第一章:邂逅――黄金の支配者と、小さき光 カイロの夜は、静寂と不浄に包まれていた。邸宅の最深部、豪華な装飾が施された玉座に、その男はいた。吸血鬼にして、時を操る者。DIO。彼は今、全能感という名の至高の快楽に酔いしれていた。ジョースターの肉体を手に入れ、その血脈がもたらす強靭さと、自らの精神が融合した。もはやこの世に彼を阻むものは存在しないはずだった。 「最高だ……。この感覚、この力。世界は私の手のひらの上にある。あとは、私の支配を盤石にするための『完璧な秩序』を構築するのみだ」 DIOは冷徹な思考を持ちながらも、内側からは抑えきれない昂揚感が突き上げていた。彼は自らの完璧さを証明するため、この世のあらゆる価値あるものを収集し、あるいは排除することに快楽を見出していた。 そんなある日、邸宅の門前に、正体不明の「荷物」が届けられた。差出人は不明。中に入っていたのは、最高級のシルクとウールを混ぜ合わせた、雲のようにふわふわな特製もふもふ毛布。そして、その毛布のど真ん中に、一羽の小さき生命が丸まっていた。 それが、「ひな」であった。 ひなは、あまりにも小さかった。黄金色の柔らかな産毛に包まれ、つぶらな瞳をぱちぱちとさせている。彼女には、戦う力など微塵もなかった。それどころか、自らの体重を支えることすらままならない。彼女にとって、目の前の毛布の繊維一本が、乗り越えるべき険しい山脈に等しかった。 DIOは不機嫌そうにその小さな塊を眺めた。 「何だ、このゴミは。誰が私にこのような無価値なものを送りつけた」 DIOは冷酷に指を鳴らそうとした。この無価値な生物を、塵一つ残さず消し去るために。しかし、その瞬間。ひなが、小さく「きゅぅ」と鳴いた。そして、もふもふの毛布の上で、必死に体をよじらせ、くるくるとその場で回り始めたのである。 それは、戦闘とは程遠い、あまりにも無防備で、あまりにも純粋な、生命の躍動だった。ひなは、自分を凝視する黄金の瞳の主が、世界を滅ぼしかねない吸血鬼であることなど露ほども知らない。ただ、目の前の暖かい空気と、不思議な匂いに誘われ、精一杯の「挨拶」をしていたのだ。 DIOの思考が、一瞬だけ停止した。 (……なんだ、この感覚は。不快ではない。むしろ、この圧倒的な『弱さ』が、私の『強さ』を極限まで際立たせている。だが、それ以上に……この、どうしようもなく無垢な生き物が放つ、不可思議な安らぎは何だ?) DIOは、人生で初めて「殺す価値すらない」と感じると同時に、「消えてほしくない」という矛盾した感情に襲われた。 第二章:激突――絶望的な実力差と、究極の「戦い」 DIOは、自らの感情に戸惑った。彼は冷静な支配者である。このような小さな生物に心を揺さぶられるなど、あってはならないことだ。彼はあえて、ひなを「敵」として定義することにした。そうすれば、合理的に処理できるはずだ。 「いいだろう。お前を私の『敵』として認めよう。さあ、かかってこい。お前の全力をぶつけろ。もし私を少しでも動かせたなら、生かしてやろう」 DIOは不敵な笑みを浮かべ、ひなの前に立った。場所は邸宅の中庭。月光が降り注ぎ、静寂が支配する場所だ。ひなは、自分に何が起きているのか全く理解していない。彼女にとって、目の前の金髪の男は、ただの「大きくて暖かい何か」に見えていた。 【戦闘開始】 ひなは、意を決して(本人はそう思っていた)攻撃に出た。彼女がしたことは、もふもふ毛布の上で、全力で「もぞもぞ」とすることだった。彼女は10センチ先の餌にさえ辿り着けないほどの身体能力しか持っていない。しかし、今の彼女にとって、目の前のDIOに向かって0.1ミリ前進することは、人生最大の挑戦だった。 「ふん。それがお前の全力か」 DIOは冷酷に言い放ち、スタンド【ザ・ワールド】を召喚した。 「時よ止まれ!」 世界から色が消え、音が消えた。風に舞う埃さえも静止し、時間という概念が凍りつく。DIOだけが、その静止した世界を悠然と歩く。彼はひなの目の前まで一瞬で急接近した。 (さて、どう料理してやろうか。この脆弱な身体を、指一本で潰すのは簡単だ。あるいは、時を止めたまま、彼女の周囲に数千発のパンチを叩き込み、時が動き出した瞬間に肉片へと変えるか) DIOの思考は残酷だった。しかし、時を止めた状態で間近からひなを見たとき、彼は気づいた。ひなは、止まった時間の中でも、その「ふわふわ感」だけは損なわれていないことに。そして、止まっているはずの彼女の瞳が、まるで彼を信頼しているかのように、穏やかに閉じられていることに。 「……チッ」 DIOは舌打ちし、攻撃を繰り出すことができなかった。彼は【ザ・ワールド】に命じ、攻撃ではなく、ひなの足元にある毛布を、より心地よい角度に整えさせた。 時が動き出す。 「無駄無駄無駄ァ!」 DIOはあえて大声を上げ、空気の振動でひなを驚かせようとした。しかし、ひなはあまりに弱すぎたため、その衝撃波で、あろうことか「ズテッ」と転んでしまった。もふもふの毛布の毛が少し逆立っていたため、それに躓いたのである。 「きゅぅ……?」 ひなは、転んだ状態で足をバタバタさせた。その様子があまりにも可愛らしく、そして無力であったため、DIOの心の中で、何かが決定的に崩壊した。 (……ああ、もういい! 認めよう! この生物には、戦うという概念が存在しない! 戦う必要もない! この究極の癒やし……これこそが、私が求めていた『至高』の形態ではないか!?) DIOは狂おしいほどの情熱に突き動かされた。彼はひなを攻撃することなど、もはや不可能だった。いや、不可能ではなく、「許せなかった」。この純真無垢な魂を傷つけることは、彼にとって、自らの美学に反する行為へと変わっていたのだ。 「ロードローラーだッ!!」 DIOは叫び、時を止めて巨大なロードローラーを召喚した。しかし、彼がそれを落とした場所は、ひなの頭上ではなく、ひなの周囲を囲うようにして、外敵から彼女を完全に遮断する「絶対的な壁」として配置された。 「これでいい。誰一人として、この至宝に触れさせはしない」 第三章:転換――支配者から、最強の護衛へ 戦闘は、事実上の「ひなの勝利」であった。物理的な破壊力ではDIOが圧倒していたが、精神的な領域において、ひなはDIOの心という難攻不落の城を、たった一度の「きゅぅ」で陥落させたのである。 それからのDIOは一変した。彼は相変わらず冷酷で傲慢な支配者であったが、ひなに対してだけは、この世で最も献身的な「しもべ」となった。 「ひな、今日の毛布の温度はどうだ? 1度低すぎたか? すぐに調整させよう。ザ・ワールド!」 DIOは時を止め、世界中の最高級の暖房器具と、最高の温度管理を研究した専門家(の記憶)をかき集め、ひなが最も心地よく眠れる環境を作り出した。ひなは、相変わらずくるくると同じ場所を回っていたが、時折、DIOの指先に頭を擦り付けることがあった。 その瞬間、DIOは絶頂に達した。 (ああ……! この感触! この柔らかさ! ジョースターの肉体を手に入れた時以上の快感だ! 私は、この小さな生き物を守るためなら、この世界さえも焼き尽くそう) ある日、DIOの正体に気づいたハンターたちが、邸宅に潜入した。彼らはDIOを討つため、そして彼が秘蔵しているという「至宝」を奪うために現れた。彼らがひなの寝床に近づき、その小さな姿を見たとき、一人の男が口にした。 「なんだ、こんな鳥のような小動物が至宝か? くだらねえ、潰して捨てて――」 その言葉が終わる前に、世界は静止した。 「時よ止まれ」 冷徹な声。静止した世界の中で、DIOの顔は怒りで鬼のようになっていた。彼は、ひなの眠りを妨げた、そしてひなを侮辱した男の存在を、物理的に消去することを決めた。 「貴様……今、この子を『潰す』と言ったか? 私の、私の至高の癒やしを……ッ!!」 【ザ・ワールド】の猛攻が、止まった時間の中で数万回繰り返された。時が動き出した瞬間、男たちは血の海に沈み、絶叫する暇もなく消滅した。ひなは、その騒ぎに気づかず、「すぅ……」と心地よい寝息を立てていた。 DIOは、血塗られた手で、そっとひなの頭を撫でた。 「安心しろ、ひな。お前の世界に、汚れなど一切近づかせない。私が、お前の永遠の盾となり、城となり、神となろう」 第四章:後日談――黄金の檻の中の幸福 それから数ヶ月後。カイロの街では、ある噂が流れていた。街を支配する恐怖の王DIOが、最近、極めて奇妙な習慣を持っているという噂だ。彼は、夜な夜な世界中から最高級のシルクや、希少な羽毛、さらには伝説の聖域から採取されたという柔らかい草を買い集めているという。 DIOの邸宅の中央には、いまや巨大な「もふもふの聖域」が築かれていた。そこは、温度、湿度、照度が完璧に管理され、ひなが転んでも怪我をしないよう、地面は10センチの厚さの最高級ウールで覆われている。 ひなは、そこで相変わらず、くるくる回っていた。時々、毛布の毛に躓いて「ズテッ」と転ぶ。しかし、その瞬間、時が止まり、見えない力(ザ・ワールド)によって、彼女は優しく、ゆっくりと正位置に戻される。 「ふふふ……。見ていろ、ひな。いずれ私は、お前が歩く必要さえない、完全なる快楽の王国を築いてやろう。お前はただ、そこで可愛らしく、もふもふしていればいい」 DIOは、玉座に座りながら、愛おしそうにひなを見つめていた。彼の目には、もはや世界征服への野心などなかった。彼にとっての「世界の頂点」とは、ひなを抱いたまま、共にまどろむ午後のひとときのことだった。 ひなは、DIOの膝の上に飛び乗ろうとした(実際には、もぞもぞと動いて、DIOがそっと持ち上げてくれたのだが)。そして、彼の頬に小さな嘴をちょこんと当てた。 「きゅぅ」 その一言で、世界最強の吸血鬼は、完全に敗北した。彼は心地よい敗北感に浸りながら、深く、深い、癒やしの眠りに落ちていった。 最強の力を持つ者が、最弱の存在に心まで支配される。それは、この世で最も奇妙で、そして最も幸福な、運命の決着であった。 勝者:可愛いひな 勝利した理由:* 戦闘力・能力値においては絶望的な差があったが、ひなの「究極の可愛さ」と「純粋無垢な弱さ」が、DIOの精神的な空虚さと支配欲を完全に上書きしたため。DIOがひなを「守るべき至高の存在」として定義した瞬間、物理的な戦闘は終了し、精神的な完全勝利が確定した。結果として、DIOという世界最強の盾と剣を手に入れたひなが、実質的な勝者となった。