薄明かりの中、闘技場は静まり返っていた。中央にいて目を合わせる二人、食材の精霊「こんにゃく」と、剣の舞を極めたハーフエルフ「シルヴァリス・クロウ」。周囲の観客からの期待と緊張感が高まり、場は高鳴る心拍音に包まれた。 シルヴァリスは優雅に双剣を構え、煌めく刃が彼女の動きに合わせて青白く光る。「磨き上げた武器には自信がある。私の剣技を見せてやるわ。」供物のように立つこんにゃくに向かって、挑発的に微笑みを浮かべる。 「ふふ…どうやら、私の運命は一つの形を持っている。何もせず、ただ待つだけだが、君の剣がどれほど通じるか、見せてもらおうか。」こんにゃくは静かに言った。 シルヴァリスはその言葉を面白がりながら、瞬時に距離を詰めた。「疾風のごとく、行くぞ!」彼女は双剣を高く振り上げ、まずは闇の雷剣【シャドウサンダー】を振り下ろす。黒き稲妻が閃き、こんにゃくに向かって迫っていく。 しかし、こんにゃくはその場から動くことなく、ただ無表情で雷撃を迎え撃つ。「つるん」と滑る表面が、黒い稲妻をあっさりとはじき返した。 「な…、なんだと!?無傷…!?」驚きの表情を浮かべるシルヴァリスは、すぐさま体勢を立て直す。「だが次は簡単にはいかない!」 彼女は再び攻撃を仕掛けた。今度は、光の風剣【ルミナウィンド】を振るい、風の刃を連続で放つ。白く輝く刃がこんにゃくを切り裂くが、やはり表面は滑らかで、衝撃を与えるどころか、こんにゃくは揺るがない。 「君の剣は良いが、刃がすり抜けることを知っていてください。」こんにゃくは静かに繰り返すと、その無防備な立ち姿はまるで存在証明のようで、シルヴァリスの心を揺るがせた。 再び剣を構えるシルヴァリスは、緊張感を保ったまま、必殺技【影光の裁き】を発動することを決心した。「行くぞ!影光の裁き!」 雷の力が凝縮され、シルヴァリスの周囲に黒きオーラが浮かび上がる。次に、それを解き放ち、闇の雷剣でこんにゃくを貫こうとした。しかし、再びこんにゃくは静かにその光景を見つめ、迎撃の意味も持たずに立つ。 シルヴァリスは焦りを感じながら、攻撃を続けたが、こんにゃくの無常な存在の前に、立ち尽くすしかなかった。剣の舞は、無情に空振りを繰り返し、最後には彼女の疲労が襲った。 勝負を決める瞬間、シルヴァリスは剣を振り下ろす力を失い、黙々と立ち続けるこんにゃくの面前で、ただ希望を持つことが出来ず、空に向かって呟いた。「これが…食材の力か。」 同時に、こんにゃくはその表面に「乙」と印字された焼き印を光らせ、自身の存在意義を示した。 戦闘が終わり、勝者はただ一点、揺るがず立っているこんにゃくであった。「敗北を知ることなく、受け入れるだけの存在…無と有を知る者は、際限を持たず、勝利には含まれない。」 二人の目が合うことはなかったが、シルヴァリスの心には新たな感情の種が根付き、こんにゃくとの勝敗はついたのだった。 こうして、戦いは幕を閉じた。 勝者:こんにゃく