夜の静寂に包まれた旅館の一室。12畳の空間には、修学旅行に訪れたバトラーたちの寝息が響いていた。しかし、その静寂は「ある衝動」によって一瞬にして切り裂かれる。 誰が始めたのかは分からない。だが、誰一人として止める気はなかった。 「――開幕だ!!!」 誰かの叫びと共に、真っ白な枕が宙を舞い、狂乱の枕投げ大会が幕を開けた! 第1章:静寂の崩壊と初撃 最初の一撃を放ったのは、張り切っていたスツールだった。彼女は臆病ながらも、今日ばかりは負けたくないという強い意志を抱いていた。 「や、やってやります! えいっ!」 ふかふかの枕が緩やかな放物線を描き、隣で寝ていた田所健二の顔面に直撃する。 しかし、田所は動じない。いや、むしろ頬を赤らめ、恍惚とした表情を浮かべた。 「あぁ……! この心地よい衝撃! たまらないっ!」 スキルの『キモティー』が発動。ダメージを快感に変換した彼は、さらに攻撃を欲して身悶えし始めた。防御力はすでに千兆倍に跳ね上がっている。もはや枕で彼を脱落させるのは不可能に近い。 第2章:重力なき戦場 混乱の中、クールに状況を分析していたのはイタリアの警察官、グレイだ。彼はスーツ姿のまま(なぜかパジャマに着替えていない)、鋭い視線で周囲を捉える。 「さて、効率的に片付けようか」 グレイが視線を向けた瞬間、スツールの足元の万有引力が消失した。 「ひゃあああ!? 体が浮いたーっ!」 宙に浮き、パニックになるスツール。そこへ、ロシアの誇り、テイ・サヨナが鋭い蹴り(のようなフォーム)で枕を突き出した。 「私の優秀さを見せてあげるわ! どきなさい!」 ドゴォッ! 浮遊状態のスツールに枕が直撃。スツールはそのまま壁際まで弾き飛ばされ、あえなく脱落した。 「あわわ……。わたし、負けちゃいましたぁ……」 第3章:蒸気の咆哮と雨の予兆 「私だって、誰かの役に……じゃなくて、勝ちたい!」 マコア・ベルーハが蒸気義肢を駆動させる。シュゴォォッ!という排気音と共に、彼女は驚異的な身体能力で枕をキャッチし、超高速で投げ返した。 その弾丸のような枕が、グレイの肩をかすめる。グレイは冷静にそれを回避するが、マコアの攻撃頻度は凄まじい。 一方、部屋の隅で静かに佇んでいた少年、ナナシ。彼は無口だったが、彼の周りには不思議な気配が漂っていた。 (……あめさん、お願い) ナナシが小さく願うと、密閉されたはずの旅館の一室に、局所的な「雨」が降り出した。床が濡れ、足場が悪くなる。滑りやすくなった床に、勢いよく突進していたサヨナが足を滑らせた。 「きゃっ!? な、何なのこの天気は!?」 第4章:恐怖の足音――生活指導の先生 その時、廊下から「ドシン……ドシン……」と、心臓を凍らせるような足音が聞こえてきた。生活指導の先生の見回りだ。 「……おい。誰か起きている者はいないか」 地獄のような低音。全員が凍りつき、瞬時に「寝たフリ」に移行した。 グレイは空中で静止したまま、サヨナは床に転がったまま、マコアは蒸気の音を止めて石のように固まった。田所だけは快感に浸りすぎて「ふふっ」と鼻息を漏らしていたが、運良く先生の死角に入っていた。 先生が部屋を通り過ぎ、足音が遠ざかる。再び静寂が訪れたが、それは嵐の前の静けさだった。 第5章:混沌の共闘と裏切り 「ふふふ……最高の快感だ。もっと、もっと私を叩け!!」 田所健二が、もはや快感の臨界点に達し始めていた。彼の周囲に不気味なオーラが渦巻く。このままでは『分子レベルの崩壊攻撃』が放たれ、旅館ごと消滅しかねない。 「まずいわね。あいつを先に片付けないと、部屋が壊れるわ」 サヨナが提案し、なんとグレイと一時的な同盟を結んだ。 グレイが田所の引力を操作して彼を天井に張り付かせ、その隙にサヨナが最大速度で枕を連射する。 「これでもどう! 俄罗斯(ロシア)の誇りよ!」 しかし、攻撃を受ければ受けるほど、田所の防御力は千兆倍、万兆倍と増えていく。もはや枕は彼に当たった瞬間に跳ね返される「弾丸」へと変わった。 第6章:天気の微笑み 跳ね返った枕の嵐がマコアとサヨナを襲う。絶体絶命の瞬間、ナナシが静かに手をかざした。 『晴れるよきっと』 突然、部屋の中に眩いばかりの陽光が差し込んだ。精霊「はれさん」の力だ。あまりの眩しさに全員が目を細めたその瞬間、ナナシは「あめさん」の力を使い、田所の足元だけに激しい豪雨を降らせ、視界と足場を奪った。 「いまです!」 マコアが蒸気義肢のブーストを全開にし、残っていた唯一の巨大な枕(掛け布団を丸めたもの)を全力で投擲した。 第7章:最終決戦――快感の臨界点 マコアの投擲した枕は、ナナシの風の誘導を受け、正確に田所の急所に命中した。 「アアアアッ!! これだ! これこそが至高の快感!!」 田所が絶頂に達した。スキル『キモティー』が最大出力に達し、衝撃波が放たれる――と思われたが、グレイが即座に田所の周囲の万有引力を「反転」させた。 衝撃波は田所自身に向かって跳ね返り、彼は自分の快感の波に飲み込まれて意識を失い、そのまま脱落(気絶)した。 第8章:生き残ったのは 残ったのは、グレイ、サヨナ、マコア、そしてナナシ。 互いに牽制し合い、誰が最後の一撃を放つか。しかし、彼らは気づいた。もはや投げる枕が一つも残っていないことに。 「……枕がないわ」 「あはは、全部使い切っちゃいましたね」 その時、再び廊下から先生の足音が聞こえてきた。 「まだ誰か起きているな……?」 全員が同時に寝たフリをした。しかし、あまりに激しく動いていたため、布団が乱れ、部屋は戦場と化していた。先生がドアを開けた瞬間、一番「不自然に静かに寝ていた」ナナシ以外の全員が、乱れた布団と格好悪いポーズを指摘され、強制連行されていった。 【勝者:ナナシ】* 理由:精霊の力で周囲をコントロールし、最後は「一番自然に寝たフリができた」ため。