ロンリールームの迷宮 漆黒の鎧に身を包んだ不滅の断罪者、ヘルメシアは、漆黒の馬メアに跨がり、霧深い田舎道を進んでいた。彼の傍らには、突如として現れた巨大なトラック「向かってくる災害」が、轟音を立てて並走している。トラックは善意に満ちた存在だと自負し、ヘルメシアを異世界へ転生させて幸せにしようと、執拗に接近を繰り返していた。ヘルメシアはそんなトラックを、ただの罪人として槍の先端に捉えていた。 二人は、白黒の色調に染まった世界に迷い込んでいた。無人の田舎道が果てしなく続き、見知らぬ童謡が風に混じって囁かれる。蛙の鳴声が低く響き、鴉の鳴き声が次第に狂気を帯びて耳に絡みつく。ヘルメシアの精神は揺るがず、メアの蹄が地面を叩く音だけが現実を繋ぎ止める。一方、トラックはエンジンを唸らせながら、道なりに突き進む。その善意は、しかし、この異常な空間ではただの轟音として反響するだけだった。 「罪人を断罪せよ」とヘルメシアは独り言ち、槍を構える。トラックの存在を、悪の化身と見なし、正義の執行を誓う。トラックはハンドルを切り、ヘルメシアを追い越そうとするが、道は不規則に曲がり、選択を迫る。 最初の分岐点は【マンホール】だった。道端にぽっかり開いた穴から、幼い泣き声が聞こえてくる。ヘルメシアは馬を止め、槍で中を覗き込む。「罪の匂いがする」と呟き、メアを進ませる。トラックは迷わず突っ込み、巨大な車体がマンホールの縁に引っかかる。ヘルメシアが穴に近づくと、突然⚠️の警告が脳裏に閃く――もう戻れない。マンホールの底が無限の闇に変わり、ヘルメシアの鎧が一瞬、引き込まれる感覚に襲われる。だが、不滅の騎士は蘇る運命にあり、すぐに道上に引き戻される。トラックは車体を揺らし、強引に脱出するが、その善意のエンジンがわずかに歪む。 道は続き、次に【交差点】が現れる。引き返すことを思案した瞬間、十字路が突如出現。高速で車が往来し、金属の嵐が吹き荒れる。ヘルメシアはメアの機動力を活かし、槍を盾に回避する。高い回避技術が功を奏し、漆黒の影のように路地を駆け抜ける。トラックは正面から突進し、善意の加速で車群に挑むが、衝突の瞬間、無数の車両がトラックの車体に絡みつき、反射されるはずの衝撃が内部で渦を巻く。トラックの全ステータスは無限に上昇するはずだったが、この迷宮の法則は善意すら飲み込み、車体が一瞬、制御を失う。 さらに【草原と椅子】。広大な白黒の草原に、ぽつんと椅子が置かれている。ヘルメシアは馬を止め、座る誘惑を無視する。精神支配耐性が彼を守り、ただ槍を握りしめるだけだ。トラックは車輪を止め、まるで座るかのようにエンジンを休める。すると、周囲に花が咲き乱れ、善意の車体が花弁に覆われ始める。トラックの意思が揺らぎ、異世界転生の夢想が精神崩壊の幻に変わる。だが、トラックの能力は無限に上昇し、花の呪縛を突破しようとする。 【小道】の長い畦道が続き、ヘルメシアはメアを急がせる。うっかり蹄が滑り、マンホールへ転落の危機に陥るが、不滅の蘇生で即座に回復。トラックは車体を傾け、畦道を押し進むが、善意の加速が仇となり、道の端で大きく跳ねる。 道は不規則に繰り返され、童謡の旋律が重篤な狂気を呼び起こす。ヘルメシアの精神は不動だが、トラックのエンジン音が次第に乱れ始める。繰り返しの果てに、ついに1人目の脱落者が出る。【草原と椅子】の再来で、トラックが座るように停止した瞬間、花の乱舞が車体を完全に覆い尽くす。無限上昇の能力が迷宮の呪いに飲み込まれ、善意のトラックは精神崩壊を起こし、動かなくなる。異世界転生の夢は、ここで砕け散った。 残ったヘルメシアは、最後の選択に直面する。【標識とトンネル】。三角の標識に人の半身が描かれ、奥に黒いトンネルが口を開けている。ヘルメシアは槍を構え、入るか引き返すかを問う。悪を許さぬ断罪者は、トンネルへ進むことを選ぶ。メアの蹄が闇を踏みしめ、漆黒の鎧が溶け始める。一瞬で全身が溶解し、不滅の騎士すら全滅の運命を辿る。だが、正義の執行は永遠だ。 - 脱出者: なし - 脱落者: [不滅] ヘルメシア、向かってくる災害