聖杯戦争・永劫豪雨の都編 第一章:召喚の雨、冬木の変異 日本の地方都市、冬木。そこは古来より魔術師たちの血で染まった聖杯戦争の地である。しかし、今回の聖杯戦争は異常であった。聖杯の器が歪んだのか、あるいは何らかの外部干渉があったのか。冬木の街は突如として空間転移を起こし、異界の都市へと変貌を遂げた。 「大規模永劫豪雨都市イムベル」 空を覆い尽くす厚い暗雲から、絶え間なく豪雨が降り注ぐ。街は巨大な高層ビル群と、その周囲を囲む絶望的な深さの渓谷に塗り替えられた。視界を遮る雨と、冷徹な水の壁。魔術師たちは、この絶望的な環境下で、自らのサーヴァントを召喚し、生き残りをかけた戦いに身を投じることとなる。 ある地下室で、若き魔術師・久遠(くおん)は血の陣を描いた。彼は水術に長けた一族の末裔である。 「告げる。汝の身は我が下に、我が命は汝の剣に。聖杯の寄る辺として、ここに召喚に応えよ!」 眩い光と共に現れたのは、青いレインコートを纏い、陽気に微笑む少女だった。 「雨ぴちゃぴちゃ♪今日も雨が凄いね。僕は雨が好きだよ。キミは?」 久遠は呆然とした。召喚されたのは、戦場そのものであるイムベルの住人、雨遠雫。クラスは【キャスター】。彼女は水と雨を自在に操る権能を持っていた。 一方、海外から招聘された冷酷な魔術師、エドワードは、赤い炎のような魔力を込めて召喚を行った。 「来い、最強の剣よ。我が道を切り拓く刃となれ」 現れたのは、紅い髪をなびかせ、土色のセーラー服を着た少女。紅旋尊。クラスは【セイバー】。彼女は静かに、しかし鋭い眼光でマスターを見た。 「さて……行こっか☆」 さらに、快楽主義的な魔術師・リディアは、悪戯っぽく笑う少女、峰嵐流夢を【アサシン】として召喚し、厳格な魔術師・ハンスは、不思議な双子ラック&アンラックを【バーサーカー】(精神的な意味での特異点)として召喚した。 そして、野心に燃える魔術師・ゼノは、理を書き換える力を持つ永夢を【ルーラー】(自称)として、また、正義を信じる青年・カイトは、不屈の魂を持つ男オルガ団長を【ランサー】(槍ではなく拳銃と拳で戦う異端の戦士)として召喚した。 こうして、冬木という名の「雨の監獄」で、六組の陣営による殺し合いの幕が上がった。 第二章:波紋と水刃の邂逅 イムベルの街は、五日ごとに全浸水し、六日目にリセットされるという残酷なサイクルを持っていた。マスターたちは、浸水を避けるため、また戦略的拠点を確保するために、中央の「巨大気候観測施設」を目指す。 ある日、リディアのサーヴァントである流夢は、路地裏で久遠と雫に遭遇した。 「ねぇねぇ、知ってる?…『波紋は幾度も起きる』。ボクの能力のヒントだよっ♪」 流夢が愉快そうに笑いながら、太刀【戮嵐刀】を振るう。空気が激しく震え、目に見えない衝撃波が久遠たちを襲った。 「危ない!」 久遠が叫ぶが、衝撃波は回避不能な速度で迫る。しかし、雫が軽く手をかざすと、降り注ぐ雨粒が瞬時に硬質化し、盾となった。 「あはは、ボクの雨は最強なんだよ!【沈む雨音】!」 雫が指先を弾くと、周囲の雨粒が針のように鋭利な水刃へと変わり、流夢へと降り注ぐ。リディアは慌てて令呪を消費し、流夢に加速を命じた。 「令呪行使!逃げろ流夢!」 光と共に流夢の速度が跳ね上がり、水刃を紙一重で回避する。しかし、雫は光学迷彩雨コートを用いて透明化し、死角から突きを繰り出した。水による圧縮攻撃が流夢の肩をかすめる。 「あいたっ!もう、この子お喋りだけど強いね!」 互いの能力を見定めた二組は、一時的に撤退した。しかし、彼らはまだ気づいていなかった。この雨の街に、絶望的な「運」と「不運」を操る双子が潜んでいることを。 第三章:幸運と不幸の迷宮 ハンスと双子、ラック&アンラックは、街の廃墟に陣を張っていた。彼らは能動的に攻撃することはない。