深夜の静寂に包まれた山奥。そこに佇むのは、かつてある有力な商人が所有していたという古風な和風屋敷である。月明かりさえ拒絶する深い霧の中、今夜、奇妙な集団がこの屋敷に足を踏み入れようとしていた。 メンバーは、嘘つきで危うい雰囲気を持つ青年・マコト。正体不明のドロドロとした物体・スキルコピースライム。そして、なぜかここに大型の貨物トラックとして参戦しているバグの塊・Big Rigs。さらに、試作型タコ人間・Mr.Octopus typePrimitive。 目的はただ一つ。屋敷に眠るお宝を集め、総額15,000ゴールド以上を持って脱出すること。ただし、屋敷に潜む「何か」に触れれば、即座に気絶し、すべてを失うことになる。 第一章:静寂と違和感 「いやぁ、大丈夫だよ! この屋敷には幽霊なんて一人もいないし、お宝は玄関に山積みになってるはずさ!」 マコトが自信満々に嘘をつきながら、屋敷の重い門を押し開けた。彼にとって嘘は呼吸と同じだ。しかし、隣にいるMr.Octopusは触手を不安げにうねらせ、スキルコピースライムはただ「ぷるぷる」と震えている。 そして、背後にはBig Rigsがいた。エンジン音ひとつせず、BGMすら鳴らない不気味な沈黙のトラック。彼は当たり判定を持たないため、門の柱をすり抜けながら、ゆっくりと屋敷の中庭へと侵入した。 「よし、まずは分散して集めよう。15,000ゴールドなんて、あっという間だ」 マコトが提案し、一行は屋敷の廊下へと散った。廊下には古びた掛け軸や、埃を被った調度品が並んでいる。マコトは手当たり次第に棚を漁り始めた。 「おっ、これいいじゃん。古びた茶器……1,000ゴールドくらいかな」 そこに、不気味な黄金の亀――タイキンジルシが、ひょっこりと姿を現した。それは一瞥しただけで、凄まじい速度で奥の部屋へと消えていった。 「待て! お宝がある場所に案内してくれるってことだろ!」 マコトが慌てて後を追う。しかし、彼が曲がり角を曲がった瞬間、目の前に「それ」が立っていた。 第二章:視線と影 一本の足。そして、巨大な一つ目。怪物ユツワである。 「げっ!?」 マコトが叫びそうになった瞬間、彼は思い出した。この怪物は視線を合わせれば終わりだ。彼は即座に地面に視線を落とし、這いつくばるようにしてユツワの横を通り抜けようとした。 (お願いだ、気づかないでくれ……!) 幸い、ユツワは視線が合わない限りは関心を示さない。マコトは心臓が口から出そうな状態で、ゆっくりと怪物の足元をすり抜けた。絶体絶命の瞬間を乗り切った彼は、安堵からつい口をついた。 「ふぅ、今の俺は透明人間だったから見えなかったんだな!」 その瞬間、スキル「嘘から出た実」が発動し、本当にマコトの身体が半透明になった。しかし、その奇跡的な幸運も長くは続かない。 一方、別ルートを探索していたMr.Octopusとスキルコピースライムだった。彼らは豪華な金屏風(5,000ゴールド相当)を発見し、歓喜に浸っていた。だが、背後の壁にある掛け軸から、どろりとした影が染み出してきた。 「キュイイイイ!」 ミドロマである。壁から壁へと超高速で移動する影は、抵抗する間もなくMr.Octopusの背後へ回り込んだ。Mr.Octopusはタコ化スキルで身をかわそうとしたが、ミドロマの速度はそれを上回っていた。 ――ドシュッ! 「ぶふぉっ!?」 Mr.Octopusは一撃で気絶し、そのまま床に転がった。彼が持っていたはずの小道具類が散らばる。スキルコピースライムは慌てて「守備行動」に入ったが、ミドロマの攻撃は物理的なダメージではなく、即死(気絶)判定である。スライムは間一髪で壁の隙間に逃げ込み、攻撃を回避した。 第三章:加速する混沌 その頃、Big Rigsは屋敷の構造を完全に無視して走行していた。壁をすり抜け、畳を突き抜け、天井を走行する。彼は荷物を積んでいないため、走行性能は極めて高い。