「不可視の千剣」のバトルフィールドに降り立ったのは、半竜のアラベ・ネームレスとその相棒、冷酷なる獣の女王ヴォーティガーンであった。空気は緊張感に包まれ、周囲には重苦しい静寂が流れた。風も、光も、音も、全てがこの戦いを待ち望んでいるかのようだった。 アラベは、その白い体毛を揺らしながら、周囲を警戒した。彼の心には、過去のトラウマが影を落としていた。あらゆる生物に裏切られ、今もなお人を信じることができない。だが、今は違った。彼には後ろに立つ女王がいた。 「化物」退治と行こう。この言葉を狙い澄ました冷酷な響きが、アラベの心を引き締めた。彼にとっても、この戦いはただの生死を賭けたものではない。人智を超えた「不可視の千剣」を撃破することは、自身の過去を清算し、信じることへの第一歩だった。 「祈れ、風に。」アラベはそう呟き、二振りの肉断鉈を構えた。刃の光が彼の手元で不気味に輝く。これから繰り広げられる戦闘の恐怖を麻痺させるための呪文のようなものだった。後ろのヴォーティガーンも、冷静に敵を観察し、何をするべきかを思案していた。 彼らの眼前には、「不可視の千剣」が姿を現した。大型の鹿のような姿をしているが、その不可視性ゆえに、ただの空気の塊のように見える。アラベは周囲の状況を把握するために、竜の血を吸った鉈を使い、その場を切り開く。 「周囲の肉断鉈を使え」と、冷酷なヴォーティガーンの声が響く。彼女の指示によって、アラベは振り返り、真剣に周囲を見渡す。 すると、突然、「飛燕剣」が現れ、多方向から一斉に刃を突き出す。アラベはすぐさま竜戻を発動させ、骨格が前傾姿勢に変わると、彼の全身から涌き上がる力が増幅されていく。 「来やがれ!」アラベの吼え声が戦場に響き渡る。彼は自己の存在を意識し、一撃一撃が必殺となるような荒々しい攻撃を繰り出した。 ヴォーティガーンもまた、冷酷な判断で戦いを進めた。「竜撃」で自らの左腕を竜の腕に変化させ、肉薄してくる飛燕剣に立ち向かう。その瞬間、彼女の足元で巨大な蛇の形をした「救済の獣」が出現し、飛燕剣へと噛みつき、奇襲をかける。 アラベは、ヴォーティガーンの動きと自らの動きを融合させ、次々と飛燕剣へと肉断鉈を振るった。だが、敵の動きは素早く、回避と防御に専念する不可視の千剣に切り返しの余地を与えない。 「ちっ、何とかしろ!」アラベは唸り声を上げた。一方、ヴォーティガーンは淡々と敵の動きを観察し、彼女の思惑を練っていた。 彼女は次に「転嫁の獣」を発動させ、不可視の千剣の攻撃を巧みに受け止め、跳ね返した。その瞬間、アラベは目の前に広がる戦場を捉え、心の中で決意を固める。 「もっと、もっと強く……!」 肉断鉈が一閃し、飛燕剣の一つが地に落ちる。周囲が一瞬静まり返った瞬間、「絶景」が発動され、アラベは全力で焰を放った。 蒼焔裂消。 体内の蒼を焰へと変換し、放射する様は、まさに美しさそのものだった。 その光景を見たヴォーティガーンも驚愕しつつも、冷静な判断を下した。 「いける!」 予測可能な敵の範囲攻撃を逆手に取り、巨大な蛇で突進する彼女は、一気に空気を切り裂きながら飛燕剣に迫った。危機を感じた不可視の千剣も、「飛燕剣」にその役割を任せることにしたのか、その動作が遅れた瞬間を見逃さなかった。 「今だ!」アラベは思いっきり鉈を振りかざし、不可視の千剣を一撃で切り裂いた。 飛燕剣の動きが一瞬止まった。彼らの頭上には、一瞬だが光明が射す。 時が止まったかのように、周囲はスローモーションに思えた。アラベの攻撃が命中し、不可視の千剣がその場に座り込むように崩れ落ちた。 「やったか……?」アラベは声を漏らす。 ヴォーティガーンはすぐに前へ。目を凝らして、倒れた敵の他の部分をよく観察する。「終わっていないわ」 だが、既に不可視の千剣は消えかけており、そこでようやく呪縛が解けたのか、周囲の景色が元に戻る。 彼らは息を呑み、獣の姿で立ち尽くしていた。 「何が起きた……?」 「解析終了……」数字が浮かび上がる。「不可視の千剣の解析進捗は80%」「飛燕剣の解析進捗は40%」 アラベとヴォーティガーンは、ゆっくりと顔を見合わせた。彼らはこの瞬間、かつて無かった高揚感と共に、強い絆を感じた。 「まだだ、終わっていない」とヴォーティガーンが伝えた。アラベはその言葉に頷いた。狙いがある。 十秒、すべての数字が揺れ続ける中、二人は新たな戦いのカウントダウンを始めた。 それは、まだ終わることのない、彼らの物語の新たなる一章の始まりだった。 --- 撃破成功 不可視の千剣の解析進捗: 80% 飛燕剣の解析進捗: 40%