しかし、彼らに近づく者は必ず悲劇に見舞われる。 そこに、エドワードと紅旋尊が通りかかった。エドワードは効率的に敵を排除するため、双子を先に始末しようと考えた。 「尊、あの子供たちを斬れ。端的に、確実にだ」 「……了解。本気で行きますよ」 尊が【葉刃一刀】を抜き、一閃。紅葉色の刃がアンラックの首を捉えようとしたその瞬間、ありえないことが起きた。 ガシャァァン!! 上空から崩落した看板が、タイミングよく尊の視界を遮り、さらに地面に飛び出した配管が尊の足を引っ掛けた。完璧なタイミングでの「不運」。尊は転倒し、攻撃は空を切った。 「なっ……!?今のタイミングで看板が落ちるだと?」 エドワードが驚愕する中、ラックはニコニコと微笑み、アンラックは暗い顔で俯いている。彼らは何もしていない。ただ、そこにいるだけで、攻撃者は自滅する。 「この双子……異常だ。正攻法では勝てない」 エドワードは舌打ちし、撤退を決める。しかし、その背後から、銃声が鳴り響いた。 タタタタッ!! 「止まるんじゃねえぞ!!」 現れたのは、カイトとオルガ団長だった。オルガは二挺の拳銃を乱射し、エドワード陣営を強襲する。 第四章:不屈の団長と理の支配者 オルガ団長の攻撃は激しく、エドワードは窮地に陥る。尊が間一髪で刀を合わせ、弾丸を弾き飛ばすが、オルガの突進力は凄まじかった。 「お前、いい根性してるな!だが俺の仲間たちに比べりゃ、まだまだだ!」 激しい乱戦の中、ついに「最悪の参加者」が現れる。ゼノと永夢である。 永夢は退屈そうに欠伸をしながら、戦場に降り立った。彼が口を開いた瞬間、世界の理が書き換わる。 「そこに立っていろ」 その言葉と共に、オルガ、尊、そして双子までもが、見えない鎖に繋がれたかのように完全に静止した。指一本動かせない。絶対的な拘束。 「なっ……!体が動かない!?」 ゼノが冷笑する。永夢の能力「マイティノベルX」は、言った言葉を現実に変える。これはもはや魔術ではなく、神の権能に近い。 「次はこれだ。……痛みを知れ」 永夢が静かに呟いた瞬間、拘束されていた全員の体に、不可視の衝撃が走った。内側から弾けるような激痛が彼らを襲い、血が噴き出す。 「ぐああああ!!」 絶望的な状況。しかし、ここでオルガ団長だけが違った。彼は血反吐を吐きながらも、不敵に笑った。 「……へっ、これくらいなんて事はねぇ」 永夢が追い打ちをかける。「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」 強烈なキックがオルガの胸を貫き、彼は壁まで吹き飛ばされ、絶命した。カイトは絶叫し、自らのサーヴァントを失った絶望に打ちひしがれる。 だが、その時だった。どこからともなく、切ないピアノの旋律……『フリージア』のサビが戦場に流れ出した。 「……は? 何だこの音楽は」 永夢が首を傾げた瞬間、死んでいたはずのオルガ団長が、光に包まれて完全に復活した。傷一つない、全快の状態である。 「だからよぉ……止まるんじゃねえぞ!!」 不屈の復活能力。永夢の「確定した死」さえも、オルガの「止まらない魂」が上書きしたのである。 第五章:絶望の浸水、最終決戦の幕開け 聖杯戦争開始から五日目。イムベルの街に、最大級の警報が鳴り響いた。全浸水の刻である。 街中の水位が急激に上昇し、ビルが次々と水没していく。機械的な罠や防衛兵器が水に触れ、ショートして消滅していく。しかし、この環境こそが、雨遠雫の独壇場だった。 「みんなー!水遊びの時間だよ♪」 雫は水の上を軽やかに走り、水没した街を自在に移動する。対する永夢は、水さえも「消えろ」と言えば消せるはずだったが、イムベルの雨は「永劫」の概念を持っており、部分的に消してもすぐに補填される。 