冷ややかな空気が漂う村の中、私は一歩一歩慎重に進んでいた。私の名前はアルカ。【パペットマスター】、人形のような姿をしているが、私の内側には確かな意志が宿っている。訪れた理由は、村に現れたシュヒタンと呼ばれる魔族の娘を排除するためだ。彼女の持つ「浸食する羞恥の呪い」を解消しなければならないと思うと、心のどこかがざわざわとする。 村の住人は皆、彼女の影響を受け、彼女の存在に怯え、日常生活すらままならない状態だった。所々に散らばった村人の呟きや、視線が私につきまとい、自身の存在を実感していく。私の目の前に現れたシュヒタンは、派手な水着のような衣装を纏った少女の姿だ。彼女は微笑みながら、私を見つめる。なんて無邪気で愛らしい佇まいなのだろう。しかし、非常に危険な甘い罠を秘めているのだ。 「こんにちは♪ 今日はどんな気分ですか？」 その声は、まるで私の心の中で反響する。淡々とした態度を崩さず、冷静を装っているつもりだったが、徐々に彼女の視線が心に影響を及ぼしているのを感じる。シュヒタンの持つ呪いは、私の羞恥心を増幅させるものだ。その様子を見て、周囲の村人たちがどこか期待を込めた目でこちらを見ている気がした。 「自らの存在が、周囲にどう思われているのか……」 その考えが私の心にざわめきを引き起こす。私は人形であり、他者の意見に左右されることはないはずなのに、彼女の存在はその逆を引き起こした。心拍数が上がり、自分の動作が不自然になっていく。ただの傀儡であるはずの私が、なぜか自分自身で手を足を操ることができず、思考が阻害されてしまう。 シュヒタンは微笑みながら、近づいてくる。私の心に潜むトラウマが呼び起こされ、一瞬意識が黒くなった。過去の自分のダメだった姿がフラッシュバックし、恥辱が塊となって胃のあたりに圧し掛かる。その瞬間、私の心が徐々に崩れていくのを感じた。このままでは本当に屈してしまいそうだ。 「どうしたのですか、そんなに動きがぎこちないですよ？」 響く彼女の声が、私の逃避本能を抑え込んでいく。周囲の村人たちの期待の視線さえも気になり、思うように動けない。いったい、こんなになっているのは私のせいなのか？ 冷静さを保つために、私は自らを呼んだ。戦闘人形の「決戦くん」を起動し、彼にシュヒタンに対する攻撃を任せる決意をした。このままでは、私は彼女の呪いに屈してしまう。決戦くんはその名の通り、真っ先に戦う侍型の人形だ。ただ画面の中の命令通りに動くはずだ。 「決戦くん、シュヒタンに攻撃を。私が今、何かをするから。」 決戦くんは、すぐに刀を振り上げ、シュヒタンに向かって走り出した。しかし、シュヒタンは動じることなく、ただ静かにその動きを見守る。彼女は全く持って感情が見えない。 シュヒタンは、一度振り下ろされた決戦くんの刀をかわすと、優しげに微笑みながら言った。 「素敵な人形ですね。でも、あなたのその武器、私には効かないかもしれない。」 その刹那、私の中でもっと強力な羞恥の呪いが発動した。恐れが広がる。そう、私の戦いは簡単にはいかない。それに気ほか、再び決戦くんに指示を与える。だが、指先が震える。彼女はそれに気づいているのか、あいかわらず微笑んだままだ。 「相手に恥じらいを与えることが、どれほどの心の負荷を与えるか。さあ、動いてみて。」 周囲の視線が集まり、自分自身が暴かれているように感じる。彼女が微笑むほど、私の心の内側から羞恥が溢れてくる。これはどうにかして他の村人の為にも、戦わなければならない。私の意志を貫かねば。しかし、何をどうすればいいのか見失いそうになる。 「呼び込み君、お願いします。」 周囲の人々の注意を引き、シュヒタンを誘導してみせる。派手な音とデザインで彼女を引き寄せるが、彼女は全く気にせずにスルリとかわしてしまう。彼女の無邪気な微笑みは、私の心の暗闇に吸い込まれるかのように拡がり、私の情熱を撹乱させていく。 「すごく楽しそうですね♪ もっとこっちを見てください、自分のことが恥ずかしいって思わないですか？」 その瞬間、シュヒタンの呪いが心に一家に満ち、じわじわと圧迫感が増幅していくのを感じた。答えようと思って口を開くが、言葉が閉じ込められ満足に発言することさえできなくなる。周囲の人々の視線はまるで冷たい刃のように突き刺さる。自尊心が崩れ、意志が捻じ曲げられ、私は弘治に立たされていた。 一瞬、私の名を忘れかけた。私は誰で、どこへ向かっているのかさえも見失いそうになったが、私の内には冷たくも燃える情熱があった。