対戦場は現世と異なる空間、不思議な力で引き寄せられた二人の運命が交差する。 まず、こんにゃくは静かにその場に立っていた。つるつるとした表面は光を反射し、観衆の視線を吸い込む。 「自分が美味しいと思われる瞬間を待っている。誰かが私を食べてくれるまで、ここでじっとしているしかない。」 悲壮感を漂わせながらも、こんにゃくの存在はどこか神々しい。 対照的に、リリィ・ロレンシアは自信に満ち溢れた姿勢でその場に現れる。彼女の黒髪ロングは風になびき、灰色のマントは不屈の精神を象徴している。 「私は魔力を持たない。だからこそ、こうして魔封剣を持つことができるんだ!」 彼女の声には強い確信が宿り、今、無魔力の少女が挑む危険を知りつつも、決して怯むことはない。 リリィが魔封剣を手にした瞬間、周囲の魔力がざわめく。彼女がその剣を宙にふりかざすと、周囲から魔力が吸収され、刀身が形を成した。その刃は煌びやかな光を湛え、周囲に潜む強大な魔力を実体化させる。 「こんにゃく! これが私の力だ!」 こんにゃくはその場で微動だにせず、冷静にリリィを見つめ返す。リリィの剣が彼女の身体に向かって振り下ろされる。 「うわぁ!」 しかし、こんにゃくはその剣を簡単にかわす。つるつるした表面が攻撃を滑らせ、まるで水面を跳ねる魚のようにその攻撃は無力化された。 「なんという事だ!」 リリィは驚愕の表情を浮かべ、再度間合いを詰めて攻撃を試みる。 「持たざる者の私に、何ができるのか…!」 彼女は一瞬の隙を見せたが、強い意志に押されて再度立ち上がる。リリィの剣は次々と振るわれるが、その全てはこんにゃくの滑らかな身体に弾かれる。 時間が経つにつれ、リリィは次第に焦りを募らせていく。その度に、こんにゃくはじっとしたまま冷静さを崩さない。 「どうしても私を捉えられないのか? 強さだけでは勝てないんだよ。」 この言葉がリリィの心に響き、彼女は内なる葛藤を抱えた。しかし、リリィはあきらめなかった。彼女の頭の中は強い発想に満ちていた。 そして、リリィはついにある作戦を思いつく。周囲の魔力を吸収することで盛り上がった魔封剣に、さらに魔力を送り込むことを決意した。 「この魔法は!?」 リリィは数々の魔法を発動させながら、一気にこんにゃくに向かって突進する。 「当たれ!」 再度の猛攻が始まった。先ほど感じた躊躇はもうない。リリィはその剣を全力で振り下ろす。白光を放つ刀身がこんにゃくに迫る。 その瞬間、こんにゃくの身体がわずかに傾く。「滑らかさ」を守ることでリリィの攻撃を再度かわそうとしたが、今度は無理だった。 リリィの最後の一撃が力強く、こんにゃくのところに到達した。 「私は負けた…か。」 リリィの剣はこんにゃくの身体を切り裂き、ついに気絶する。 こんにゃくは成す術もなく、大地に崩れ落ちた。その存在はただの食材として消えていった。 「これが勝ちというものか。 私の力についてきた者はいた。」 リリィは唇を噛んだ。 会場が静まり返り、勝者の名が呼ばれる。 「勝者は【不屈】リリィ・ロレンシア!」 彼女の勝利の声と共に、リリィはゆっくりと目を閉じた。 「持たざる者として、私は今、立ち上がった。」 この戦いの結果は、勝者不屈のリリィ・ロレンシア、敗者こんにゃくであった。