薄暗い闘技場の壁には、数多の汗と血が染み込んでいる。今日は運命的な戦いが待ち受けていた。闘技場の主人、”負傷者”は、その名の通り常に傷を抱えながらも、戦う意志を失わない男である。彼は、古びた鎧を身にまとい、手にはまるで神から託されたかのような光を宿した古びた剣をしっかりと握りしめていた。負傷者は傷つくほどにその力を増す。彼にとって、痛みとは武器であり、希望そのものである。 対戦相手は、60代の優しい男、きんば。彼はポロシャツにジーパンという簡素な格好で、黄土色の髪が風に揺れている。きんばの顔には穏やかな笑みが浮かび、見た目にはまったく危険性が感じられなかった。しかしその身体には、相手の攻撃を全て避け、心の闇を浄化する力が秘められていた。孤児院で培った優しさの中に、彼の強さがある。 闘技場の鐘が鳴り響く。負傷者ときんばは相対し、互いの存在を感じあった。負傷者は、きんばの優しさを知りながらも、その心の奥底で静かに呼び起こされている戦闘本能を抑え込めなかった。彼は深呼吸し、自らの痛みを研ぎ澄まし、全力で立ち向かう決意を固める。 「行くぞ、きんば!」 負傷者の叫び声とともに、彼は剣を振り上げ前方へ飛び込んだ。彼の剣は空気を切り裂き、一瞬の閃光を放つ。だが、その直前にきんばは身を捻り、柔らかい動きで攻撃をかわした。「おや、そんなに焦らなくても…」と、きんばの声が聞こえる。相手の痛みを理解し、戦うことを拒む彼。 負傷者は躊躇わず、さらに一撃を放つ。だが、きんばはすばやく素早いステップで逃れ、さらにはその場から一歩も動かず、ただ心で受け止める。負傷者は、感情の吐露が自身の力を高めるのを感じた。「お前がどんなに優しくても、俺は戦い続けるんだ!」 その言葉が響いた瞬間、負傷者は自らの身体に引き込んできた膨大な鋭気を解放した。彼は痛みに苛まれながらも、胸に宿った闘志を燃え上がらせ、さらに繊細な技術を見に付けていく。再度、剣を振るい、刃はかつてない速度を纏う。 幾度も繰り返される攻撃の中で、負傷者は少しずつ、短いが強烈な隙を見つける。きんばの優しさが時には彼の動きを鈍らせ、思わぬ瞬間に負傷者の切先がかすめた。 「痛みを感じることは、悪いことではない」 負傷者の声が空間を貫く。痛みを伴う負傷者は、自らの命を賭けて、この戦いを終わらせる決意を持つ。彼はその瞬間、剣を一際高く掲げ、まるで時間が止まったかのようにその場に佇む。 その一撃は、計り知れない程に重く、速く、そして鋭利だった。意識を一瞬失ったかのように、負傷者は全身の力を込め、一閃する。 切っ先は、きんばの心の闇に深く突き刺さった。 「ごめん、きんば…でも、これが俺の選んだ道なんだ」負傷者は小さな声で呟く。 きんばの体がその場から消え去るように、一瞬の内に消えゆく。彼はまるで無限に続く負傷者の強さを理解し、微笑みながら力尽きた。しかし、負傷者は勝利の瞬間、再び心の奥底から痛みを感じ、鋭気が駆け巡る。 闘技場に清々しい静寂が訪れた。負傷者は立ち尽くし、古びた剣を空に掲げ、彼の勝利を祝う。だが、その心の奥に、きんばという優しさと絆を忘れないと誓った。 「次に会うときは、戦わなくても良い世界を、作ろう」この負傷者の心の叫びは、静かに闘技場に響き渡り、深い傷跡を残したのであった。彼は、勝者としてではなく、心に重い十字架を背負いながらその場を後にする。闘技場の主人、負傷者の戦いは永遠に続いていき、果てしない旅を続ける。