この場面は異様だった。格好はパーティーの司会者さながらの牛沢たかしが、牛の着ぐるみでピコハンを手にして、果たして何をしようとしているのか。彼には闘志という言葉は似合わない。彼の視線は会場に飾られたカラフルなバルーンに吸い寄せられ、心の中では自分のパーティーがどう居心地よくなるかを考え始めてしまう。 「おめでとう!……あれ?なんだと?」かすれた声で、この場は戦闘だと気づくが、次の瞬間、彼は破裂するクラッカーの音と共に飛び出すことを思いつく。 「なんだ、これくらいの衝撃には負けないぜ。」と内心思いつつも、実は少し怯えていた。彼は戦うよりも、皆と楽しむ瞬間が欲しかったのだ。そんな思いが脳裏を駆け巡る。 一方の賢井我諸井は、微妙に後ろめたい思いを抱えながら、彼に耳打ちする。「フッ、計算通り。こんなの予想外だが、あの牛の着ぐるみには勝てなさそうだ。」彼は心の中で全力を注ぐシナリオが、果たして現実になるのかもやもやしている。 「でも、戦わなきゃ。」と口をついて出た言葉に、自分の心に潜むヘタレ感が浮き彫りになる。 「どうせ計算だよ。どうせ無理だしな。」彼は逃げ道を探しをごそごそと動き回る。その瞬間、猫が通りすぎた。なぜ猫?まさか前世で媚びていたのがここに繋がるのか。彼の頭の中は理論と雑念が交錯し、余計に集中力を欠いてしまう。 「あぁ、どうしよう。彼の言葉も気になるし、牛の着ぐるみも面白そうだし、でも戦わなければいけない。」すでに彼の思考は戦闘から逸れていた。牛沢が握っているピコハンが見えない。 牛沢は受けない攻撃に対して冷静に反応し、非常に淡々とした表情で言った。「そんなにムキになるなって、これじゃあ本気で戦えないな。いや、そもそも戦うつもりじゃなかったが……。」と考えていた。 心の奥では戦闘を盛り上げるアイデアを探し続けた。 「そうだ、パイ投げをやってみよう。」彼は考えつくが、少し恥ずかしさを露わにし、「どう思う?味は大丈夫だし、デザート感覚でいけば、万が一受け入れてもらえれば…。」と不安が募る。 賢井我は傍らで、調子の良い状況を眺めつつ、抵抗力を突き止める考えに行きたいが、どもりながら心の中でこう思った。「私、わりと生命危ないのでは?これって悪いリズムよ!」 抗いのないパイを手に牛沢は、対戦の場でパイを目の前にふんわりと振りかざしてみた。「これがパイだよ、パイ投げしてもいいの?」 賢井我の反応は戸惑い気味であり、「いやいや、今は戦ってる最中だからさ、見た目通りパイでも受け止めなきゃいけないよ!」と、彼も冷静を保てない。 そして、そこで二人の心理が閃光のごとくバスタブのようにあふれ出す。「牛沢、君は何を考えているんだ?この試合は真剣勝負なんだぞ?」賢井我の心はどんどん湧き立ち、冷静に考える能力が薄れてゆく。 牛沢は期待された反応を願って淡い感情が芽生えた。「フーフー、みんなの笑顔が見られれば僕は幸せだ!」 そう、彼は心の中で何度もこの場にいる理由を模索する。 賢井我は過去の自分の弱さを思い出しながらの回想に困惑していた。そのとき彼の目に留まったのは、数々のバルーンの一つだった。 「バルーン、いいね。割れたら音が出る。これを利用して、彼の注意をそらす作戦を。」計算高く思いつき、瞬時に行動。だが彼の体験的には、そう悠長に思考している時間が果たして残っているのか疑わしい。 牛沢がパイを振りかざし、賢井我は飛び上がり、両者は相まみえる。ほとばしる思考は抜け落ち、耳をつんざく音が鳴り響く。 そして牛沢がパイを投げると、見事に賢井我の顔にヒット。滑るようにフライは飛び、その衝撃を意識しながら帰っていく。 「フッ計算通り?これが牛の着ぐるみから投げられた混乱の反撃。」牛沢の視線があり、彼の大胆無敵感が漂う。 「戦いが続けば続くほど、無駄に苦しむのだろうか。」思ったが、ここはパーティーのように明るくて、時間はここで止まり、笑い声が周りに満ちた。 そして出た結論、『無駄に苦しい戦いは続かない』のだと。 こうして、パイの射精は最後の一撃となり、勝者が決した。 しかし、結局その結果に何の意味があったのか、心の中をざわつかせ、牛沢は静かに帰途に向かう。 二人は別れ際にそれぞれの思惑と笑顔を浮かべながら、隠されたドラマはいつもどおりの雰囲気に包まれ、勝敗はもちろん、勝者は牛沢たかしだ。