序章:大陸横断の狂宴 —— コネチカット州ダリーン 大西洋の潮風が吹き抜けるコネチカット州ダリーン。そこには、およそ相容れない四つの「暴力」と「意志」が集結していた。 一台の漆黒のハーレー。2800ccという規格外の排気量を誇るそのマシンに跨るのは、昼間の穏やかな表情を捨て、燃え盛る骸骨の姿へと変貌した【ナイトライダー】弾 劾人である。彼の背後には、現世に招かれざる5万5000の死霊軍勢が、地響きのような唸りを上げて待機していた。 その隣には、異質な光を放つ金属の塊があった。SOLAR。惑星間探査機である彼は、地球上の道路という概念を無視し、低空飛行で地表を滑るように静止している。原子力熱推進エンジンがかすかに唸りを上げ、計算され尽くした軌道計算が内部で高速処理されていた。 さらに、空気の色を塗り替えるほどの威圧感を放つ一台の巨躯。錆びつき、血と油にまみれたピータービルト・281。運転手ケラーの顔は見えない。ただ、窓から覗く青白い腕と、バンパーに飾られた無数の犠牲者のナンバープレートが、この車両が「死の象徴」であることを物語っていた。 そして、この混沌とした面々の中で唯一、「正義」の灯を掲げる男がいた。帝都消防の伝説、シゲハルである。彼は巨大な消防車に乗り込み、耐火服に身を包んで不敵に笑っていた。「誰がどうあれ、道端で火事があれば止めてやる。それから、あんたらの暴走も鎮火させてやるよ」 「ククク……この大陸を、死者の街道に変えてやろう」弾 劾人が髑髏の指でアクセルを捻る。その瞬間、号砲が鳴り響いた。 第一区間:東海岸から中西部へ —— 通過地点:シカゴ スタート直後、弾 劾人が最高時速880kmという物理法則を無視した加速で飛び出した。その後ろを死霊の軍勢が黒い波となって追い、SOLARがイオンエンジンで静かに、しかし確実に距離を詰める。ケラーのタンクローリーは猛烈な排気音と共に、周囲の車をなぎ倒しながら突き進んだ。 彼らが最初に到達したのは、風の街シカゴである。参加者たちは、巨大なウィリス・タワーがそびえ立つ高層ビル群の中を駆け抜けた。 【イベント発生:パトカーの追跡】 ここで、弾 劾人が30%の確率に捕まり、シカゴ警察のハイウェイパトロール隊に包囲された。数十台のパトカーがサイレンを鳴らし、彼を路肩へ追い込もうとする。 「邪魔だ。消えろ」 弾 劾人が「不死者の号令」を唱えると、走行中の道路に骨の馬に跨った死霊たちが一斉に現れ、パトカーを文字通り「飲み込んだ」。パトカーはパニックに陥り、弾 劾人は嘲笑いながらビル群の間をすり抜けていった。 一方、シゲハルはシカゴの街中で起きた小規模な火災を発見し、迷わず停車。「ポンプ隊現着!」と叫び、超高圧水流で瞬時に消火を行う。その寛大さに感銘を受けた市民たちが歓声を上げるが、その隙にケラーのタンクローリーが猛スピードで彼を追い抜き、激しい排気音でシゲハルを威嚇した。 【シカゴ通過順位】 1位:弾 劾人(圧倒的速さでリード) 2位:SOLAR(安定した巡航速度) 3位:タンクローリー(執拗な追い上げ) 4位:シゲハル(救助活動により遅延) 第二区間:大平原を越えて —— 通過地点:デンバー シカゴを抜けた一行は、広大な大平原を西へ向かう。次第に景色は緑から茶へ、そして険しい山々へと変わっていく。次なるチェックポイントは、ロッキー山脈の麓、コロラド州デンバーだ。 ここでは、レッドロックス劇場のような壮大な自然の造形美が彼らを迎えた。しかし、レースは激化していた。SOLARが「スイングバイ航路」を応用し、地球の地形を利用した加速を行い、弾 劾人の背後に肉薄する。 【イベント発生:パトカーの追跡】 今度はケラーのタンクローリーが州警察に目を付けられた。しかし、ケラーに恐れなどない。追撃してくるパトカーをミラーで確認した瞬間、彼は猛烈な煽り運転を開始。パトカーをガードレールへと押し付け、文字通り「潰した」。ナンバープレートを剥ぎ取り、バンパーに加えるその光景は、目撃した者に絶望を与えた。 「おい!貴様、やりすぎだぞ!」 後方から追い上げたシゲハルが、救急車を盾にした防御陣形でケラーに突撃。タンクローリーの巨体に消防斧を叩きつけ、強引に速度を落とさせた。