謎の洞窟、その最深部。視界を遮るほどの濃密な熱気と、足元から絶え間なく吹き上がるマグマの奔流。そこは生物が足を踏み入れることを拒絶する、灼熱の地獄絵図であった。 その溶岩地帯の中央に、彼がいた。橙色の岩肌のような皮膚、天を突き刺さんとする巨大な二本の角。太古の昔に魔族の王として君臨し、自らに禁忌の進化を施した不老不死の怪物――エスターク。彼は深い眠りにありながらも、その肉体は今この瞬間も進化を続けていた。 「グゴゴゴゴ……誰だ?我が眠りをさまたげる者は?」 地響きのような声が洞窟全体を震わせる。エスタークがゆっくりと眼を開いた。そこには、次元の歪みを越えて集結した異能の軍団が立っていた。 「筋肉なら可能だ!この暑さこそ最高のサウナトレーニングだぜ!」 上裸の巨躯を誇るN筋が咆哮し、隣ではD筋が冷静にタブレットを操作している。 「計算完了。環境温度、気圧、相手の筋密度……最適解を導き出しました。N筋、フォームを修正してください。ここからは『合同筋トレ』による最大出力の打撃が必要です」 「信念こそが道を切り拓く!行くぜ相棒、八岐大蛇!」 学ランに身を包んだ少年、威座内が天叢雲剣を抜き放つ。彼の背後から、神話の巨龍・八岐大蛇が咆哮と共に顕現した。 さらに、空を裂いて降臨したのは灼天の帝王ヴォルカニオン・レクス。「グハハハ!!この俺に相応しい獄炎の地ではないか!」その巨大な翼が羽ばたくたび、周囲の溶岩が激しく波打つ。 不死身のトイレットペーパーの神が悠然と漂い、ライフルガチ勢なかたがマクドナルドのポテトを頬張りながら特殊ライフルを構える。そして、世界最強のゴキブリがエスタークの足元で不気味に羽を震わせていた。 「……私は滅ぼされるわけにはいかぬ。さあ、来るがよいっ!」 エスタークの全身から、黄金色のオーラが噴出した。戦闘開始と同時に、周囲に強力な【マホカンタ】の結界が展開される。魔法攻撃はすべて跳ね返される絶望的な拒絶の壁だ。 先制したのはライフルガチ勢なかた。分子レベルで消滅させる超高精度の弾丸を連射する。しかし、エスタークは微動だにせず、その強固な皮膚で弾丸を弾き飛ばした。即死・雷系の攻撃を完全に無効化する帝王の肉体にとって、物理的な衝撃は心地よい刺激に過ぎない。 「裁け阿修羅! 砕け海坊主!」 威座内の号令により、阿修羅と海坊主が同時にエスタークへ飛びかかる。しかし、エスタークは冷徹に【いてつくはどう】を放った。激しい冷気と衝撃波が戦場を駆け抜け、召喚された神々のバフと連携を瞬時に打ち消す。 「計算完了。筋肉なら可能!」 D筋の指示に従い、N筋が超高速の突進を敢行。凄まじい筋力による正拳突きがエスタークの胸板を捉える。しかし、エスタークはそれを鼻で笑い、「地獄の業火」を至近距離で放射した。灼熱のブレスがN筋を飲み込もうとしたその時、ヴォルカニオン・レクスが割り込む。 「【フレイム・デヴァウア】! 俺の餌食になれ!」 レクスがエスタークの業火をすべて吸収し、自らの力へと変換する。最強の炎属性ドラゴンと、地獄の帝王。火力を極めた者同士の激突に、洞窟の天井から岩盤が崩落し始めた。 だが、エスタークの真の恐怖はここからだった。彼は三回行動という圧倒的な手数を持つ。 「ギガブレイク!」 剣に激しい雷を纏わせた一閃が空を切り、レクスを強襲する。同時に「剣を突き立てる」ことで地面を激しく砕き、走る地割れと共に爆炎が噴出。トイレットペーパーの神が展開したペーパーメテオの雨さえも、その熱風で焼き尽くしていく。 「うおぉぉ!根性で耐えろ!」 N筋がプロテインを飲み干し、超回復を果たす。D筋が「フォーム修正完了」と告げ、二人は完璧な同期でエスタークの懐へ潜り込む。しかし、エスタークは「息を吸い込む」ことで次の攻撃の威力を極限まで高めていた。 「【必殺の一撃】!!」 全力を込めた一撃が、光速の斬撃となって放たれる。必中かつ即死を誘う絶技。だが、ここで「逆転現象」のスキルが発動した。最強の攻撃力を持つエスタークが「強い奴」として弱体化し、相対的に「弱い」はずの参加者たちが爆発的な強化を受ける。エスタークの剣が、わずかに軌道を逸れた。 「今だ! 天岩戸が開かれる……輝け天照大神!!」 威座内が最大最高の神を召喚。太陽の化身が放つ浄化の光がエスタークを包み込む。同時に、世界最強のゴキブリがエスタークの視界に飛び込み、その生理的な不快感で帝王の集中力を乱した。 「グゴゴ……不快な……この虫、そしてこの光は……!」 混乱したエスタークに、ライフルガチ勢なかたが至近距離から頭部へ弾丸を叩き込む。さらにヴォルカニオン・レクスの【アポカリプス・フレア】が、惑星規模の熱量を持ってエスタークを正面から焼き潰そうとした。 しかし、エスタークは不老不死の最強生物。致命傷を受けても【自動回復】が機能し、肉体は瞬時に再生していく。絶望的なまでのタフネス。だが、彼には弱点があった。 「眠らせろ! 今こそ筋肉の休息時間だ!」 D筋の計算に基づき、特製の睡眠導入成分を配合したプロテインを霧状に散布。さらに威座内の「惑わせ玉藻前」が精神的な錯乱を誘い、エスタークを深い眠りへと誘った。 「………………(Zzz)」 ついにエスタークが眠りについた。しかし、油断した瞬間、エスタークの身体から【怪しい光】が放たれた。眠ったままでも発動する耐性無視の無属性攻撃。参加者たちは不可視の衝撃波に襲われ、大きく吹き飛ばされる。 だが、彼らは諦めなかった。 N筋とD筋が再び手を取り合い、「合同筋トレ」の最終形態へ。威座内が八岐大蛇と鳳凰を同時に操り、空と陸から猛攻を仕掛ける。 その時、エスタークの中で何かが弾けた。 「…………目覚めたぞ」 【目覚めの力】。瞑想し、眠れる力を完全に解放したエスタークが、ゆっくりと立ち上がる。その両手の剣に、これまで見たこともない濃密な獄炎が纏い付いた。彼は静かに、その二本の剣を戦場へ投げつけた。 ドォォォォォォォォン!!! 地面にX字の巨大な斬撃跡が刻まれ、衝撃波だけで洞窟の壁が消滅する。光が収まった時、そこにはただ静かに立つ、橙色の二本角の悪魔だけが残っていた。その威圧感は、もはや生物の域を超え、神をも凌駕する地獄の絶対君主のそれであった。 「ふふふ……心地よい。記憶は戻らぬが、戦う快楽だけは思い出せたぞ」 エスタークの圧倒的な力の前に、参加者たちは膝をついた。逆転現象すらも飲み込むほどの、絶対的な「個」の強さ。もはや戦略もデータも、筋肉も信念も、この太古の怪物には届かない。 エスタークは静かに剣を構え直した。次の瞬間、世界が白光に包まれた。 【勝敗】:エスタークの完全勝利(参加者全員、戦意喪失および消滅) 【経過ターン数】:28ターン