参加者 - 名前:鶏馬茂(けいば・しげる) - 肩書:医者だが剣豪 - 能力:《チキンソウル》――万象に存在する魂を斬り、魂を支えに成立する設定・権能を瓦解させる一閃。 - 特性:《規格外の力量》《大剣豪》。物語や権限、優先度の枠外に立ち、魂斬りを無効化・拒絶されない。力量そのものは測定不能だが、誰もが「格上」という事実だけは理解する。 - 参加条件:本人が進行を望む限り、塔はどこまでも続く。敗北または十階ごとのポータル帰還で探索終了。 到達記録 各階ではボスが出現。階層が上がるほど難度はわずかに増し、強敵との遭遇率も高まる。鶏馬茂はポータルを利用せず、最終階まで登攀を続けた。 - 1~9階:通常種の魔物を撃破。 - 10階:ポータル出現。通過。 - 11~29階:異種の魔物を撃破。29階では遠距離から呪詛を放つ魔物の術式を、術式の魂ごと斬って勝利。 - 30階:ポータル出現。通過。 - 31~99階:強敵を含む各階のボスを撃破。 - 100階:ポータル出現。通過。 - 101~999階:上層種を含む各階のボスを撃破。 - 1000階:ポータル出現。通過。 - 1001~9999階:遭遇する魔物の性質は複雑化。鶏馬茂は戦いを重ね、すべてのボスを撃破。 - 10000階:ポータル出現。通過。 - 10001~18472階:高位の魔物が続けて出現。鶏馬茂は各階のボスを撃破。 - 18473階:ネームドモンスター出現。鶏馬茂は勝利し、希少な遺物を獲得。 - 18474~27360階:各階のボスを撃破。 - 27361階:最終戦。ボスに勝利し、探索を終了。 最終到達階層数:27361階 地上からの高さ:約1094.44 km(一階あたりの平均を約40mとして換算。高度約100kmのカーマン・ラインを越え、国際宇宙ステーションの軌道高度約400kmも大きく上回る) 最終到達階層――27361階のボス戦 第一章 階段のない空 27361階には、扉も階段もなかった。 鶏馬茂が最後の段を踏み越えた瞬間、背後の通路は白い霧に沈み、前方には星明かりを敷き詰めたような広間が現れた。壁は見当たらない。床だけが、夜空の底に浮かぶ黒曜石の円盤のように広がっている。 その中央に、一体の魔物が立っていた。 人の背丈に似た輪郭。しかし輪郭の内側には、星雲、燃えさしのような銀河、名もない世界の海が渦巻いている。頭部には顔がなく、胸には幾重にも重なった環がゆっくり回転していた。 その魔物がこちらを向くと、空間がわずかに軋んだ。 階層の記録板が音もなく浮かび上がる。 【終端の階層守護者】《星界種》終わりを編むもの ネームドモンスターだった。 名が告げられた途端、広間の床に細い光の線が走った。線は迷路を描き、やがて一本の道筋へ収束する。鶏馬茂は足元を見て、それから魔物を見た。 「患者の診察なら、まず話を聞くところだが」 終わりを編むものは答えなかった。かわりに、胸の環を一つ回した。 世界が止まった。 星の瞬きも、風の流れも、鶏馬茂の衣服の揺れも、すべてが静止する。魔物の権能が広間を満たし、戦いの結末を先に定めようとした。ここでは挑む者は敗北する。敗北した者は最初から挑まなかったことになる。そういう筋書きが、幾つもの層になって鶏馬茂へ迫った。 しかし彼だけは、静止の中で瞬きをした。 「なるほど。ずいぶん込み入った病だ」 第二章 結末を縫う糸 魔物の手が上がる。床の光の線が一斉に立ち上がり、糸となって鶏馬茂の身体へ絡みついた。 糸は皮膚を縛るものではない。彼が剣を抜くという意志、足を運ぶという可能性、敵を斬るという結果――それらが成立する前の根を結び、結末を縫い止めようとしていた。 だが、鶏馬茂は動いた。 糸が動作を禁じるより先に、禁じる力の奥にあるものを見た。権能もまた、ただの空白から生まれたのではない。成立させる魂を持っている。魂があるなら、刃が届く。 鶏馬茂は腰の剣に手をかけた。 その瞬間、終わりを編むものの環が激しく回転した。糸が幾重にも増え、広間を覆いつくす。負けた者たちの記憶が、幻のように現れては消える。名を失った挑戦者。帰還の門を待ちながら倒れた者。次の階へ進む意志を折られた者。 鶏馬茂は彼らに目を向けなかった。見捨てたのではない。目の前の敵を倒さなければ、この階の因果は閉じないと知っていたからだ。 「痛みがあるなら、治せる余地はある」 医師の言葉は、剣を抜く音に重なった。 第三章 チキンソウル 終わりを編むものは、最後の糸を放った。 それは鶏馬茂の存在を、挑戦者という役から始まり、敗者という結末へ結びつける一本の線だった。線が触れれば、彼のあらゆる行動は意味を失う。魔物は勝利を確信し、胸の環を止めた。 鶏馬茂は、一歩だけ前へ出た。 剣が走る。 「――《チキンソウル》」 一閃は、糸を切らなかった。 糸を成立させていた魂を斬った。 終わりを編むものの権能が崩れた。敗北を確定する筋書きが、結末へ届く前にほどけていく。胸の環がひび割れ、星々の渦が一斉に逆巻いた。魔物は拒絶しようとした。無効化しようとした。だが、拒絶も無効化も、権能の魂に支えられた働きにすぎない。 その魂はすでに斬られていた。 二度目の斬撃が、魔物の本体を捉える。 終わりを編むものの輪郭が大きく揺らぎ、星界を織り込んでいた身体が静かにほどけた。最後に残った環が床へ落ちる。砕けた音は、広間の隅々まで届き、止まっていた世界を再び動かした。 鶏馬茂は剣を納めた。 「診察終了。処方は、これ以上ここに留まらないことだ」 第四章 報酬と、その先 魔物が消えた場所には、銀色の小さな輪が浮かんでいた。輪の表面には、まだ見ぬ星座のような模様が刻まれている。 《星環の帰路針》――一度だけ使用できる神話級の遺物。使用者が記録した地点へ、階層の障壁や通常の帰還制限を越えて帰還させる。ただし、塔の内部で使った場合に限り、塔そのものを消滅させたり、踏破したことにしたりはできない。 鶏馬茂はそれを受け取った。遠くには、次の階へ続く道がかすかに見えた。塔はここで終わったのではない。終わりを編むものを倒しても、進行を望む者がいる限り、さらに上へ続く。 彼は道を見たあと、手の中の遺物を確かめた。 そして今回は、先へ進まなかった。 塔の制覇が成ったわけではない。最上部へ到達したわけでもない。ただ、この日の診療と戦闘を終え、帰ることを選んだのだった。 特別報酬 - 《星環の帰路針》:神話級の一回限りの帰還遺物。記録した地点へ、通常の転移制限を越えて使用者を送り届ける。塔の踏破・消滅は不可能。 - 金貨 273万6100枚:到達階層に応じた換金報奨。遺物とは別に授与。 最高到達階層: 27361階※勝利 地上からの距離: 約1094.44㎞※参考:高度約100㎞のカーマン・ラインを越え、国際宇宙ステーションの軌道高度約400㎞を上回る 特別報酬: 《星環の帰路針》、金貨273万6100枚 参加者の感想:「敵の魂を斬るのは治療とは呼びにくい。だが、手遅れになる前に処置できた。塔はまだ上へ続く。次に来るときは、もっと丈夫な診療鞄を持ってくる。」