 【第6日】 原住民との遭遇。言葉を持たず、泥と血で塗り固められた肌を持つ人々が、茂みから彼らを監視していた。ミシェルは好奇心から歩み寄ろうとしたが、原住民の一人が投げた骨の槍がミシェルの肩を貫いた。鈍い音がし、肩から鮮血が噴き出す。ミシェルは激痛に顔を歪ませたが、不屈の精神で耐えた。シェイドが即座に「龍穿」を放ち、槍を投げた原住民の眉間を正確に射抜いた。頭蓋が砕け、脳漿が飛び散る。原住民たちは恐怖して逃げ去ったが、彼らが敵意を持っていることは明白だった。 【第7日】 ミシェルの肩の傷が熱病を媒介する虫に狙われた。小さな、しかし凶暴な虫が傷口に卵を産み付けた。皮膚の下で何かが蠢く感覚。ミシェルは高熱に浮かされ、意識が混濁し始めた。キャリパーが必死に看病し、シェイドが周囲を警戒する。依々寧は「大変そう~」と言いながらも、自分の水分をミシェルに分け与えた。密林の熱病は致死率が高く、内臓をじわじわと破壊する。ミシェルの呼吸は浅くなり、肺に水が溜まり始めた。 【第8日】 ミシェルの容態が悪化し、血を吐き出した。肺胞が破壊され、呼吸をするたびに口から泡混じりの血が漏れる。ミシェルは朦朧としながらも、「歴史を……記録しなきゃ……」と呟いた。キャリパーが泣きながら「カットイン!」を連発したが、病という内部からの崩壊に技が追いつかない。密林の冷酷なルールは、一度壊れた生命を簡単には戻さない。 【第9日】 ミシェル・ブロント死亡。彼女の身体は熱病により内臓が溶解し、多臓器不全に陥った。最期は激しい痙攣と共に、眼球から出血し、静かに息を引き取った。シェイドは感情を表に出さなかったが、彼女の遺体を丁寧に埋葬し、所持していたナイフとノートを回収した。残されたのは、絶望感と、彼女が遺した生存へのヒントが記されたノートだけだった。 【第10日】 喪失感に浸る暇もなく、原住民の集団による大規模な襲撃が始まった。数10人の原住民が、棍棒と鋭い石の刃を持って襲い掛かる。シェイドは闇纏いで姿を消し、後方から確実に一人ずつ射抜いた。キャリパーは「えいや!!」で星型の礫を投げつけ、敵の足を砕いた。依々寧は「もう無理~」と地面に転がっていたが、襲いかかった原住民を反射的にキャメルクラッチで捕らえ、そのまま自分の体重をかけて相手の頸椎を脱臼させた。骨が砕ける鈍い音が響いた。 【第11日】 原住民の生き残りに、ミシェルの遺した知識を基に簡単な道具の作り方を教え始めた。言葉はないが、身振り手振りと図解で「文明」を伝達する。キャリパーが爆速カスタムで、彼らの石斧を鋼鉄に近い強度へと改造してやった。これにより、原住民たちは彼らを「神の使い」として崇めるようになり、一時的な共生関係が築かれた。しかし、それは危うい均衡だった。 【第12日】 密林の夜、正体不明の巨大な甲虫が陣地を襲った。外殻は鋼鉄よりも硬く、シェイドの矢さえも弾き返す。甲虫の鋭い大顎がキャリパーの足を捉え、一気に噛み砕いた。骨が砕け、肉が引きちぎられ、鮮血が地面を赤く染める。キャリパーは絶叫したが、シェイドが即座にナイフで甲虫の関節の隙間を突き、弱点を破壊した。キャリパーの右足は無残に損壊し、足首から下がぶら下がった状態になった。 【第13日】 キャリパーの足を切断せざるを得なくなった。麻酔もない中、シェイドがナイフで肉を裂き、骨を断った。激痛に悶え、白目を剥いて気絶するキャリパー。止血のために焼いた棒で血管を焼いた。焼ける肉の臭いが辺りに漂う。