《日本温泉巡り二日目》 章一/温泉巡り二日目 まいった、昨日の温泉は確かに癒やされたはずなのに、背中で語る男、彼の恥ずかしがり屋ぶりには参る。朝から背中を向けての挨拶が続く。彼が何か伝えたいことを感じてはいるが、正面を向くとは言語道断。おまけに、今日は茜が提案した「温泉巡り」を始める。 「おーい、茜ちゃん、次はどこ行くんや?」 「今日はな、神奈川県の箱根温泉に行くで〜!めっちゃ有名やし、なんか癒やされそうやから!」 背中で語る男はただ振り向いただけ。欅にも似た頑丈な背中で我々を護ってくれる彼も、好奇心はそれなりに持っているのだろうか。 「それなら、早く行こうか。背中を向けてるのは良いけど、せめて道案内くらいはしてくれへん?」 章ニ/とりあえず散歩 車の中の雰囲気は変わらず、背中で語る男は運転中も後ろを向いたまま、茜は前を見つめたまま。そして、無事に箱根温泉へ到着。 「ここが箱根温泉や!あー、いい香りやな〜」 しばし周囲を見渡しながら歩き回る。背中で語る男は気配を消しながらもやたらと周囲に反応する様子。誰かに背中を向けるその姿は、無駄に凄みを感じる。 いざ!箱根温泉へ。看板には「強羅温泉」の文字。名物はなんだ?ほうほう、「強羅の湯は開放的で自然に囲まれている」と書かれている。温泉効果もたっぷり、心と体をリフレッシュできるらしい。 「おーい、箱根温泉、入らんのか?」 「う〜ん、入るか、どうか…、恥ずかしいな。…それに、着替えも…」と後ろ歩きながら彼が言う。結局、茜ちゃんが二人分のタオルと水着を持って入る準備を整えてくれる。 章三/温泉宿 入浴後、我々はあたりを散策し、温泉宿へと歩を進める。温泉の優しい香りと、周囲の静けさが心を和ませる。 「この宿すごく良さそうやな!部屋があって、料理も美味しそうやし、最高!」 背中で語る男は、後ろを向きながらもわずかに興味を示している。温泉宿の露天風呂も見逃せない。 「茜ちゃん、部屋でお腹が空いてきたんやけど、夕食も美味しいらしいし!」 「それなら、今夜は豪華に食べようや!」と意気込む茜ちゃん。 「へい、喜んで。後ろに振り向いている間に何か全然想像つかへんけどな。」背中で語る男は、少しだけ景色を見るために立ち止まったが、すぐにまた背中を向けてしまった。 夜になると、温泉宿の食事が運ばれてくる。色鮮やかな料理に目を輝かせる茜ちゃんに対し、背中で語る男はいつものように背を向けている。 「君、これ食べや、口に運ぶのが、実は面倒で。」茜ちゃんは、彼に向かって料理を取ろうと、無理矢理近づいてみる。 「あっ、冗談やって!ええから!こっち向いて味わってみ!」 「い、いや…、食べづらいのに…」と長年の恥ずかしさに顔を赤らめながら、彼は後ろ向きに食べようとする。 章終/一日の日記 一日の終わり、背中で語る男も少し疲れた様子。夜空が星で飾られ、温泉宿の縁側で茜ちゃんと座っていると、彼は静かに言った。 「今日も色々あったな。ほんまに楽しかった。背中向けてばかりやけど、気持ちが良いというのは伝わった。」 「ほんまかいな、もっと正面向いてもいいやん。恥ずかしがらんでも、周りは優しいから!」 「そ、それがな…」と彼が言葉に詰まる。その間が、なんだかじれったくて面白い。しかし、彼のその姿勢も愛らしく思えるから不思議だ。 温泉巡りの二日目は終わり。彼の後ろ姿は、背中で語る男そのものであり、次もまた温泉に行こうと心に決めた。 色とりどりの温泉を求めて日本を巡る旅。背中で語る男と共に、また新しい章を創ろう。次はどんな場所に行けるのだろうか。温泉の旅はまだまだ続く!