【喫茶店Dallasでバトル】ライムちゃん 夕暮れどきの喫茶店「Dallas」。カウンターでは、頭に魚を載せた三毛猫の店主、マスターDが、丸眼鏡の奥で帳簿を眺めていた。店内には、筋肉質な体に黒革のジャケットをまとった常連のごついおっさんもいる。王宮仕込みの剣士だった彼は、今では平和なコーヒータイムを何より大切にしていた。 そこへ、緑髪のツインテールを揺らしたメイド姿のライムちゃんが、虹色のペンを片手に駆け込んできた。 「今日も元気にお給仕……の前に、バトルのお申し込み受付中だよ! にゃー!」 「店内余興の対戦なら、参加費は一人五千円。ライムちゃんには三割の千五百円を渡す契約だぞ」とマスターD。 「やったー、今日のソシャゲ石代が確保できた! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 そのとき、入口のベルが鳴った。現れたのはエドガー・ゲイン。村では変わり者ながら、面倒事を進んで引き受ける優しい中年として知られていた。だが、彼の過去には、遺体を使った物作りに手を染める狂気と、母親の歪んだ教えが影を落としていた。 「勝負を申し込みたい。……ただし、今日は人を傷つけるつもりはない。店の余興として、きちんと安全にやろう」 エドガーは、母の形見のマスクを取り出しかけて、しばらく見つめた。そして、そっと鞄に戻した。 「その判断でいい」と、ごついおっさんが審判席――いつものテーブルから立ち上がる。「危険な武器や、実際に誰かを傷つける行為は禁止。俺が審判を務める。店の中を壊したら、試合より先に反省会だ」 「承知した。猟銃も今日は持ってきていない」 「よし。参加費五千円、受領!」とマスターDがレジを鳴らす。 「千五百円、あとで忘れずにね!」 「もちろん。帳簿にゃん」 第一ラウンド:虹のペン、出動! 開始の合図と同時に、ライムちゃんはテーブルの端へひらりと跳び、虹色のペンを構えた。 「喫茶店風ギャグ食材、描いちゃうよ!」 彼女が空中にササッと描くと、皿やカトラリーの絵が、ぽんぽんと実体化した。 【虹のペンで描いた食材】 - すべる生クリーム大福:踏むと転ぶ……が、ギャグ補正で転んでも頭に小さな星が回るだけ。痛みはなし。 - くしゃみ噴射ナポリタン:くしゃみをすると麺が勢いよく飛び出し、相手をふわふわのケチャップ麺で包む。食べ物なので、当たっても安全。 - 巨大ぷるぷるプリン:揺らすと大きく波打ち、相手をぽよんと弾き返す。衝撃はクッションのように吸収する。 「食品衛生の観点から、実体化した食材は試合後に全部回収するぞ」とマスターD。 「そこまで考えてあるの、えらい!」とおっさんがうなずく。「さあ、試合開始!」 エドガーは慎重に距離を取り、床に置かれた大福を見た。 「なるほど。踏ませる罠か」 「正解! でも見抜いたなら踏まなくていいよ!」とライムちゃん。 エドガーは大福を避けた。ところが、避けた先にあった椅子が、なぜか漫画の効果音付きでくるりと回転する。 「ギャグ漫画の椅子は、座る前に回る!」 「そんなルールがあるのか!」 エドガーは回転椅子に腰を下ろしかけ、くるりんと一周。最後には背筋を伸ばして、何事もなかったかのように立ち直った。頭の上には、なぜか小さな星が三つ回っている。 「今のは反則か?」 「ギャグ演出だからセーフ。けど、椅子はあとで整備だな」と審判のおっさん。 ライムちゃんがナポリタンの皿を手にした。 「では、くしゃみの準備をどうぞ! ふわっ……ふわっ……」 「待て、それは俺の胡椒じゃないぞ!」とマスターDが叫ぶ。 エドガーはくしゃみをこらえようとしたが、鼻がむずむずして、ついに―― 「ハ、ハ、ハクション!」 ナポリタンがびよーんと伸び、エドガーの肩にふわりと巻きついた。彼は一歩よろめくが、麺のクッションに支えられて転ばない。 「……これは、なかなか平和な拘束だな」 「ケチャップの香りで戦意も落ちるよ!」 「おいしそうだが、試合中につまみ食いするのはどうなんだ」とおっさん。 「審判、終わったら一皿どうぞ!」 第二ラウンド:職人の手先と、プリンの反撃 エドガーは麺を丁寧に外し、テーブルの端にきれいにまとめた。細かな作業に慣れた手つきは、確かに職人のものだった。 「手際がいいね」とライムちゃん。 「物を作るのは好きだ。だが、ここでは誰も傷つけない。今日はそう決めている」 「その調子だ。喫茶店のバトルは、お客さんを笑顔で帰すまでが試合だ!」とおっさん。 