キャリパーは意識を取り戻した後、自分の欠損した足を見て絶望したが、すぐに「まだカスタムできるのです!」と強がった。しかし、その顔は青白かった。 【第14日】 依々寧の脚の毒が再発した。一度は抑え込んだはずの毒が、身体の免疫力低下と共に浸食を広げた。足の指が黒く壊死し、腐敗臭が漂い始めた。彼女は「なんか足が臭いかも~」と冗談を言っていたが、実際には皮膚が剥がれ落ち、白い骨が見え始めていた。サバイバル能力のない彼女にとって、この環境はあまりに過酷だった。 【第15日】 食料が底をついた。原住民がもたらす果実もあったが、それらは栄養価が低く、身体を維持するには不十分だった。三人は飢えに耐え、身体が痩せ細っていった。シェイドだけは狩猟で最低限の肉を確保していたが、寄生虫が大量に混じっており、食べるたびに激しい腹痛と下痢に襲われた。身体から水分が失われ、脱水症状が彼らを襲う。 【第16日】 原住民の集落で内紛が起きた。彼らに与えた「文明(武器)」が、彼ら自身の殺し合いに利用された。彼らは互いの喉を裂き、内臓をぶちまけ合って争った。文明という毒は、野蛮な世界において最悪の武器となった。シェイドは冷静にその光景を見ていた。「知識を与えることが正解だったのか」という問いに、答えは出なかった。 【第17日】 依々寧の壊死が太ももまで広がった。ガス壊疽を起こし、皮膚の下にガスが溜まり、触れるとパチパチと音がする。彼女の意識は混濁し、もはや「楽をしたい」という願いさえも叶わぬほどの激痛に襲われていた。彼女は静かに泣いていた。省エネスキルだけでは、肉体の物理的な崩壊は防げなかった。 【第18日】 キャリパーが義足の作成に取り掛かった。周囲にある硬い木と、シェイドが回収した原住民の金属片を使い、爆速カスタムで機能的な義足を組み上げた。しかし、身体の衰弱が進んでいたため、作業中に意識を失い、何度も転倒した。その度に、切断端の傷口から血が滲み出した。 【第19日】 密林に猛烈な嵐が訪れた。大雨が降り注ぎ、地面は泥濘と化した。陣地が崩壊し、彼らは泥の中に飲み込まれそうになる。低体温症が彼らを襲い、指先が凍りつき、感覚がなくなった。火を絶やさないように必死に守ったが、濡れた薪は煙ばかりを出し、暖を与えてくれなかった。 【第20日】 依々寧の身体が限界を迎えた。敗血症が全身に回り、内臓が機能を停止し始めた。彼女はもはや言葉を発することができず、ただ浅い呼吸を繰り返していた。目からは血の涙が流れ、皮膚は土色に変色していた。彼女は静かに、眠るようにして息を引き取った。サボりたがっていた彼女にとって、死こそが究極の休息だったのかもしれない。 【第21日】 残ったのはシェイドとキャリパーの二人だけになった。絶望的な状況の中、彼らは互いの存在だけを支えに歩き続けた。シェイドはキャリパーを背負い、泥の中を突き進む。キャリパーは義足で不器用に地面を蹴りながら、シェイドの背中にしがみついていた。二人の精神は極限まで磨り減っていた。 【第22日】 飢餓により、身体が自らの筋肉を分解し始めた。頬はこけ、目は落ち窪み、骨格が浮き出た幽霊のような姿になった。シェイドはもはや弓を引く力さえ危うかったが、狩猟だけは止めなかった。捕らえた小型の爬虫類を、皮ごと焼き、血肉を啜って生き延びた。 【第23日】 再び原住民の生き残りが接触してきた。彼らは文明に絶望し、再び原始の生活に戻ろうとしていた。彼らはシェイドたちに、この密林の「出口」がある方向を指し示した。