だが、あまりにバグっているため、時折その場でピタリとフリーズした。 (……停止中……) 静止したトラックの目の前を、ちょうどタイキンジルシが通り過ぎた。Big Rigsはゆっくりとバック走行を開始する。バック走行による無限加速。速度計の数値が跳ね上がる。100km/h、10,000km/h、そして10の30乗km/hへ。 「ブオォォォォォォッ!!(音は鳴っていない)」 超光速でバックしたBig Rigsは、屋敷の最深部にある「宝物庫」に、壁ごと(当たり判定がないので)突っ込んだ。そこには、国宝級の黄金の仏像(12,000ゴールド)が鎮座していた。 だが、そこには最悪の敵が待ち構えていた。小さなトカゲ、ムダンである。 ムダンが小さく口を開けた瞬間、周囲の空間が歪んだ。無限の幻影。一度閉じ込められれば、二度と出口は見つからない。しかし、Big Rigsはそもそも「正常な世界」に属していないバグの塊だった。幻影の判定すら彼には通用せず、ただのテクスチャの乱れとして処理された。 Big Rigsは仏像を(積載量ゼロだが、バグで吸着させた)回収し、ブレーキを一回踏み込んだ。一瞬で0km/hになる。そして、再びバックで脱出路へと向かった。 第四章:嘘と絶望の交差点 生き残っているのは、透明化したマコト、逃げ回るスライム、そして仏像を運ぶトラックである。 「みんな! こっちだ! 出口に美味しいケーキが用意されてるぞ!」 マコトが嘘をついた。すると、屋敷の廊下に幻のケーキが出現する。スキルコピースライムはそれに釣られ、トコトコと彼の方へ向かった。しかし、そのルートはミドロマが巡回している危険地帯だった。 「あっ」 壁から飛び出したミドロマが、スライムを捉えようとする。その瞬間、スライムは「流派複製」を発動。ミドロマの高速移動を学習し、技名を【影速】と命名した。スライムは影のように滑らかに移動し、ミドロマの攻撃を紙一重で回避してマコトの元へ滑り込んだ。 「ふふん、俺の計画通りさ!」 マコトが勝ち誇った瞬間。彼らの前に、再びユツワが現れた。今度は逃げ場がない。袋小路である。 「ひっ……!」 マコトが反射的にユツワの巨大な一つ目を見てしまった。ルールは絶対だ。視線を合わせた者は、即座に敗北する。 「あ……」 マコトの意識が遠のく。しかし、彼が気絶する直前、強烈な生存本能が彼を「覚醒」させた。意識が飛ぶ瞬間に放った言葉は―― 「嘘だ! 今のは見えてない!!」 【嘘でよかった】。覚醒状態のこのスキルは、受けたダメージを無効化し、さらに喜び(絶望からの生還)に比例して相手に倍返しの衝撃を与える。ユツワは、自分が放ったはずの「気絶させる視線」を、数倍の強度で跳ね返された。大きな一つ目が白目を向き、ユツワは自らの能力で気絶し、どさりと倒れ込んだ。 最終章:脱出の果てに 「今だ! 走れ!!」 マコトとスライムは、気絶したユツワを飛び越え、玄関へと走った。そこには、すでにバック走行で正門に到達し、静止して待っていたBig Rigsの姿があった。 三人は、ボロボロになりながらも屋敷の外へと転がり出た。 集計の結果、彼らが持ち出したのは以下の通りだ。 ・古びた茶器:1,000ゴールド(マコト) ・金屏風:5,000ゴールド(スライムが回収) ・黄金の仏像:12,000ゴールド(Big Rigsが吸着) 合計:18,000ゴールド。 目標の15,000ゴールドを突破した。彼らは成功したのである。 静まり返った夜の道に、Big Rigsの画面上にだけ、不自然なフォントでメッセージが表示された。 「YOU'RE WINNER」 それは文法的に間違っていたが、今夜の彼らにとっては最高の勝利宣言だった。 * 【リザルト】 ■脱出成功者: ・マコト ・スキルコピースライム ・Big Rigs ■脱出失敗者: ・Mr.Octopus typePrimitive(ミドロマにより気絶) ■集めたお宝総額: 18,000ゴールド