深夜の静寂に包まれた、古びた和風屋敷。高い塀に囲まれ、月明かりさえも拒むように深い軒が突き出したその場所は、俗に『亡者の貯蔵庫』と呼ばれていた。そこに、互いに面識のない、あるいは奇妙な縁で結ばれた四人の潜入者が集結していた。 「いい? 作戦はシンプル。お宝を集めて、合計15,000ゴールド以上になれば脱出成功。それ未満で逃げ出せば失敗、全員気絶すれば完全敗北。……ブツブツ、この屋敷の構造、効率的な巡回ルートを計算すれば……」 タブレット端末を高速で叩きながら、メカニックのジーニャが冷静に(しかし独り言を呟きながら)指示を出す。彼女の傍らでは、少女刀士のサキョウが意気揚々と刀の柄を叩いていた。 「任せてください! 修行の成果を見せる時が来ましたね! うりゃりゃりゃりゃりゃっ!」 「Mee is ready!! Yay!! 宝物たくさん集めるよー!!」 触手を持つ奇妙な姿のba_iaが、漫画のような弾ける動きで跳ね回る。そして、その輪の中で、虚ろな瞳をした魔法少女、虚見心奈がぽかんと口を開けていた。 「……? あたし、ここどこ〜?」 地獄のような緊張感と、どこか抜けたコメディのような空気感が同居する。彼らの目的はただ一つ。この呪われた屋敷から、最大限の富を持ち帰ることだ。 第一章:静寂の廊下と「動く壁」 屋敷の内部は、磨き上げられた黒光りする廊下と、薄暗い障子が連なっていた。至る所に金屏風や骨董品の壺が置かれており、潜入者たちは歓喜してそれを回収し始める。 「見てください! この金箔の扇子、結構いい値段がつきそうです!」 サキョウが扇子(3,000G)を懐にしまったその時だった。ジーニャのドローンが異変を検知する。 「待って、前方壁面の座標に異常な反応。……っ、来る!」 壁に掛けられた古い掛け軸から、どろりとした黒い影が染み出した。それは瞬時に立体的な形を成し、鋭い爪を立てて襲い掛かる。影の怪物『ミドロマ』である。 「きゃーっ! なんか黒いのが来た〜!」 心奈が無意識にひょいと体を傾けた。その拍子に、ミドロマの爪は彼女の鼻先を数ミリで逸れ、そのまま背後の壁に深く突き刺さる。 「今の回避は計算外……! ba_ia、牽制して!」 「Okey-dokey!!」 ba_iaが背中から数本の触手を鞭のようにしならせ、ミドロマを突き放す。しかし、ミドロマは壁から壁へと高速で転移し、今度はサキョウの背後から襲いかかった。 「【皆伝の受け身】っ!!」 サキョウが突如として脚を「4」の字に組んで、奇妙な姿勢で崩れ落ちる。ミドロマの爪が彼女の肩に突き刺さるが、彼女はそのまま床を転がり、衝撃を全て「いなして」無効化した。そのままバネのように跳ね起き、ミドロマを突き飛ばす。 「ふぅ、危なかったです! 急ぎましょう!」 一行はミドロマを撒き、さらに奥の部屋へと進んだ。そこで彼らは豪華な『金色の茶器セット(5,000G)』を発見する。現在の合計は8,000ゴールド。脱出まであと一歩だった。 第二章:視線と斬撃の迷路 屋敷の中庭を抜けた先にある回廊。そこには、一定のルートを機械的に往復する刀を持った幽霊、『ジュデンキ』が立っていた。 「……静かに。あいつの視界に入れば即終了よ。私の支援AIでルートを解析するから、タイミングを合わせて移動して」 ジーニャの指示により、一行は壁に張り付き、ジュデンキが背を向けた瞬間にダッシュする。しかし、ここで心奈がふらふらと歩き出し、ジュデンキの視界に入りそうになった。 「あ、あそこに綺麗な石がある〜」 「心奈ちゃん!!」 サキョウが慌てて彼女の襟首を掴んで引き寄せる。同時に、前方から「ガシャ、ガシャ」と不気味な音が聞こえてきた。現れたのは、一本足で跳ね、巨大な一つ目をぎらつかせる怪物『ユツワ』だ。 「……! 全員、目を合わせるな! 足元だけを見て歩け!」 ジーニャの警告。