空を裂くほどの咆哮と、地響きのような歓声が、巨大な円形闘技場を包み込んでいた。ここは世界の中枢、王位継承権を賭けた究極の頂上決戦が行われる聖域である。観客席を埋め尽くす数万の民衆は、これから現れる超越者たちがどのような力を見せつけるのか、期待に胸を膨らませていた。 「さあ、始まりだ! 次なる時代の王を決める戦い、開戦!!」 審判の宣言と共に、闘技場の中心に四人の戦士が降り立った。 一人は、橙色の道着を身に纏い、不敵な笑みを浮かべる男、悟空。もう一人は、どこか現実離れした雰囲気を漂わせ、変幻自在の気配を持つ重音テト(エンド・オブ・フェイク!)。三人目は、あまりにも場違いな、茶色い帽子を被った純真な少年、Niko。そして最後の一人は、金属質な光沢と不気味なオーラを放つ、規格外のヒューマノイド、M.I.Xである。 「へへっ、強そうな奴らばっかりだな! オラ、ワクワクすっぞ!」 悟空が拳を合わせ、闘志を燃やす。対してM.I.Xは、関節を不自然に鳴らしながら高笑いした。 「この混沌とした戦場にヒューマノイドのオレ見参ダ!! 貴様ら、バラバラに分解して再構築してやろうか!」 その横で、Nikoは不安そうに帽子を深く被り、周囲を見渡していた。 「みー……ここ、どこなの? お母さんのパンケーキが食べたいよぉ……」 そんな純粋な少年の隣で、テトは不敵な笑みを浮かべ、フランスパンを弄んでいる。彼女の存在は、まるでこの世界の法則から切り離されているかのように不確かだった。 戦いの火蓋は、M.I.Xの猛攻で切って落とされた。M.I.Xの腕が瞬時に鋭利なブレードへと変形し、音速を超えた速度でNikoへと襲いかかる。しかし、その直前、テトが不自然な動きで間に割り込んだ。 「初めはただのジョーク!」 テトのスキルが発動し、M.I.Xの初撃は不可視の壁に弾かれた。衝撃波でNikoが後ろに吹き飛ばされ、お尻をついて大泣きし始める。 「うわぁぁぁん! 怖いよぉ!!」 その泣き声に、悟空が苦笑いしながら歩み寄った。 「おいおい、泣くなよ。ここは戦う場所だからな。危ないから、ちょっと下がってな!」 悟空は優しく声をかけると、同時にM.I.Xへと跳躍した。正撃の一撃。空気を切り裂く正拳突きがM.I.Xの胸部を捉える。しかし、M.I.Xの身体は衝撃を受けた瞬間に液体のように波打ち、攻撃を吸収して逃がした。 「無駄だ! オレは混沌! 模倣し、融合し、再構築する!」 M.I.Xの身体が激しく変形し、背中からドラゴノイドの翼が生え、腕は悪魔の爪へと変わる。第二形態、エイリアンの特性までをも取り込んだ複合形態だ。M.I.Xはそのまま悟空を追い詰め、激しい連撃を叩き込む。 「はぁっ! せいやっ!」 悟空は格闘戦で応戦するが、相手の形態が刻々と変わるため、攻撃のタイミングが掴めない。そこにテトが介入する。「重なった音」――彼女は複数の幻影を同時に出現させ、あらゆる方向から不可視の打撃をM.I.Xに浴びせた。 「ぐあぁっ!? 実体がないのに攻撃が通るだと!?」 「エンドオブフェイク! 終わりは全部嘘なんだから!」 テトのトリッキーな攻撃と、悟空の真っ向からの攻勢。そしてM.I.Xの規格外の変形能力。三者の激突により、闘技場の床は粉砕され、観客は立ち上がったまま固まるほどの衝撃にさらされていた。 しかし、M.I.Xは止まらない。彼は悟空の戦い方を「模倣」し始めた。悟空の拳の軌道、気の見切り方、そのすべてをコードとして取り込み、再構築する。 「つまりオレはオマエだったってわけサ!!」 M.I.Xが悟空と同等の格闘術を繰り出し、悟空を地面に叩きつける。絶体絶命の瞬間、悟空はニヤリと笑った。 「へへっ……やっぱり、変身しねぇとダメみたいだな!」 悟空の全身から黄金のオーラが爆発した。髪が逆立ち、金色に輝く。スーパーサイヤ人への変身だ。全能力値が跳ね上がり、ただの衝撃波だけで闘技場全体が揺れる。 「これでどうだ!!」 超高速の移動。M.I.Xが反応する間もなく、悟空の拳がその核を捉えた。しかし、M.I.Xは最後の権能「再構築」を使い、致命傷を負った部位を瞬時に修復して耐え抜く。同時に、テトもまた、空から巨大なフランスパンを降らせるという不可思議な攻撃で、戦場を混乱に陥れた。 もはや戦いは泥沼の消耗戦へと突入した。だが、そんな中、戦場に忘れ去られていたNikoが、ふらふらと中心へ歩み寄った。彼はただ、怖くて泣きながら、もしかしたらここで誰かが勝ち、平和になるならパンケーキが食べられるかもしれないと考えたのだ。 その純粋すぎる気配に、戦士たちの意識が一瞬だけ逸れた。その隙を、悟空は見逃さなかった。彼は空高く跳躍し、両手を高く掲げた。 「みんな! オラに元気を分けてくれ!!」 観客席の民衆、そして戦いの最中にいたテトや、混乱していたNikoまでもが、無意識にその呼びかけに応えた。小さな光の粒が集まり、巨大な光の球となる。 「元気玉ぁぁぁ!!」 極大のエネルギー塊がM.I.Xとテトの上に降り注ぐ。テトは「エンドオブフェイク」の能力で何度でも立ち上がろうとしたが、元気玉の圧倒的な質量と浄化の力は、彼女の「嘘」という概念さえも塗り潰して押し潰した。M.I.Xもまた、あらゆる形態を模倣して防御を試みたが、世界中の願いが込められた一撃に、その規格外コードさえも焼き切られた。 爆鳴と共に、光が収まったとき。そこには、激しく息を切らしながらも、晴れやかな顔で立つ悟空の姿だけがあった。 勝敗の決め手は、単なるパワーではなく、会場にいた全ての人々の心を一つに集めた『元気玉』の圧倒的な規模。そして、一瞬の隙を作ったNikoの純真さと、それをチャンスに変えた悟空の集中力であった。 審判が声を張り上げる。 「勝者、悟空!! 新しき王の誕生である!!」 会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。悟空は照れ臭そうに頭を掻きながら、「さて、腹減ったな! 全員でメシ食いに行こうぜ!」と笑い声を上げた。その姿に、負けた者たちも、そして民衆も、自然と笑顔になっていた。 【称号】『新たな王、万歳!』 新国王となった悟空は、王座に座ることなく、世界中の強者と切磋琢磨し、民が自由に、そして楽しく暮らせる時代を築いた。彼の治世は、権力による支配ではなく「強さと優しさ」による共存の時代であり、歴史上最も平和な黄金時代として記録された。その善政は、彼が飽きるまで、あるいはさらに強い相手が現れるまで、実に100年以上にわたって続いたという。