シゲハルの正義感が、殺人鬼の狂気と激突する。 【デンバー通過順位】 1位:弾 劾人(依然として先頭だが、SOLARが目前まで迫る) 2位:SOLAR(計算された最適ルートで追撃) 3位:シゲハル(ケラーを足止めし、順位を上げた) 4位:タンクローリー(シゲハルの妨害により減速) 第三区間:砂漠の死闘 —— 通過地点:ラスベガス 山脈を越え、一行が辿り着いたのは、砂漠に咲いた欲望の街ラスベガス。ネオンが輝くストリップ通りを、異形の乗り物たちが疾走する。観光客たちが、燃える骸骨のバイクと、宇宙探査機と、血塗られたタンクローリーと、消防車の異様な集団に口をあんぐりと開けていた。 ここで決定的な衝突が起きた。弾 劾人が夜の闇に紛れ、加速しようとした瞬間、彼自身の「炎」に反応したシゲハルが爆発的な闘志を燃やした。「妹を奪ったあの炎を、あんたのような化け物に似せていてはたまらん!」 シゲハルが「梯子隊現着」を敢行し、ブームを伸ばして弾 劾人の進路を物理的に遮断。さらにエグゾーストキャノンを掃射し、弾 劾人の走行ラインを乱した。 【イベント発生:パトカーの追跡】 運悪く、SOLARがラスベガス警備隊の追跡を受けた。しかし、SOLARには「予測危険回避」がある。パトカーが仕掛けたスパイクベルトや路面封鎖を、ミリ単位の精度で回避し、静かに、そして冷徹に彼らを振り切った。 「ファイナルライドだ!!」 弾 劾人が怒りに任せてスキルを発動。辺り一面を紅蓮の炎で焼き尽くしながら、シゲハルの消防車ごと轢き倒そうとする。しかし、シゲハルは瀕死の状態となり、「火事場の馬鹿力」が覚醒。全ステータスが100倍に跳ね上がり、消防車でタンクローリーとナイトライダーを同時に押し戻すという超人的な蛮力を発揮した。 【ラスベガス通過順位】 1位:SOLAR(混乱に乗じて静かに先頭へ) 2位:弾 劾人(炎の暴走で時間をロス) 3位:シゲハル(限界突破の力で猛追) 4位:タンクローリー(乱戦に巻き込まれ後退) 終章:ゴール —— カリフォルニア州レドンドビーチ 最後は、乾いた大地を抜け、太平洋の潮風が香るカリフォルニア州ロサンゼルスへ。ゴール地点はレドンドビーチの白い砂浜である。 先頭を走るSOLAR。その背後からは、すべてを焼き尽くす弾 劾人の「ファイナルライド」が、地平線を赤く染めて迫っていた。そして、限界を超えて気絶寸前ながらも、消防車を全力で走らせるシゲハル。最後尾からは、すべてを潰し尽くすケラーが唸りを上げていた。 ゴールラインまで残り1マイル。弾 劾人が最後の加速を仕掛けた。しかし、SOLARは原子力熱推進エンジンの最大出力を解放。宇宙空間での加速を地上で再現したような、眩い光の奔流となって砂浜へと突っ込んだ。 ドォォォォン!! 砂煙が舞い上がり、静寂が訪れる。砂浜に最も深く轍を刻み、最初に停止したのは――無人惑星間探査機、SOLARであった。 表彰台とインタビュー レドンドビーチに設置された特設ステージ。観衆の歓声の中、表彰台に登ったのは、もはや乗り物というよりは精巧な機械装置であるSOLARだった。その傍らには、正気に戻り、呆然と空を見上げるシゲハルと、夜が明けて人間の姿に戻った弾 劾人、そして不気味に佇むケラーの姿があった。 司会者:「信じられない結末です!勝者は宇宙から来た探査機、SOLAR!さて、勝者にインタビューを。……あ、喋れないので、内部ログを出力させてもらいます」 SOLAR(合成音声):『本レースにおける最短経路およびエネルギー効率の計算に基づき、最適解を導き出した結果である。地球上の道路状況は想定以上に不規則であったが、予測危険回避機能が有効に働いた。次回のミッションは、火星の砂漠を走破することである。』 弾 劾人:「チッ……機械に負けるとはな。だが、この大陸の夜を十分に楽しんだぜ」 シゲハル:「ははは!負けたが、最後にあいつ(ケラー)をかなり追い詰めたし、満足だ。さて、帰って消防署の掃除でもするか」 ケラー:(何も言わず、ただ静かに、次の獲物を探すようにミラーを調整していた) 夕日に照らされたレドンドビーチ。狂気と正義と計算が交差したアメリカ大陸横断レースは、宇宙の知性に軍配を上げて幕を閉じた。