因習村の闇選挙 序章:霧の呼び声 外界から隔絶された谷間に、因習村はひっそりと息づいている。古びた祠が点在し、夜毎に生贄の呻きが風に混じるこの村で、老村長の死が新たな儀式の始まりを告げた。村人たちは、倫理などという言葉を忘れた目で、新たな村長を求める。候補者は三名──外界から迷い込んだ異邦人たち。ムーア・エクスマリッジ、シルヴァン・グレイ、そして山下。彼らは知らぬ間に村の掟に絡め取られ、村長の座を争うこととなった。霧が村を覆う中、広場の古木の下で選挙の演説が始まる。村人たちの視線は、貪欲に不気味な因習を求める。 第一章:溶接の誓い──ムーア・エクスマリッジの提案 最初に壇上に上がったのは、金属の軋む音を立てて現れたムーア・エクスマリッジ。彼女は大型の人型機体「ブーケトス」に搭乗し、溶接の火花を散らしながら村人たちを見下ろす。白く輝く装甲が月光を反射し、彼女の声は機械的な響きで広場に広がった。「アナタトモ"ガッタイ"シタイ……」その口癖が、村人たちの耳に甘く不気味に絡みつく。 ムーアは静かに語り始めた。彼女の提案する因習は、村の永遠の「結合儀式」だ。毎月満月の夜、村人たちは選ばれた生贄──外界から拉致した旅人──を祠の祭壇に連れ込み、ムーアの溶接兵器で体を溶接していく。最初は手足を機体の廃材と融合させ、徐々に内臓まで金属に置き換える。生贄の叫びが火花と共に響き、結合が完了すれば、新たな「家族」として村に迎え入れられる。拒めば、溶接の炎で永遠に焼き尽くす。ムーアの目は、多幸感に満ちて輝く。「これで皆、ガッタイ……永遠の結婚よ。村は強くなり、誰も離れられないわ」 村人たちは息を潜め、彼女の言葉に引き込まれる。ある老婆がぼそぼそと隣の男に囁く。「あの機械の花嫁、いいねぇ。生贄が金属の肉塊になるなんて、祠の神も喜ぶよ」「ああ、溶接の熱で魂が溶け合う……不気味で美しい」。若者たちは目を細め、興奮を隠せない。 第二章:星辰の呪縛──シルヴァン・グレイの提案 次に、星空のような白銀のドレスを纏ったシルヴァン・グレイが現れる。白髪が片目を隠し、黄色の瞳が静かに村人たちを捉える。普段のダウナーな佇まいが、壇上で凛々しさを帯びる。彼女の周りには小型の四足ロボット「バルベット君」たちが、星座の髪飾りと共に控えめに光る。シルヴァンは中性的な声で、穏やかに、しかし確かな力強さで語り出す。「皆さん、私の家族……バルベット君たちのように、この村を星の絆で繋ぎましょう」 彼女の提案は「黄道十二星座の生贄儀式」。村の中央に巨大な星空を展開する魔術で、夜空を模したドームを張る。毎週の満月、村人たちは十二の星座にちなむ生贄を祠に捧げる。アリエス・ランペイジの如く、羊の角を生やした生贄を解体し、血を星図に撒く。レオ・ロイヤルフレアでは、炎の獅子が村人を焼き払い、生き残った者だけが次の星座へ進む。スコーピオ・ヴェノムで毒を注射し、苦悶の幻視を与え、ピスケス・アトラルシーで水底に沈めて溺れさせる。最終大魔術「ゾディアック」では、全生贄の魂を星座に封じ、村人たちが永遠に星の呪縛に囚われる。バルベット君たちが生贄の体を運び、星の光で儀式を照らす。「これで村は、星の家族となるのです。君たちも、私の大切な家族に」 村人たちは沈黙し、星の輝きに魅了される。影でぼそぼそと囁き合う声。