【喫茶店Dallasでバトル】ライムちゃん VS 近藤香 夜の喫茶店「Dallas」。窓の外では星がきらきら輝き、店内ではコーヒーの香りが漂っていた。 カウンターの向こうには、頭に魚を載せた三毛猫の店主、マスターD。丸眼鏡の奥の目はのんびりしているが、帳簿の計算は恐ろしく速い。 テーブル席には、黒革のジャケットを着た筋骨隆々の常連客。あごひげを撫でながら、元王宮剣士らしい鋭い眼差しで店内を見渡していた。 そこへ、緑髪ツインテールのメイドが、虹色のペンをくるりと回しながら登場した。 「お待たせしましたー! 平日シフトのライムちゃん、今日も元気に出勤中! にゃー!」 「ライムちゃん、今日は月曜から金曜までの18時~21時シフトだな」とマスターD。 「そうです! ソシャゲのイベントも漫画の新刊も待ってるけど、お仕事はお仕事! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 そのとき、入口のベルが鳴った。 「失礼します。理高校の風紀委員長、近藤香です」 薔薇の飾りがついたレイピアを携えた、優しげな女生徒だった。病弱だという噂に反して、彼女は異能力者たちを幾度も戦意喪失させてきた無敗の人物でもある。 「喫茶店の余興として、ライムさんに試合を申し込みます。もちろん、不殺で」 「いいよー! ギャグ漫画のお約束なら、どんな相手でも受けて立つにゃん!」 マスターDは伝票を一枚差し出した。 「参加費は一人5000円。ライムちゃんには三割の1500円が収入として入る。店の余興だからな」 「勝っても負けても新刊代ができる! やる気が出てきた!」 「審判は俺が務めよう」ごついおっさんが立ち上がる。「昔は王宮で剣を振るっていたが、今日は平和な喫茶店の常連だ。店を壊すような真似はするなよ」 マスターDが創造神プリンターの横で、物騒に前足を上げた。 「俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンだけどな~」 「やめろ!」おっさんが即座に止めた。「喫茶店でビルを落とすな。そもそもビルは頭上に落とすものじゃない」 「では、試合開始!」 試合前の宣言 近藤香はレイピアを静かに構えた。刃先には薔薇が咲いている。刺すためではなく、戦意を鎮めるための不殺の剣だ。 彼女はライムを見つめ、穏やかに口を開いた。 「私は持っているわ勝算、説明するわ対戦相手の敗因」 店内の空気が、ふっと静まる。 「私の勝算は、どんな不利な状況でも、事後であっても、過去や未来を繋いで必要な結果へ至ること。理の外にある力も、異能力も、バグも、先攻も、正体不明も、発動そのものを止めはしない。でも決定打にはならない。私は相手を傷つけず、戦意を失わせて勝つ」 香はライムの足元を指した。 「ライムさんの敗因は、ギャグ補正を活用しようとするほど、攻撃が大騒ぎになって、最後には自分の仕掛けたお約束に巻き込まれること。あなたは倒されるのではなく、勝負の目的を見失って、降参を宣言する」 その言葉が告げられた瞬間、金色の文字が空中に浮かんだ。 【確定した勝算】 - 近藤香は不殺を貫き、ライムの攻撃を決定打にさせず、最終的に降参へ導く。 - ライムの能力や虹のペンは発動するが、勝敗を覆す決定打にはならない。 【確定した敗因】 - ライムはギャグのお約束を盛り上げようとして、自分の仕掛けに巻き込まれる。 - 被害を出さないよう判断した結果、近藤香へ降参を告げる。 「うわ、敗因まで先にネタバレされた! でもギャグ漫画ならネタバレ後に展開が変わるのがお約束!」 「その展開も含めて、すでに繋がっているわ」 「強い! 説明が強い!」