古色蒼然とした巨大な邸宅。月明かりさえも拒絶する厚い雲に覆われた夜、そこは血に飢えた者たちと、復讐に燃える者たちが相まみえる屠殺場へと化した。 チームAは、原初の権能を持つノワールを筆頭に、竜の血を引くディナ、寡黙なる巨漢ポトフ、そして血族の長としての責任を背負うサンチョ、さらに正体不明の吸血鬼という、種としての頂点に君臨する者たちの集まりであった。 対するチームB。寡黙なる剣客・西舞と、吸血鬼への憎悪を青い炎に変えて燃やす少女・ローテ。数では劣るが、その一人ひとりが「個」として完成された絶望的なまでの強度を持っていた。 接敵 邸宅の広大なエントランスホール。シャンデリアが不気味に揺れる中、チームAの面々は余裕の笑みを浮かべていた。特にディナは、自身の長い竜尾を床に打ち付けながら、退屈そうにあくびをつく。 「ねえ、本当にこの二人だけ? 冗談でしょ。おやつにちょうどいい人数じゃない」 ディナが嘲笑う。その隣で、ノワールは静かにタバコに火をつけた。紫煙が夜の空気に溶け込み、彼の冷徹な瞳がチームBを捉える。 「まあまあ、ディナ。相手を侮るな。特にあの剣客……いい目をしている。絶望を知っている者の目だ」 西舞は何も答えない。ただ、腰に差した大太刀「影断」の柄に手をかけ、静かに呼吸を整えている。その隣で、ローテが火炎放射器のトリガーを握りしめていた。彼女の瞳には、かつて家族を奪った化け物たちへの、底なしの憎悪が渦巻いている。 「……燃やしてやる。一人残らず、灰にさえならないまで、焼き尽くしてやる」 ローテの声は震えていた。恐怖ではなく、抑制しきれない怒りによって。 戦闘 先手を打ったのはディナだった。「ディノ・プロエラシ!」という叫びと共に、彼女の身体が瞬時に無数の恐竜の群れへと分解され、津波のようにチームBへ襲い掛かる。猛烈な速度と質量が、邸宅の床を砕きながら西舞とローテを飲み込もうとした。 しかし、西舞の動きは最小限だった。彼は「真眼」で恐竜たちの軌道を完璧に読み切り、一閃。 「勝割」 鋭い太刀筋が空間を切り裂き、襲いかかる群れの急所を正確に弾き飛ばす。衝撃波でディナの分身たちが弾け飛ぶが、彼女はすぐに人間の姿に戻り、舌なめずりをした。 「あはは! 速い! でも、これならどう?」 ディナが竜の鉤爪を振るい、西舞の喉元へ肉薄する。同時に、後方からポトフが巨大な重剣を振り下ろした。地響きと共に振り下ろされた一撃は、邸宅の床を完全に粉砕し、深いクレーターを作り出す。 「やろうか……」 ポトフの短い言葉と共に、重剣の振動が周囲を襲う。しかし、西舞は空中で身を翻し、軽やかに着地。同時にローテが叫び声を上げ、二門の火炎放射器を全開にした。 「消えろぉぉぉ!!」 超高温の青い炎が、爆風と共にチームAを包み込む。吸血鬼にとって、炎は天敵だ。ディナが悲鳴を上げて飛び退き、ポトフの重鎧が熱で赤く染まる。だが、ポトフは痛覚を持たない。熱に焼かれながらも、そのままローテに向かって突進する。 「……っ! どけ!」 ローテは格闘戦に移行し、至近距離から火炎を噴射しながらポトフの鎧の隙間を狙い、鋭い打撃を叩き込む。しかし、石のように硬いポトフの皮膚には、ほとんどダメージが通らない。 激闘 戦いは次第に混沌を極めた。サンチョが静かに前へ出る。彼女の周囲に、凝縮された血液が鋭い針のように舞う。 「血族の長として……貴方たちに、安らかな死を」 《亜流サンチョ式・6式/鞭》 血液が鞭となり、西舞の視覚外から彼を切り裂こうとする。西舞は「影断」でそれを弾くが、サンチョの攻撃は止まらない。8式、15式と技を畳み掛け、邸宅の壁を血の杭で固定し、逃げ道を塞ぐ。 一方、ノワールは戦況を静かに観察していた。彼はタバコを地面に捨て、ゆっくりと腕を伸ばす。彼の体から「赫耀鎖」と呼ばれる無数の強靭な触手が出現し、邸宅全体を蜘蛛の巣のように覆い尽くした。 