しかし、ba_iaは好奇心に勝てず、触手でユツワの顔を覗き込もうとした。 「Wow! Big eye!!」 「やめろー!!」 サキョウが強引にba_iaを突き飛ばし、全員で壁に顔を押し付けて前進する。心奈だけは、完全に無意識のまま、ユツワの目の前をすり抜けていった。ユツワは心奈を認識しているはずだが、彼女に「意識」がないためか、あるいは視線が完全に虚空を向いていたためか、そのまま素通りしてくれた。 「あたし、なんかした〜?」 「……運がいいのか悪いのか分からないわね」 彼らはなんとか突破し、書斎で『古文書の巻物(7,000G)』を回収。これで合計15,000ゴールド。条件は達成した。あとはここから脱出するだけだ。 第三章:絶望の追跡者 「よし、目標額達成! 最短ルートで出口へ戻るわよ!」 ジーニャが叫んだ瞬間、屋敷全体の空気が一変した。どすん、どすんと、地響きのような足音が廊下の向こうから聞こえてくる。鎧を纏った武者の幽霊、『カゲロウ』の登場だった。 カゲロウは喋らない。ただ、獲物を追い詰める絶対的な意志だけを持って、ゆっくりと、だが確実に距離を詰めてくる。彼には妨害が一切通用しない。彼に追いつかれた瞬間、潜入者は全員気絶し、ゲームオーバーとなる。 「速い……! いえ、速度よりも『確実に詰めてくる』感じが怖いです!」 サキョウが刀を構えるが、カゲロウの鎧には傷一つ付かない。攻撃は完全に無効化されていた。 「【神の一手】! 全員、私の指示に従って最大出力で脱出路を確保して!」 ジーニャの最適化支援により、一行の移動速度が限界まで引き上げられる。しかし、カゲロウは歩幅を変えず、着実に追い上げてくる。出口まであと数百メートル。だが、廊下には先ほどの『ジュデンキ』が再び立ちはだかっていた。 「クソッ、タイミングが合わない! このままではカゲロウに追いつかれる!」 絶体絶命の瞬間、心奈がふと足を止めた。 「あ、お花が咲いてる〜」 心奈が無意識に、廊下の隅にあった古い花瓶を蹴飛ばした。その花瓶が偶然にも、ジュデンキの足元に転がり、彼がそれを避けようとして一瞬だけルートを外れる。そのわずかな隙間に、ジーニャの計算した「最適ルート」が重なった。 「今よ! 走れ!!」 サキョウが心奈とba_iaを突き飛ばすようにして前へ押し出す。背後からは、カゲロウの巨大な手がサキョウの肩に触れようとしていた。 「【秘刀モモベニ】!!」 サキョウは絶体絶命のタイミングで逆転の一閃を放つ。攻撃は通らない。しかし、その衝撃波で自らの体を弾き飛ばし、強引に脱出ゲートへと飛び込んだ。 エピローグ:夜明けの清算 ガチャン! と屋敷の門が閉まった瞬間、彼らは深夜の森へと転がり出た。背後では、カゲロウが門の前まで来ていたが、結界に阻まれてそれ以上は追ってこない。 「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……」 サキョウが地面に大の字になる。ba_iaは触手で満足そうに集めたお宝を抱え込み、心奈は相変わらず「ここどこ〜?」という顔で空を見上げていた。 ジーニャがタブレットで最終集計を行う。 「合計15,000ゴールド……ギリギリね。でも、全員無事に脱出できたわ。作戦成功よ」 彼らはそれぞれ、手に入れた和風のお宝を分け合い、朝日が昇る街へと戻っていった。心奈だけは、帰り道に拾った石ころを「お宝」だと思って大切に持っていたが、それは価値ゼロのただの石だったという。 【ゲームリザルト】 脱出成功者: 刀士サキョウ IM nOt aDult yay‼️! (ba_ia) 《無識の魔法少女》虚見 心奈 【天才メカニック】ジーニャ・タリスマン 脱出失敗者: なし 集めたお宝総額: 15,000ゴールド * (内訳:金箔の扇子 3,000G / 金色の茶器セット 5,000G / 古文書の巻物 7,000G)