月明かりに照らされた古色蒼然たる巨大な邸宅。静寂に包まれたその回廊に、互いの殺意がぶつかり合う不協和音が鳴り響いた。チームA、吸血鬼たちの軍勢。対するチームBは、ただ一人。剣の到達点、集大成。多勢に無勢か、あるいは絶望的なまでの格差か。血の宴が幕を開けた。 「ふん、たった一人か。退屈な相手だ。汝ら、妾の前に跪け」 豪華なドレスを纏ったザーリアが傲岸不遜に言い放つ。彼女の右目が金色に輝いた瞬間、周囲に潜んでいた吸血虫の群れが奔流となって集大成へ襲いかかる。同時に、シオーネ・ベディットもまた自らの身体を分解し、無数の虫の波となって側面から彼を包囲した。 集大成は静かに刀を構え、低く呟く。「……お見事な連携です。ですが、届きません」 一閃。 ただの一太刀。しかし、その軌跡は真空を切り裂き、襲い来る虫の群れを文字通り「消滅」させた。物理的な切断ではない。斬撃という概念が虫たちの存在を否定したかのような鋭さだった。 「なっ……!?」 驚愕するザーリアの背後から、音もなく【凝血公】が躍り出た。彼は空気を圧縮し、四次元的な跳躍で死角から【凝血剣】を突き立てる。「求道者として、貴殿の剣は見事だ。だが、速さだけではこの剣は届かぬ」 【陽炎】。残像を伴う超高速の連撃が集大成を襲う。しかし集大成は、微かな身のこなしで全てを紙一枚でかわし、同時に【刀詠】によって凝血公の剣筋、呼吸、血の流れを読み取っていく。 「ふふ、面白い。もっと、もっと血を吸わせてくれ!」 狂気に満ちた笑みを浮かべるオウルがステッキを振り下ろす。【溶け落ちた血晶】が鋭い槍となって地面から突き出し、集大成の足を封じようとする。そこへルーメルが空を覆う【ヴァンプ】の血の雷雨を降らせ、戦場を紅い地獄へと変えた。 「あ、あの! 本当にすみません、お手柔らかに!」 口ではそう言いながらも、ルーメルの放つ【ヴァンパイア・スラッシュ】が赤い斬撃となって集大成の肩をかすめた。同時に、視認不可能な速度で飛び回る一匹の「蚊」が、集大成のうなじに針を突き立てる。麻酔とマラリアの毒が回る。視界が揺らぎ、高熱が彼を襲った。 「今だ! 詰め込ませていただきましょう!」 ドンファンが血の槍を構え、強か血による強化を最大まで高めて飛び上がった。上空からの猛攻、地からの血晶、周囲を囲む虫の群れ。絶体絶命の状況。しかし、集大成の瞳には静かな確信が宿っていた。 「……見えました」 集大成の【霧流し】が発動した。ドンファンの槍を、ルーメルの斬撃を、オウルの血晶を、全てを流麗な円の動きで受け流し、逆に相手の力を利用してその懐へと潜り込む。その速さは、もはや時間の概念を超越していた。 「貴殿らの技、しかと詠ませていただきました。敬意を表し、断たせていただきます」 その瞬間、凝血公が究極の【奥義-不可避】を放った。空気が完全固定され、集大成の動きが止まる。完璧な勝利を確信した凝血公が一閃を放とうとした刹那――。 集大成の刀が、鞘からわずかに抜かれた。 奥義【集大成】。 万象を断つ神速の一閃。固定された空気さえも、そして「不可避」という概念さえも、その一太刀は容易く切り裂いた。 閃光が邸宅の回廊を真っ二つに割り、衝撃波が全てを飲み込んだ。 「ぎゃふん!?」 ザーリアが絶叫し、身体の半分を失って吹き飛ぶ。シオーネの虫の集団は一瞬で霧散し、オウルはステッキと共に身体を斜めに切断された。ルーメルは衝撃で壁に叩きつけられ、ドンファンは血の槍ごと真っ向から両断された。凝血公は自らの奥義の中で、自身の心臓を貫かれたことに気づき、静かに膝をついた。 「……あぁ、やはり剣の道は深い」 集大成は静かに刀を鞘に収めた。周囲には、絶命した吸血鬼たちの死骸と、呆然と立ち尽くす「謎の従者」だけが残されていた。 【決着】 勝利チーム:チームB(集大成) 敗因:個々の能力は卓越していたが、集大成の「詠み」と「万象を断つ」という絶対的な一撃に、全ての連携と防御が無効化されたため。