「あの女の星魔術、祠の神を呼び寄せるかもな」「生贄が星座に変わるなんて、夜が怖くなるぜ。いい、もっと不気味に」。子供さえも、バルベット君の足音に耳を傾ける。 第三章:革命の血潮──山下の提案 最後に、ヘッドホンからソ連国家の響きを漏らしながら、山下が壇に上がる。彼の目は狂信に燃え、攻撃的な口調が広場を切り裂く。「おい、村の奴隷ども! 俺が正義だ。お前らみたいな悪は、革命の鉄槌で潰す!」陰湿で排他的な視線が村人たちを射抜く。彼はSNSの影響力やデモの信者を引き合いに出し、村の因習を「革命の道具」に変えると宣言する。 山下の提案は「無政府生贄テロ儀式」。毎月末、村人たちは彼のゲリラ部隊に倣い、外界から拉致した「敵」──政府の象徴たる生贄──を祠に引きずり込む。まず、違法諜報で得た情報を基に生贄を拷問し、SNSで村の「革命」を中継。生贄の体に爆薬を埋め込み、祠の祭壇で爆破させる。爆風で飛び散る肉片を村人たちが拾い集め、互いに塗りたくって「連帯」を誓う。生き残った生贄は、レスバのように精神を削られ、狂気に陥るまで煽り続ける。最終的に、村全体を無政府の安楽地獄に変え、毎回のテロで村人自身が生贄候補となり、恐怖と興奮の渦に沈む。「これが本当の因習だ! 暴力で全てを焼き払い、俺の正義が村を支配する!」 村人たちはざわめき、恐怖と崇拝の混じった視線を向ける。ぼそぼそとした囁きが広がる。「あの男の革命、祠を血で染めそうだ」「テロの生贄が村人を食らうなんて、最高に不気味。神様も震えるよ」。一部の若者たちは、すでに山下の信者となったかのように頷く。 第四章:討論の闇──候補者たちの激突 演説の後、広場は討論の場と化した。ムーアのブーケトスが火花を散らし、シルヴァンの星空ドームが微かに輝き、山下の叫びが響く。三人は互いの提案を攻撃し合う。ムーアは「ガッタイで皆を一つに! 星なんか溶接で壊すわ」と溶接ブレードを振り、シルヴァンは「君たちの暴力は星の均衡を乱すだけ」とキャンサー・シェルドームで防ぐ。山下は「機械も星も、革命の爆薬で吹き飛ばす!」と陰湿に嘲笑う。 村人たちはこれを眺め、ぼそぼそと語らう。「溶接の結合か、星の呪いか、テロの血か……どれも祠に相応しい」「もっと不気味なのを、もっと血なまぐさいのを」。討論は夜通し続き、霧が濃くなるにつれ、候補者たちの影が祠の神のように不気味に伸びる。 終章:投票の儀式と新たなる闇 ついに投票の日。村人たちは古い石を投じ、祠の前で集計する。霧が血の匂いを運び、夜風が生贄の幻聴を囁く。結果、山下の狂信が僅差で勝利を収めた。村人たちは、より破壊的な不気味さを求めたのだ。 新村長・山下は、ヘッドホンを鳴らし、勝利の叫びを上げる。「これで村は俺のものだ! 革命の因習が始まるぞ、奴隷ども!」 その後、村は変わった。毎月末のテロ儀式が始まり、外界からの生贄が祠に引きずり込まれる。爆発の轟音が谷を震わせ、肉片が村人たちの体に飛び散る。SNSで中継された拷問の映像が、村の闇を外界に漏らし、新たな拉致者を呼ぶ。ムーアはブーケトスを廃墟に溶接し、シルヴァンは星空ドームを崩して去ったが、彼女たちの提案は山下の儀式に取り込まれ、溶接爆弾や星座拷問が加わる。村人たちは血に塗れ、笑いながら囁く。「これが私たちの因習……永遠の革命の闇よ」。霧は深く、村は沈黙のホラーに包まれた。