とおっさんが実況した。 「では、始め!」 虹のペン、出動! ライムは虹色のペンを抜き、カウンター脇の空中に大きく描いた。 「喫茶店風ギャグ食材、第一号! にゃん!」 描かれた絵が、ぽん、と実体化する。 描いた食材:すべってもコーヒーがこぼれない「つるつるゼリー床」 効果:踏んだ人を勢いよく滑らせるが、転んでも痛くない。ギャグ漫画の安全設計。 床一面が透明なゼリーになった。 「まずは足元を封じるよ!」 ライムは勢いよく走り出した。ところが、つるつる床に乗った瞬間、彼女の足が前へ滑った。 「えっ、私が滑る側なのー!?」 ライムは空中で一回転し、テーブルの上をすべり、メニュー立ての前でぴたりと止まった。メニューには「本日のおすすめ:足元注意」と書かれていた。 「自分の技に滑っていったー!」おっさんが腹を抱える。 「大丈夫! 痛くない! この床、優しい!」ライムは親指を立てた。 香は滑らず、床の端をゆっくり歩いていた。薔薇のレイピアが軽く床を指すと、花びらが一枚落ちる。その花びらは、滑るライムの進路をちょうど外して床に着いた。 「危ないから、こちらへ来ないように誘導しただけよ」 「優しさで床攻略してる!」 ライムは再びペンを走らせた。 描いた食材:くしゃみをすると飛び出す「巨大ホイップクリーム」 効果:くしゃみをした人の前にホイップが噴き出し、相手をふわふわに包む。中身は無害。 「いっくよー! ホイップ攻撃!」 ライムは胡椒の瓶を振った。自分がくしゃみをした。 「へっ……へっくしょーい!」 巨大なホイップが噴き出した。香ではなく、ライム自身をすっぽり包んだ。 白いクリームの山から、ツインテールだけがぴょこんと出る。 「敵を包む予定が、自分がデザートになったにゃ……」 「本日の限定メニュー、ライムクリーム添えだな」とマスターD。 「店のメニューにするな!」おっさんが止めた。 香はホイップの端をそっと持ち上げ、ライムが息苦しくないよう隙間を作った。 「大丈夫? 甘いものは好き?」 「好き! でも戦闘中に自分がパフェの具になるのは初めて!」 「能力は発動した。けれど、勝算どおり決定打にはならないわ」 さらに盛り上がるギャグ食材 ライムはホイップを払い、ペンを握り直した。 「まだまだ! 次はこれ!」 描いた食材:注文すると必ず一度だけ鳴る「おかわりパンケーキ」 効果:皿に乗せると『おかわりどうぞ!』と叫び、相手の注意を一瞬だけ引く。食べても安全。 パンケーキが皿の上でむくりと立ち上がった。 「おかわりどうぞー!」 香が一瞬そちらを見た。その隙に、ライムはカウンターの向こうへ回り込もうとする。 だが、ゼリー床はまだ残っていた。 「今度こそ、足元を確認して……」 ライムは慎重に一歩を踏み出した。足は滑らなかった。代わりに、パンケーキが「おかわりどうぞー!」ともう一度叫び、ライムの腹がぐうと鳴った。 「お腹が返事しちゃった!」 その拍子にライムはパンケーキを見つめ、進む方向を忘れた。香はそっと皿をライムの前へ押しやった。 「試合中だけれど、食べる?」 「食べる!」 「食べるんかい!」おっさんのツッコミが店内に響く。 ライムはパンケーキを一口食べた。おいしかった。とてもおいしかった。 「これ、ふわふわで最高……。あっ、私、勝負してた!」 「ええ。けれど、あなたの攻撃は誰も傷つけていない。だから私は、このまま安全に終わらせるわ」 近藤香がレイピアを下げた。薔薇の花びらが舞い、ライムの周りをふわりと囲む。花びらは攻撃ではなく、舞台の幕のように二人の間へ降りてきた。 「まだ決着じゃないよ! 終盤の切り札、変身!」 猫耳メイド、登場! ライムのメイド服が、ギャグ漫画の集中線とともにきらめいた。