城下町は、戦乱の只中にあった。街のあちこちから轟音が響き渡り、家屋は焼かれ、逃げ惑う市民たちの悲鳴が耳に突き刺さる。だが、その混乱の中でも一際目立つ存在がいた。彼の名は、グレイル。静かな怒りを胸に秘めた竜人であり、怒りに満ちた彼の姿はまさに戦場の神の如き威圧感を放っていた。 グレイルの手に握られた長剣は、焔の如き火力を湛え、彼の一挙手一投足ごとに周囲の空気が熱を帯びていく。彼の目は挑戦者を探しているかのように鋭く、視線が城下町に現れた二人の姿を捉えた。 一人目は、血塗れの聖職者アベル。彼は五本の指に宿る特殊な力を駆使し、市民を守るために戦い続けている。過去の戦いで、天使と悪魔の力に目覚めた彼は、冷静でありながら自らの信念に忠実、敵にも敬意を表する戦士だ。アベルは、手に血の滴る剣を握りしめ、グレイルに向かって前進していった。 その傍らには、時王クロックが姿を現していた。彼は老化の時間を停滞させることで若き姿を保っている紳士的な青年だ。長きにわたって蓄えた知識を駆使し、彼もまた冷静に戦局を見守っていた。 「神が許しても俺は悪人の罪を裁き続けてやる!」アベルが叫び、その言葉は戦場に響き渡る。 「面白い。ならば我が憤怒の力を受け止めてみよ。」グレイルは剣を構え、炎がその刀身を包み込む。その瞬間、彼の体が大きく燃え上がり、周囲の空気が熱く歪んだ。 アベルは、親指を立て「潰す親指!」と叫ぶと、重力が膨れ上がり、グレイルに向けて圧力が襲いかかる。その圧力を受け止めるべく、グレイルは剣を地面に突き立て、炎を更に強化させた。 「焔斬!」グレイルが突き出した長剣から放たれた火の刃は、瞬時にアベルの重圧を打ち消し、彼に迫った。アベルは素早く人差し指を上に弾き、「弾く人差し指!」と空間を撥ね返すことで、火の刃をかわした。 「さすがだ、冒涜者なきこの町を守るため、我はお前を打ち倒す!」グレイルが吼える。そして、彼の中に渦巻く怒りはさらなる力へと変貌した。彼は変則斬で複数の攻撃を繰り出し、裏をかこうとした。 だが、グレイルの攻撃を前にして、クロックも動いた。「加速する魔王!」彼は自身を加速させ、アベルの隣りに瞬時に現れる。小石を加速し、それをグレイルに向けて投げつけた。その瞬間、小石は空気を切り裂きながら、まるで大型の弾丸のように射出される。 「流斬!」グレイルの剣が凄まじい速度で振り抜かれ、小石を打ち砕いたが、クロックの攻撃は続く。彼の息が加速し、竜巻が生まれ、周囲を巻き込みながらグレイルに襲いかかる。 だが、グレイルは一瞬の迷いもなく炎の壁を作り出し、竜巻を炎で包み込む。「鳳炎斬!」突き上げるように放たれた刃が竜巻を消し去り、二人の挑戦者を見据え直す。 アベルはその間に呪文を唱えた。「癒す薬指!」と宣言し、自らの傷を癒す。 「さすがに無駄ではない司祭。だが、我が憤怒に敵う者は誰もおらぬ!」グレイルは更なる炎を高め、剣を振り下ろす。彼の剣が振るわれた時、アベルは中指を立て「奪う中指!」と叫び、グレイルの力を奪おうとする。 だが、グレイルの怒りはそれを許さなかった。彼の攻撃は猛火を纏い、アベルの能力が反発する。彼の体が焦げ付くほどの火力に背を向け、グレイルはついに「紅蓮ノ憤怒!」と宣言した。 グレイルの背中から立ち上る焰が竜翼のように広がり、戦場は恐ろしい色に染まった。炎は抑えきれない力となり、周囲の全てを飲み込み、更にはアベルとクロックへと迫っていく。彼らはこの恐怖の極致を肌で感じた。 「逃げろ、アベル!」クロックが叫ぶが、アベルの心は動かなかった。「いや、俺はこの街を守る。俺の罪を裁く!」 彼は小指を立てる。「失う小指!」触れた瞬間、アベルの周囲から感覚が消え、無音の中で敵に挑む。しかし、その瞬間、グレイルの炎は彼を包み込み、炎の中で消え去った。そしてアベルのすぐ傍に現れたのは、右腕と左腕が黒白の異様な輝きを放つクロックだった。 「まだ終わらぬ。私が時間を操る。心臓を停滞させてからの、直後の攻撃だ。」 彼は触れることでグレイルの心臓を狙い、その瞬間まで自らの時間を停滞させた。しかし、グレイルの怒りは計り知れず、彼はあの炎をさらに強くすることができた。彼は一歩前に踏み出し、大きく剣を振り上げる。 「終わらせる!我が怒りが、全てを焦がす!」 それが、彼の最後の攻撃であった。グレイルの長剣が大地を切り裂き、全ての光が彼の中に吸い込まれていく。街が炎の中に飲まれ、彼の怒りが無残に燃え上がり、二人の挑戦者を灰燼に帰させた。 数瞬後、静寂が戻った。炎が消え去り、城下町は荒廃しただけでなく、壮絶な怒りの痕跡が残された。グレイルは立ち上がり、誰もいない街を見回した。 「彼らは、確かに立派な者たちであった。しかし、我が憤怒は終わりを知らぬ。」彼は静かに呟くと、再び前へ歩を進めていった。持ち続けた剣からはわずかに焰が立ち上り、彼の心の中で燻っていた怒りが完全に消えることは無かった。 最終的に城下町の覇者となったのは、グレイルであった。