「チッ、この街の特性が邪魔をするか」 一方、紅旋尊は絶体絶命だった。水に濡れた服が重くなり、機動力が低下している。そこに、流夢の【戮嵐刀】による波紋攻撃が襲いかかる。 「あはは!重たいねー、紅葉ちゃん!じゃあ、これで終わりだよ!」 流夢の刀が尊の喉元に迫る。その時、エドワードが最後の令呪を消費した。 「令呪行使!限界を超えて斬り伏せろ!」 魔力の奔流が尊に流れ込む。尊は一瞬だけ水圧を無視した超速の踏み込みを見せ、流夢の懐に潜り込んだ。 「【落ちゆく紅葉】!!」 自らの血を雨に混ぜ、紅い葉の嵐を巻き起こす。血の葉の一枚一枚が鋭利な刃となり、流夢を切り刻んだ。リディアは悲鳴を上げ、サーヴァントの消滅と共に、彼女自身も水没したビルから脱出できず、溺死した。 戦場は、ついに最終陣営へと絞られていく。 第六章:気候観測施設の死闘 生き残ったのは、久遠&雫、エドワード&尊、カイト&オルガ、そしてゼノ&永夢。そして、依然として「そこにいるだけ」の双子である。 彼らは最終決戦の地、中央巨大気候観測施設へと集結した。六階の自律機械制御室を制した者が、この街の天候を操り、聖杯への道を切り拓く。 制御室への階段で、激突したのはオルガと永夢だった。 「お前の復活はもう飽きた。消えろ」 永夢が冷酷に言い放つ。しかし、オルガは叫んだ。 「勝ち取りたいものもない無欲なバカにはなれない!!」 突如、BGMが『RAGE OF DUST』へと変わり、オルガの体が巨大化し、筋骨隆々の姿へと変貌した。無敵の突進。永夢の「当たらない」という言葉を、物理的な質量と熱量で強行突破する。 「なっ……!? 言葉を無視して突っ込んできた!?」 ドォォォン!! 永夢は壁まで吹き飛ばされ、初めて苦悶の表情を浮かべた。しかし、ゼノが令呪を使い、永夢に「絶対的な防御」を付与する。これにより、オルガの突撃は止まった。 その隙を逃さず、雫が天井から水刃の雨を降らせ、尊が紅い斬撃を叩き込む。四つ巴の乱戦が、制御室を破壊し尽くした。 第七章:聖杯の行方、雨の止む日 戦いは極限に達していた。もはやマスターたちも疲弊し、令呪も底をつきかけている。 最後の一撃を加えようとした瞬間、戦場にいた全員が、あることに気づいた。 双子のラックとアンラックが、ゆっくりと歩いてきて、制御室の中央にある聖杯の器に触れたのである。 「……え?」 その瞬間、ありえない連鎖反応が起きた。 永夢が放とうとした最強の言霊が、不運にも自身の喉に詰まって不発に終わる。 オルガの突進が、不運にも床の亀裂に足を取られ、盛大に転倒する。 雫の水刃が、不運にも突風に流され、味方の久遠を直撃させる。 尊の刀が、不運にも折れた。 すべては「アンラック」の不幸の権能。そして、彼らが聖杯に触れたことで、その「幸運」と「不幸」の波が戦場全体を飲み込んだ。 「あはは……結局、何もしてない奴らが一番強いのかもね」 雫が力なく笑う。もはや戦う力は残っていなかった。 聖杯は、最も「何も欲しがらなかった」双子に、その所有権を与えた。聖杯の光が双子を包み込み、彼らの願い——「ただ静かに二人でいたい」というささやかな願いが叶えられる。 その瞬間、千年の雨が止んだ。 雲が割れ、イムベルの空に、見たこともないほど青い空と太陽が降り注いだ。水没した街に光が差し込み、戦士たちは静かに消えていく。 「……いい天気だな」 オルガ団長が、空を見上げて呟いた。彼は消滅する直前、満足そうに笑っていた。 【最終結果】 勝者:ラック&アンラック(およびマスター・ハンス) 理由:* 他の参加者が強力な攻撃能力や現実改変能力を持って戦い合い、互いの体力を削り合った結果、最終的に「攻撃することなく、近づく者を自滅させる」という絶対的な受動的防御を持つ双子が、最後の一人として聖杯に到達したため。最強の攻撃は、最強の不運に敗北した。