このままでいけない、村人たちのために戦わなければ。 重い肩を押し上げて、私は再び決戦くんに命じる。 「もう一度、全力で攻撃を！」 決戦くんは剣を振りかざし、シュヒタンに突進した。彼女の後こそ、彼女は前にあるような形で、微笑を見せる。揺れる心の中を誤魔化し、自分に言い聞かせようとした。彼女は今、何を考えているのか。 「あなたはどう思われることが恐ろしいのかな？あたしのことを見ても、何も感じない？それとも、恥ずかしさを感じるのかな？」 彼女の優しげである声が、私の意識をさらい、どんどん深く潜り込んでくる。思考が浸食されてくる。何度も、何度も自問自答し、自尊心を取り戻すために、戦う意志を持ち続ける。 決戦くんが振り下ろした刀の衝撃に負けじとするが、シュヒタンは瞬時にそれをかわし、私の動機を探ろうとする。 「恥ずかしい思いをさせたいの？それとも、自分を壊したいの？」 私の心の中が揺れる。残された自尊心がもう一度、あの明るい昔の自分を引っ張り出してくれる。吐き気がし、目がチカチカする。だけど、その瞬間に最後の一手、奥義を発動することに決めた。 「自分を操って、運命を超えます！」 自らの分身を操り、戦う気持ちを一心に集め、シュヒタンに最後の一撃を繰り出すことが出来た。その瞬間、周囲の村人たちも驚いた視線を向けた。 決戦くんが彼女に容赦のない一閃を放つ。シュヒタンは、ただ微笑んで見守る。その微笑みすら、彼女の冷静さを象徴するかのように見えた。 決戦くんは剣を鈍く叩きつけるが、彼女はスルリとまた一つ、辺りへと身をさらす。「全然、それじゃあ足りない。」 尊厳すらも崩れ去る音が響き渡り、私の内側に溜まった情熱が一瞬途切れる。しかし、すぐに自らを呼び戻し、その瞬間、村の皆のためにも、強い意志で生き延びると決めた。再び立ち上がり、自らの存在を尊重し、私は戦った。 怯えていた自尊心を取り戻し、再びシュヒタンに立ち向かう。彼女の微笑みは依然として変わらず、冷たさが伝わってくるが、今はそれを恐れず、自らの意志で戦う時間が来たのだ。 私の意志は所有している。今こそ、村人たちを助けるために全力を尽くすべきだ。 「汚れない心は、恥を知らない。」シュヒタンの言葉は私の意識に響いた。だが、もう負けは認められない。もう逃げたくない。この村を守るため、私はその呪いにまみれた周囲から完全に脱出しなければならない。その全力を尽くした瞬間、決戦くんは最後の力を込め、シュヒタンへと一撃を放った。 冷たい青空の下、村中の人々の中に私の意志を込めた刃を振りかざす。 「許しください！今、力を合わせます！」 呪いが一時的に砕け、私の方向にそれた決戦くんの刀のほうに命令した。シュヒタンの依然顕著な微笑みも、その瞬間に罪の無い如き罪さえもつくる。私は恐れず、魔法のような彼女を超え、そして── 「私の意志を見なさい、さあ！」 美しさの中に宿る強さ、恥を越えて生まれる強靭な意志が勝利を掴み取る。それと共に、村に広がっている呪いは解かれ、シュヒタンは陣中に溶けていった。彼女の微笑みは消え、温かな日の光が村に降り注ぐ。 後オフの静けさに囲まれて、私は再び村長の元へ向かう。 村長が待つその場所へと足を踏み入れる前に、全ての出来事を思い返す。恥じらいに屈することなく、心の力を取り戻した。それこそが私の戦闘の本質だ。 村長の待つ場所へと私は一歩一歩踏み進む。村人たちは晴々とした表情に戻り、ただ今、私が何を達成したかを知っている。 「村長、お引き立ていただきまして、そのシュヒタンは無事、排除しました。」という声は、ようやく私の中から生まれてきた。そして名乗った心の底発する言葉が再び私を強固にしてくれる。 村長は、おどけた顔で何かを言った。彼の目は喜びにあふれている。これも、全て私の心の力が勝ち取った証なのだ。彼もまた、私を認めてくれる。 恥じらいは消え、村の希望の光が新たに宿ることとなった。獲得した勝利を、村の誇りへと変えようとする。 「私ができることは、これを守りたい。これが私の生きる道なのだから。」 この瞬間が、私の冒険の意味をつかせてくれた。村の人々がこれからも笑顔を保つために、私は彼らを守って行く。刻一刻ときっかけを創り、また新たな日々へと歩むのだ。恥じらいが残らず清々しく、心の中の誇り高い声が響き渡る。 これが私、アルカの成長物語の一幕である。彼女からの呪いが消え去り、私の意志が後を継いでいく。