《敵の捜索》 空は濁った灰色に塗りつぶされていた。視界を遮る厚い雲の隙間から、不吉な黒い影が高速で横切る。正体不明の脅威「定義未詳-弐型」。その正体を探るべく、接点のない四者が一つの戦域に集結していた。 「……不愉快な気配だ。古き良き静寂を乱す不純物が舞っているな」 三神織子が巨大な紙飛行機に跨り、超高度から冷徹な視線を地上へ落とす。彼女の出現と同時に、どこからともなく不協和音のような警報が鳴り響き、戦域に緊張が走った。 地上では、白い装甲を纏った機械兵、ルプスが静かに武器を点検していた。 「おやおや、随分と物騒な面々が集まりましたね。ですが、お急ぎの方は多いようです。私は私の役割を全うしましょう」 その傍らで、少年・浮島晶が興奮気味にフレイルを振り回す。 「よっしゃあ!あいつが噂のボスか!オレの雷でビリビリにしてやるぜ!」 そして、静寂を纏う男、グランデ。彼は何も語らず、ただその眼で「未来」を視ていた。彼にとっての戦いは、すでに結論が出ている計算式に過ぎない。 《会敵》 突如、空が「塗り潰された」。 快晴だったはずの天頂が、瞬時にどろりとした暗黒に染まる。太陽の光が消失し、完全な闇が世界を支配した。 「――っ!?」 晶が叫ぼうとした瞬間、凄まじい重圧が四人を襲った。身体を地面に縫い付けるような不可視の圧力。呼吸さえも困難にする絶望的な重力。能力「DISTANCE」の展開である。 闇の中から、音もなくそれが舞い降りた。 体長二メートルほどの、天狗を彷彿とさせる黒い異形の化身。口はなく、眼はなく、ただそこに「絶対的な拒絶」としての存在感だけがある。「定義未詳-弐型」は、一切の言葉を発さず、ただ静かに腕に携えた武器を構えた。 《戦闘》 「どけ、子供。ここは私が片付ける」 織子が高度を下げ、空間を歪める「ディストーション」で重圧を強引に撥ね除け、上空から爆弾型の折り紙を大量に投下した。「サクリファイス」の炎が闇を焼き払い、地表を紅蓮の海に変える。 しかし、ボスは微塵も動じなかった。黒い影が軽く武器を振るう。その瞬間、真空を切り裂くような衝撃波「FIELD」が炸裂した。 「がはっ……!」 至近距離で衝撃を受けたルプスが、白い装甲を激しく軋ませながら後方へ吹き飛ばされる。同時に、突撃銃の弾丸を撃ち込むが、ボスは空間を滑るように回避し、ルプスの懐へ潜り込んだ。 「おっと、危ない!」 晶が「リニアダッシュ」で電磁加速し、ボスとルプスの間に割り込む。金色のメッシュをなびかせ、古代魔法の力を纏ったフレイルを叩きつける。「ブレイクダウン」の一撃がボスを捉え、雷撃と共に地面へと叩き落とした。 激しい爆発。土煙が舞う中、グランデが静かに歩み出た。彼は「予測の眼」で0.5秒後のボスの挙動を完全に掌握していた。 「……斬る」 次元を両断する双剣が閃く。どのような次元に逃げようとも、逃げ場はない。空間そのものを切り裂く一撃がボスの核を捉えようとした。だが、ボスは無機質な動きでそれを回避し、再び空へと舞い上がる。この戦いは、圧倒的な手数を持ってしても、相手に「届かない」絶望的な距離感に支配されていた。 《結末》 戦いは極限に達した。ルプスは錆びた短刀を捨て、残りの手榴弾をすべて起爆させ、自らの肉体を盾にしてボスの足止めを試みる。晶は魔力のすべてを「ハートビートストライク」に注ぎ込み、最大出力の電撃を放射した。 その隙を、織子が逃さなかった。彼女は自身の全魔力を使い、武装した紙人形の群れ「ケイオス」をボスの周囲に展開させ、物理的に拘束を試みる。 「今だ、グランデ!!」 拘束されたわずかな一瞬。グランデが次元の結界を突き破り、ボスの中心核へ向けて双剣を突き立てた。空間が悲鳴を上げ、黒い影が裂ける。しかし、ボスの眼(あるはずのない場所)が紅く光った。 禁断の奥義「DEATH」。 暗黒の波動が、四人の「生命線」を抹消しようと奔流となって押し寄せる。絶体絶命の瞬間、グランデが「次元の防御」を最大展開し、仲間たちを包み込むようにしてその衝撃を肩代わりした。衝撃でグランデの身体は激しく打ち付けられたが、その隙に、ルプスが模倣した「最適解の打撃」と、晶の雷撃、そして織子の空間歪曲が同時にボスを直撃した。 爆光が走り、暗黒の空が砕け散る。定義未詳-弐型は、その形を維持できなくなり、音もなく黒い霧となって消滅した。 《その後の本部の運命》 戦いは終わった。しかし、勝利の歓喜はなかった。 ボスが消滅した瞬間、彼が展開していた「DISTANCE」の反動が、特異点となって本部に直撃した。次元の歪みが本部の座標を飲み込み、堅牢だったはずの施設は、まるで紙屑のように内側から圧壊していった。 瓦礫の山となった本部。生き残った職員たちが呆然と立ち尽くす中、そこにはもはや指揮系統も、記録も、秩序も残っていなかった。ただ、静かに降り積もる灰のような黒い粒子だけが、かつてそこに最強の防衛拠点があったことを物語っていた。 【MVP:グランデ】 運命:ボスの最期の攻撃を次元防御で受け止めたことにより、魂の次元が一部変質した。以降、彼は現実世界に半分だけしか存在せず、誰にも触れられない「幽霊のような観測者」として、世界の境界を彷徨うこととなった。