「そろそろ、終わらせようか。君たちの執念は認めるが、格が違う」 ノワールの触手がローテの足を捉え、彼女を天井へと吊り上げた。ローテは激しく暴れ、火炎放射器で触手を焼こうとするが、ノワールの再生速度がそれを上回る。 「離せ! 離せえぇ!!」 その時、西舞の気配が変わった。「迷絶」。彼は深く息を吸い込み、精神を研ぎ澄ませた。周囲の空気が凍りつき、彼の全身から白き亡霊のようなオーラが立ち昇る。「境地」への移行。全てのステータスが極限まで上昇し、サンチョの血の拘束すらも太刀一本で切り裂いた。 「……火翼」 影断に激しい白炎が纏わりつく。西舞は一瞬で距離を詰め、サンチョの胸元へ太刀を突き出した。サンチョは驚愕しながらも、《ラ・サングレ》を発動。緋き杭を突き出し、西舞の刃と衝突させる。 激突した瞬間、邸宅の窓ガラスが全て粉砕され、衝撃波で壁が崩落した。血の呪いと白き炎がぶつかり合い、空間が歪む。 各陣営 死亡者 死の舞踏は加速した。ローテはノワールの触手から逃れるため、自らの燃料タンクを爆破させるという捨て身の策に出た。大爆発が邸宅の二階を吹き飛ばし、同時に近くにいた吸血鬼(【陰の実力者なりたくて!】)が、爆風と高熱に巻き込まれる。霧化して逃げようとしたが、爆発による強風が彼を方向転換させ、崩落した瓦礫の下に押し付けられた。そこへ、タイミングよく西舞の「裂血」を纏った斬撃が降り注ぎ、心臓を正確に貫いた。 【吸血鬼】死亡。 さらに、ポトフがローテに組み付き、その首を噛みちぎろうとした瞬間、西舞が「酒呑」でポトフの巨体を掴み、地面へと叩きつける。そのまま「影断」を垂直に突き立て、ポトフの硬い皮膚を貫通し、心臓を粉砕した。ポトフは絶叫すら上げられぬまま、絶命した。 ポトフ死亡。 しかし、チームBにも限界が来ていた。ローテは爆発の反動と出血で意識が朦朧としていた。そこへ、ディナが「ディノ・プロエラシ」の群れと共に襲い掛かる。彼女の鉤爪が、無防備なローテの胸を深く引き裂いた。 「あはは! 終わりだよ、人間!」 ローテは最期まで、憎しみに満ちた目でディナを睨みつけていたが、やがてその瞳から光が消えた。 ローテ死亡。 決着 残ったのは、ノワール、サンチョ、ディナのチームA。そして、一人で全てを背負う西舞。邸宅はもはや廃墟と化していた。 「……いい戦いだった。だが、ここからが本番だ」 ノワールが冷酷に微笑む。彼は最大権能、【神殺しの晩餐】を展開した。戦場全体が、かつて彼が主人を喰らった時の絶望と惨劇の風景へと塗り替えられる。空間に無数の巨大な「顎」が出現し、逃げ場のない絶望が西舞を襲う。 西舞は静かに目を閉じた。彼にはもう、守るべき仲間も、帰るべき場所もない。あるのはただ、剣客としての誇りと、目の前の敵を斬るという意志のみ。 『炎環』 彼は死の淵から蘇り、死ぬたびに強くなる不死鳥の如き境地へと至った。ノワールの顎に食われ、身体が引き裂かれても、彼は白炎と共に何度でも再構成され、前へと進む。その太刀筋は、もはや物理的な次元を超えていた。 「……裂天割地」 西舞は大上段に構えた。その一撃は、森羅万象、そして時間さえも切断する神撃。ノワールの【神殺しの晩餐】という権能そのものを、根源から切り裂いた。 「なっ……!?」 ノワールの驚愕。だが、斬撃は止まらない。横にいたディナを、そして背後で構えていたサンチョを、一太刀で両断した。血の飛沫が夜空に舞い、静寂が訪れる。 ディナ死亡。サンチョ死亡。 最後に、西舞の刃はノワールの首を通り過ぎた。原初の不死性を持つノワールであったが、時間ごと切断された傷口は再生が追いつかず、ゆっくりとその頭部が地面に落ちた。 ノワール死亡。 月が雲の間から顔を出したとき、そこには血の海の中に一人、静かに太刀を鞘に収める男の姿だけがあった。 勝利チーム:チームB(生存者:西舞)