血と雷の闘技場 砂塵が舞う石造りの闘技場。外壁の大破片が散乱し、荒涼としたリングが戦士たちを待ち受ける。観客席は熱狂の渦に包まれ、開始の鐘が鳴り響く前に、実況席から野太い声が轟いた。 「オレ様がこの闘技場の審判兼実況だああ！！ ごつくて荒々しい実況のおっさんだぜええ！！ 今日のメインイベントは、血の魔法使いと雷の力士の激突だぞおお！！ どっちがリングを血と汗で染めるか、刮目せよ！！」 実況席の左側に座るのは、チームAの専門家。血蝶魔法の著名な魔術研究者、エルウィン・ヴォイド。瘦せた体にローブを纏い、鋭い目でリングを見つめる。 「私はエルウィン・ヴォイド、血蝶魔法の禁忌を研究する魔術師だ。ヒイロ・アカガネの技は、妖精の契約が生んだ異端の力。混血ゆえの不安定さが、最大の武器であり弱点だ。」 右側はチームBの専門家、剛田鉄心。元力士のコーチで、相撲の戦術に精通した巨漢。 「剛田鉄心だ。ライデン爲右エ門の相撲は、肉体の極限を体現した芸術。雷鳴型の技は、力と美学の結晶。だが、魔法相手にその重心が崩れぬよう祈るよ。」 鐘が鳴り、戦闘開始。リング中央に立つのは、赤い目と黒髪の東洋人魔法使い、[血蝶]ヒイロ・アカガネ。細身の体に古風なローブを纏い、手には血の残滓が滴る。対峙するのは、216cmの巨体、ライデン爲右エ門。土俵さながらの構えで、筋肉が雷光を帯びて輝く。観客の歓声が爆発する。 「開始だああ！！ 魔法使いのヒイロが間合いを詰めようと動くぜええ！！ 力士の爲右エ門は動かず、正面から迎え撃つ姿勢だぞおお！！」 ヒイロは素早く呪文を唱え、血蝶翔を発動。体が蝶のような翅を生やし、砂地を滑るように舞う。回避重視の高速移動で、巨体の懐に潜り込もうとする。砂が巻き上がり、外壁の破片が影を落とす中、彼女の赤い目が爲右エ門の隙を狙う。 エルウィンが解説を始める。「ヒイロの血蝶翔は、半妖精の血がもたらす軽やかさだ。魔法使いとしては異例の機動力。だが、血魔創造の常時発動で体力を消耗する弱点がある。長期戦は不利だぞ。」 爲右エ門は微動だにせず、重心を低く構える。雷鳴型が発動し、全身に青白い稲妻が走る。間合いの駆け引きで、ヒイロの接近を誘う。 「いいぞ、爲右エ門！ その重心の安定は相撲の基本だ。魔法の速さなど、正面から受け止めて魅せろ！」剛田が拳を握り、声を上げる。 ヒイロが血鋼糸を放つ。自身の血を魔力で固めた糸が、鞭のように爲右エ門の脚を狙う。糸は鋼のように硬く、砂を切り裂きながら迫る。爲右エ門は動かず、雷を纏った掌を構え、【雷張】を発動。稲妻の掌打が糸を絡め取り、逆にヒイロを吹き飛ばす勢いで振り払う。衝撃波がリングを震わせ、砂塵が視界を覆う。 「すげええ！！ 【雷張】の一撃で血鋼糸を弾き返したぜええ！！ ヒイロは空中で体勢を崩し、外壁の破片に激突だぞおお！！」 ヒイロは血蝶翔で体を捻り、破片に着地。息を荒げ、腐血蝶を呼び出す。小さな血の蝶が幾つも飛び、爲右エ門の周囲を腐食の毒気で包む。蝶は鍵を開ける技だが、戦闘では敵の装備や皮膚を溶かす応用が可能。爲右エ門の肌がわずかに赤く染まるが、彼は痛みを無視し、豪胆に笑う。 「ふん、魔法の毒か。だが、真っ向勝負だ！」 剛田が頷く。「爲右エ門の肉体は最強だ。最強の力士の誇りが、毒など寄せ付けん。だが、腐食が進めば動きが鈍る。間合いを詰めて押し切れ！」 ヒイロは距離を取り、血蝶を大量発生させる。リング上空に赤い蝶の群れが広がり、破裂の予感を漂わせる。観客が息を呑む中、爲右エ門は【天飛】を繰り出す。巨体が雷速で跳躍し、ヒイロの首根っこを掴む。どんな軽い体でも、天へ投げ飛ばす技。ヒイロは血蝶翔で逃れようとするが、雷の握力が魔力を乱す。 「投げ飛ばされたああ！！ ヒイロの体が空高く舞い上がり、蝶の群れに絡まるぜええ！！ これは爲右エ門の覇気だぞおお！！」 空中でヒイロは血鋼糸を自らに絡め、落下を緩和。着地と同時に血蝶を爆発させる。赤い破裂がリングを染め、爲右エ門の巨体を包む。爆風が外壁の破片を吹き飛ばし、砂が血のように赤く染まる。爲右エ門は耐え、雷光で爆発を弾くが、皮膚に浅い傷が刻まれる。 エルウィンが興奮気味に。「血蝶の破裂は屠殺の技。ヒイロの性分は冷静だが、禁忌の血魔創造が感情を増幅する。良点は予測不能の応用力だ。だが、妖精の混血ゆえ、魔力の制御が乱れる悪点もある。」 爲右エ門は傷を無視し、【破押】を発動。全身の力を込めた押しで、ヒイロを戦場ごと突き飛ばす。巨体の突進が砂を割り、ヒイロは外壁の破片に追い詰められる。彼女は腐血蝶で爲右エ門の足元を腐食させ、動きを封じようとするが、雷鳴型の覇気が腐食を焼き払う。 「押しだああ！！ リング全体が震える本気の突進ぜええ！！ ヒイロの回避が間に合わねえぞおお！！」 ヒイロは最後の賭けに血蝶を再び呼び、爆裂の渦で爲右エ門を包む。だが、爲右エ門の武士道精神が光る。卑怯をせず、真正面から全てを受け止める。雷を纏った体が爆発を耐え抜き、ヒイロの懐に迫る。間合いの知略で、重心を崩したヒイロの隙を突き、【雷張】の掌底が腹部に直撃。 ヒイロの体が折れ曲がり、リング外へ吹き飛ぶ。血を吐き、魔力が尽きる。審判の腕が上がる。 「勝負ありだああ！！ ライデン爲右エ門の勝利ぜええ！！ 魅せる相撲、見事だぞおお！！」 観客の歓声が闘技場を揺らす。爲右エ門はヒイロに敬意を払い、手を差し伸べる。彼女は弱々しく頷く。 戦闘後、実況席で専門家たちが感想を語る。 エルウィン：「ヒイロの血蝶魔法は、他の魔法使いを凌駕する力を見せた。だが、古の魔法使いに及ばぬ点が露呈したな。混血の不安定さが、力士の正面突破に脆かった。」 剛田：「爲右エ門の美学が勝った。雷鳴型の技は完璧で、相手の攻撃を全て受け止める相撲が観客を熱狂させた。知略戦の駆け引きも光ったが、魔法の速さ相手に重心の安定が鍵だったな。誇り高き挑戦者だ。」 砂塵が静まり、闘技場の伝説に新たな一ページが刻まれた。