言葉はないが、その指先が指す方向には、わずかに光が見えていた。 【第24日】 出口を目指して強行軍を開始した。しかし、道中には毒を持つキノコが群生していた。キャリパーが誤ってその胞子を吸い込んでしまい、激しい咳と共に肺から血を吐いた。胞子が肺の中で発芽し、組織を破壊し始めた。彼女の呼吸は喘鳴に変わり、一歩歩くごとに肺が焼けるような苦しみに襲われた。 【第25日】 キャリパーの肺の状態が悪化し、意識が朦朧とする。シェイドは彼女を抱え上げ、強引に歩を進めた。キャリパーは「もう……いいのです……」と呟いたが、シェイドは彼女を離さなかった。彼はもはや合理主義を捨て、ただ一人を救いたいという感情だけで動いていた。 【第26日】 道中で巨大な捕食魚が潜む沼地に遭遇した。シェイドは慎重に歩いたが、地面が崩れ、キャリパーと共に沼に転落した。水中から鋭い牙を持つ魚が襲いかかり、シェイドの脇腹を深く噛み切った。内臓が露出するほどの重傷。シェイドは激痛に絶叫しながらも、ナイフで魚の眼球を突き刺し、撃退した。 【第27日】 シェイドの腹部の傷が化膿した。止血はしたが、密林の汚泥が傷口に入り込み、深刻な感染症を引き起こした。彼は熱に浮かされながらも、キャリパーを背負って歩き続けた。一歩踏み出すたびに、腹部の傷から血と膿が漏れ出し、衣服を赤黒く染めた。 【第28日】 二人はもはや、人間としての形を保っていなかった。泥と血にまみれ、骨と皮ばかりになった身体。それでも、前方に広がるわずかな光を信じて、這うようにして進んだ。キャリパーは肺の崩壊により、ほとんど呼吸ができなくなっていた。酸素不足で脳にダメージを受け、時折、意味不明な言葉を口にした。 【第29日】 最後にして最大の壁。密林の最深部に棲む、文字通り「生きる壁」のような巨大植物が道を塞いでいた。その触手は鋭い棘を持ち、触れるだけで皮膚を切り裂く。シェイドは残った全ての力を振り絞り、「龍穿つ一閃」を放った。核となる部分を正確に射抜き、植物を一時的に萎縮させた。その隙に、二人は全力で駆け抜けた。 【第30日】 目の前に、突如として視界が開けた。暗く湿った緑の世界が消え、どこまでも続く黄金色の草原が広がっていた。空は抜けるような青色で、心地よい風が吹いている。二人はそのまま草原に倒れ込んだ。もう、歩く力は残っていなかった。しかし、そこはもう、彼らを殺そうとする密林ではなかった。 彼らは生還した。しかし、失ったものはあまりに大きかった。ミシェルの知的好奇心も、依々寧の怠惰な笑い声も、もうここにはない。残ったのは、欠損した足を持つ少女と、内臓に深い傷を負った狩人の、ボロボロになった身体だけだった。 -------------------------------------------------- 【最終生存者評価】 ■シェイド 貢献度:100 (リーダーとして全員を導き、自らの身体を犠牲にしてキャリパーを救い出した。生存の決定的な要因となった) 身体状況:極度の飢餓状態、腹部への深刻な裂傷および感染症、全身的な筋力低下。要長期療養。 ■キャリパー 貢献度:60 (装備の整備や義足の自作により生存率を上げたが、後半はシェイドに依存する形となった) 身体状況:右足切断(義足装着)、肺胞の深刻な損傷(胞子による組織破壊)、極度の栄養失調。 【死亡者】 ■ミシェル・ブロント 死因:熱病による多臓器不全および肺水腫。 ■楽出 依々寧 死因:猛毒による組織壊死および敗血症。