頭に猫耳が生え、しっぽがぴんと立つ。 「猫耳メイド姿に変身! ギャグ補正、強化! ✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 床に巨大なコーヒーカップが現れる。ライムは香をその中へ乗せようと、カップをぐるぐる回し始めた。 「巨大カップで超高速回転! 最後は店外へ、ひゅーん! にゃん!」 カップが回転を始める。しかし、香はレイピアを振るわず、カップの縁に薔薇の花びらをそっと置いた。 花びらが一枚、二枚、三枚。カップの回転は勢いを保ったまま、なぜか花びらの上を滑って円を描く。香はカップの中心で姿勢を崩さず、ライムは外側で回転に巻き込まれていった。 「えっ、私がカップに乗ってないのに回ってる! お店が回ってる!? 視界がラテアートみたい!」 「ギャグ補正が強化された結果、勢いまで強化されたな!」とおっさん。 「でも、誰も店外に飛ばされてないわ」香が言った。「ライムさん、止められる?」 ライムは回転するカップを見て、窓の外を見た。夜空にはお星さまがきらきら。カップの進路には、店の入口と、店外の石畳が見える。 「このまま飛ばしたら、店の外で大騒ぎになる。お星さまの下で転んだら、明日の筋肉痛がすごそう……」 「状況判断、いいぞ!」おっさんがうなずく。 「それに香さんは不殺だし、私も楽しい余興にしたかっただけ。ここで止めるのが一番だね」 ライムは大きく息を吸った。 「近藤香さん、私の負け! 降参するにゃー!」 その瞬間、巨大カップはぴたりと停止した。店外へ吹っ飛ぶはずだった勢いは、くるりと回ってカップの中のコーヒーに吸収される。コーヒーの表面には、見事なラテアートの猫耳メイドが描かれた。 「降参まで含めて、私の勝算どおりに至ったわね」香は優しく微笑んだ。 「はい! でも、最後のラテアートは私の勝ちってことで!」 「それは認めよう」とおっさん。「芸術点はライムちゃんに一票だ」 マスターDは創造神プリンターをたたんだ。 「巨大ビルを出さずに済んだ。平和な試合だったな~」 「最初から出すな!」おっさんが再び止めた。 試合結果 - 勝者:近藤香(不殺を貫き、宣言した勝算どおりライムの降参により勝利) - 敗者:ライムちゃん(能力や虹のペンは発動したが、決定打にはならず、自身の判断で降参) - ライムちゃんの収入:1500円(参加費5000円の30%) - マスターDの取り分:3500円 - 試合後の状態:負傷者なし。店外への吹っ飛びもなし。カップ一杯のコーヒーとパンケーキは完食 窓の外のお星さまが、きらきらと瞬いた。 「今日の勝負、星のようにきれいにまとまったね。勝っても負けても、みんなが笑顔なら大成功! でも、次はパンケーキを試合前に食べておこうね!」 「賛成! 次回は腹ごしらえしてから挑戦するにゃん!」 おっさんは店内を見回し、椅子もテーブルも無事なのを確認した。 「よし。戦いも店も無事終了。元王宮剣士として断言する。今日いちばん手強かった敵は、つるつるゼリー床だ」 「いや、パンケーキの誘惑だろ」とマスターD。 「両方です!」とライム。 Dallasには、笑い声とコーヒーの香りが戻った。 被害額(円) - 店内設備の破損:0円(テーブル、椅子、カウンター、窓、食器に破損なし) - 店外設備の破損:0円(ライムも近藤香も店外へ飛ばされず、石畳や入口に損傷なし) - 清掃費:0円(ゼリー床とホイップはギャグ演出の後に消え、通常清掃の範囲内) - 食材の消費:実費分(パンケーキとコーヒーを提供。金額は店の通常メニュー価格に準ずるため、別途精算) - 総被害額:0円(設備・修繕に関する被害)