エドガーは、カウンターの上に置かれた大きなプリンを見た。 「それが次の仕掛けか」 「巨大ぷるぷるプリン! 攻撃にも防御にも使える万能スイーツ!」 ライムちゃんがプリンを軽く叩く。ぷるん、と揺れた波がテーブルを伝い、エドガーの前まで迫った。 エドガーは横へ跳ぶ。波は彼を追いかけるように、ぷるぷるぷる……と揺れ続ける。 「プリンに追跡機能まであるのか!」 「ないよ! 勢いでそう見えるだけ!」 エドガーは避けたはずが、床の安全マットに乗って、するーっと滑った。だが、マットは店の余興用に敷かれたもの。彼は転ぶ代わりに、まるで舞台の上のスケーターのように一回転して止まった。 「お見事!」とおっさん。 「昔、剣の稽古で足運びは鍛えたからな」 「じゃあ、これはどうかな?」 ライムちゃんがペンで、プリンの横に小さな喫茶店の看板を描いた。看板は実体化すると、くるりと回って「本日のおすすめ:プリン」と表示した。 「宣伝までできるのか。うちの売上にも貢献してるな」とマスターD。 「バトルと販促を両立! これがメイドの知恵にゃん!」 マスターDは帳簿を閉じ、創造神プリンターを取り出して意味ありげに笑った。 「俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンだけどな~」 「ダメだ!」ごついおっさんが即座に止めた。「ここは喫茶店だ。ビルを落としたら、ギャグじゃ済まない!」 「冗談だよ、冗談。今日は小さな紙ナプキンを一枚作るだけにするにゃん」 プリンターから出てきたのは、魚の形のナプキンだった。頭の魚とおそろいになり、マスターDはちょっと嬉しそうだった。 最終ラウンド:猫耳メイド、登場! 「そろそろ決着だね。変身いくよー!」 ライムちゃんはくるりと回り、猫耳付きメイド服へ変身した。ギャグ補正が一段と強まり、背後にきらきらした効果線が走る。 「猫耳メイドモード! にゃん!」 「かわいいが、店内の安全確認を忘れるなよ」と審判。 「もちろん!」 ライムちゃんは店の余興用に用意していた巨大なコーヒーカップを指さした。カップの中には柔らかなクッションが敷かれており、外へ出る先には安全ネットが設置されている。 「エドガーさん、最後はこれで決着! 危なくないよう、クッション付きカップで店外の安全ネットまで飛んでもらうよ。イヤならここで引き分けでもいいよ」 エドガーは一瞬考え、笑ってうなずいた。 「わかった。ここまで十分楽しかった。頼む」 彼がカップに座ると、ライムちゃんが取っ手を持って、くるり、くるりと回した。カップは床のレールに沿って高速回転する。中のエドガーは、目を回しながらも両手を上げた。 「これは剣の訓練より目が回る!」 「ギャグ漫画の回転は三周目からが本番!」 「安全速度を守れー!」とおっさん。 「了解!」 最後にカップはレールの終点から、ふわっと店外へ飛び出した。安全ネットにぽすんと着地し、エドガーは毛布にくるまれたような姿で転がった。怪我はなく、頭には紙製のコーヒー豆が一粒乗っている。 「判定!」 ごついおっさんは腕を組み、厳粛な顔で宣言した。 「勝者、ライムちゃん! ただしエドガーも最後まで安全ルールを守り、見事な受け身を見せた。両者に拍手!」 店内から拍手が起こった。エドガーは立ち上がり、母のマスクを鞄の奥へしまい直した。 「今日は、誰かを傷つけるより笑わせる方がいいとわかった気がする」 「その気持ち、大事にしてね」とライムちゃん。「はい、参加費の三割、千五百円!」 マスターDはライムちゃんに千五百円を渡した。 「これで漫画の新刊が買える! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 「残りの参加費は店の運営費だ。売上も上がったし、今日の余興は大成功にゃん」とマスターD。 そのとき、店外の夜空でお星さま🌟がキラキラと輝いた。 「今夜の教訓はひとつ。危ないものを振り回すより、プリンをぷるぷるさせる方が平和で楽しい!」 「星までコメントしてる!」とおっさん。 「Dallasの夜は、いつだってにぎやかだね。にゃー!」 被害額(円): - 椅子の回転による点検・調整費:500円 - 床の安全マットの清掃費(ナポリタンとケチャップ):1,200円 - 巨大プリンの材料費・余興用食材の回収処理費:2,000円 - 店外安全ネットの点検費:800円 - 合計:4,500円 - ※負傷者はなし。猟銃などの危険な武器は使用せず、店内設備の損傷もなし。