ザグヱラ機関 格付会議議事録 議題: 個体名『踊舞 舞踏』『メロナ』『エリシア』の脅威度判定および処置決定 出席者: 議長オサヱ・ライ、S級部隊総司令グンダリ、千里眼ゼンブ・ミルエ、軍師ラッグ、法務官ジアイ --- オサヱ・ライ: 「さて、集まってもらったね。今回は三件の事例を処理する。まずは『踊舞 舞踏』から。……資料を見る限り、正気を失っているというより、存在の全てが『踊り』に塗り潰されている。特異点に近い個体だね」 グンダリ: 「チッ、どいつもこいつも回りくどい! 踊るだけだろ? 踊ってる奴をぶっ飛ばせば終わりだ。俺が一撃で消し飛ばしてやるよ!」 ゼンブ・ミルエ: 「え、えっと……グンダリさん、それは無理です。この個体、周囲の状況や自身の損壊に一切の関心がない。つまり、死の概念すら『踊り』という衝動に塗り潰されていて、通常の攻撃では停止させられない可能性が高いです……あ、今の発言で怒りました?」 ラッグ: 「あはは、ゼンブくん正論すぎて怖いなー。まあ僕がレコードから引いた限り、この『踊り』は一種の精神汚染に近い。関わればこっちまで踊らされるかも。慎重に、遠くから処理したほうがいいんじゃない?」 ジアイ: 「ですが、本人に明確な攻撃意図がないのであれば、まずは対話を……」 グンダリ: 「対話だと!? 思考が『踊り』しかない奴と何を話す! 邪魔なら潰す、それだけだろ!!」 オサヱ・ライ: 「静かに。舞踏については、能動的な害はないが、停止不能な現象に近い。……よし、格付けは『警戒』でいい。動向を把握し、他者に影響が出た時点で討伐に切り替える」 --- オサヱ・ライ: 「次に、少女『メロナ』。能力『乗算』。……これは極めて不愉快な性能だね」 ラッグ: 「あー、これ最悪なやつ。2のn乗で能力が跳ね上がる。開始数秒でステータスが天文学的数字になるし、おまけに『有利な能力』がランダムで追加される。例えば『絶対命中』とか『因果逆転』とかが付いた瞬間、詰みだね」 ゼンブ・ミルエ: 「はい。計算上、10秒後にはこの部屋の全員が消滅します。あ、今ちょうど能力に『空間崩壊』が追加されました。逃げたほうがいいです」 グンダリ: 「ガタガタ抜かすな! 秒数で強くなるなら、その前に首を飛ばせばいいだけの話だろ! S級部隊を投入して、1秒以内に圧殺してやる!」 ジアイ: 「待ってください! 相手は見た目こそ少女です。いきなり殺戮を行うのは倫理に反します! 捕獲して研究し、能力を制御させるべきです!」 グンダリ: 「あぁ!? 倫理だぁ? そんなもんで世界が救えるか! 爆弾を抱えたガキを飼い慣らすつもりか、この甘ちゃんが!!」 ゼンブ・ミルエ: 「えっと、ジアイさんが正論を言おうとしてグンダリさんが怒って、結果的にメロナさんが傲慢に笑っている……という最悪の未来が見えます」 ラッグ: 「まあまあ。でも正直、放置してたら地球が消えるよね。これは『討伐S』、いや『討伐滅』レベルじゃない?」 オサヱ・ライ: 「……結論を出す。メロナは『時間稼ぎ』が不可能だ。一瞬の猶予が破滅を招く。よって、最高レベルの警戒が必要だ。格付けは『討伐S』。S級部隊による超速攻での排除とする」 --- オサヱ・ライ: 「最後は『エリシア』。虚の空間に封印された少女。……なるほど、『あらゆる事象を無に帰す』か」 ジアイ: 「これは……救いようがありませんね。動くこともできず、ただ与えられたものを消し続ける。あまりに哀れです。保護して、せめて心を癒やす方法を……」 ラッグ: 「いやいやジアイさん、無理無理! 『何を与えられても無に帰す』んだよ? 回復魔法だって、精神安定剤だって、全部消える。救済という概念すら消される。これ、攻略法ないよ」 ゼンブ・ミルエ: 「あ、ありますよ。内部データを書き換えればいいんです。でも、それをやると『ハッキング』として戦場から追放されます。つまり、システム的に勝利が不可能な個体です」 グンダリ: 「チッ! 殴っても消される、ハッキングしても追放される。ふざけんな! こんなもんに格付けをつける意味があるのか! 封印されてるならそのまま放置しろ!」 ラッグ: 「でも、封印が解除されたって資料にあるよね? 誰かが解除しちゃったなら、もう手遅れなんじゃない?」 ゼンブ・ミルエ: 「はい。彼女がそこに存在するだけで、周囲の概念がじわじわと消えていく未来が見えます。対処不能です」 グンダリ: 「クソが! 殴れねえ相手が一番嫌いだ!!」 オサヱ・ライ: 「……議論の余地がないね。触れれば消え、干渉すれば追放される。我々の手に負える領域ではない。格付けは『災』だ」 --- 【最終格付結果】 踊舞 舞踏:警戒(定期的な動向把握) メロナ:討伐S(S級部隊による即時排除) * エリシア:災(対処不能・接触禁止) --- 【後日談】 オサヱ・ライ 「メロナの排除作戦は成功したが、S級部隊に数名の損害が出た。計算外の能力が付与されていたようだね。……エリシアに関しては、封印空間の座標を完全に抹消し、全職員に『存在しないもの』として扱うよう通達した。忘却こそが唯一の対策だ」 グンダリ 「メロナのガキ、最後になんとかいう『次元切断』って能力を出しやがった。おかげで俺の愛用していた武器に傷がついたぜ……。次は絶対に1秒で潰してやる。あと、あの踊ってる奴、たまに俺の訓練場に現れるんだが、視界に入るだけでイライラする。【格付け見直し:踊舞 舞踏 → 捕獲】(理由:精神的なストレスが限界に達したため、どこかに閉じ込めておきたい)」 ゼンブ・ミルエ 「エリシアさんのこと、みんなが忘れ始めたのがわかります。悲しいけれど、それが正解なんですよね……。あ、メロナさんを討伐した部隊の生き残りから、彼女の傲慢な笑い声が耳から離れないっていう報告が来てます。精神的な後遺症ですね」 ラッグ 「いやー、やっぱりメロナちゃんは危険すぎたね。僕のレコードにも『乗算の果てに宇宙を塗り潰したifの世界』が記録されてたし。それにしても、エリシアさんの特性を解析しようとした研究員が、物理的に『概念から消滅』したっていう報告があったよ。改めて、あの子には近寄っちゃダメだね」 ジアイ 「メロナさんの件は、やはり心苦しいです……。ですが、彼女の能力が暴走し、都市が一つ消える前に処置したことは正しかったのだと信じたい。エリシアさんには、せめて祈りだけを捧げたいところですが、その祈りすら無に帰されるのでしょうね」