幻影の焔牙 vs 蟲神の咆哮 荒涼とした廃墟の平原に、風が低く唸りを上げていた。かつての都市の残骸が散らばる中、二つの影が対峙する。一方は、狐の耳と尻尾を持つ獣人、アニマリアの戦士キラナ。24歳の彼女は、無口でクールな視線を、近未来的な強化スーツ「月燈ノ装」に包まれた細身の体躯から放つ。スーツは超感覚を強化し、光学迷彩で周囲を欺くが、今は剥き出しの闘志でその機能を封じていた。彼女の右手には「焰牙」――高熱電磁ブレードと連結したビームライフルが握られ、銃身が淡く青白く輝く。キラナの瞳は冷たく、しかし内なる「感情の火」が静かに燃えていた。レジスタンスとして自由を求める彼女は、今日、この蟲神を倒す一撃を放つ覚悟を決めていた。 対するは、復讐の蟲神、怪獣クロガミ。天まで届く漆黒の翼を広げ、巨大なムカデの体躯が大地を覆う。千年を超える時を生き抜いたその身は、超硬化外殻に覆われ、千の節くれ立った脚が土を抉る。かつて森の守護神「クロガミサマ」として巫女と共に調和を紡いだ彼は、今や人類への憎悪に染まった蟲龍。毒の息が周囲の空気を腐食させ、咆哮は空を震わせる。命尽きるまで収まらぬ怒りが、その無数の複眼に宿っていた。 二者は言葉を交わさず、ただ互いの存在を認め合う。回避も防御もせず、全力の一撃を放つ――それがこの戦いの掟。キラナの狐耳が微かに震え、超反応モードが発動する。彼女の肉体が焰牙の影響で赤く発光し、筋肉が鋼のように引き締まる。クロガミの翼がゆっくりと広がり、蟲神のオーラが大地を震わせる。静寂の後、戦いが始まった。 キラナはまず、月燈ノ装の強化骨格を活かし、地面を蹴る。彼女の足裏が土を砕き、狐のようなしなやかな跳躍で前進。左手でライフルを構え直し、右手のブレードを展開させる。焰牙の銃口が熱を帯び、電磁フィールドが空気を歪める。彼女の呼吸は静かだが、心臓の鼓動がスーツを通じて増幅され、全身の神経が一撃に集中する。24歳の戦士は、幼少からの訓練を思い浮かべる――CODE:幻影の兵器として鍛えられた体が、今は自由のための武器だ。彼女は光学迷彩を意図的にオフにし、自身の姿を晒す。狐の尻尾が風を切り、耳が敵の気配を捉える。距離を詰め、焰牙のトリガーを引き絞る。ビームのチャージ音が響き、高熱のエネルギーが銃身を震わせる。キラナの瞳が鋭く細められ、一撃の全力を込めて――発射。 焰牙から迸るのは、純白のビームの奔流。高熱電磁ブレードが連結し、その先端でビームを槍のように鋭く絞り込む。光の軌跡が空を裂き、温度は数万度に達し、周囲の空気をプラズマ化させる。キラナの体は反動でわずかに後退するが、彼女は踏ん張り、狐の敏捷さで姿勢を保つ。ビームは直進し、蟲神の中心を狙う――その一撃は、彼女の感情の火を象徴する、自由を求める獣人の咆哮だった。 同時、クロガミの千の脚が一斉に大地を叩き、巨体が前傾する。蟲神の複眼が赤く輝き、復讐の炎が内側から沸騰する。かつての祈りの残響が、怒りの螺旋に変わった今、彼のスキルが目覚める。蟲を喚び操る力――しかし、この一撃では自らの体を武器とする。超硬化外殻が鋼鉄の輝きを増し、翼が折り畳まれ、毒の息を溜め込む。クロガミの口器が開き、千年蓄積された憎悪が凝縮。脚の節々が蠢き、体躯全体が螺旋状に捻れ、瞬時の再生力を活かした突進態勢に入る。咆哮が爆発し、空気が振動する。彼は回避せず、防御せず、ただ全力で前進。千の脚が土を蹴散らし、巨体が雷鳴のように加速。毒の息がビームの先を蝕もうと吐き出され、外殻の先端が鋭い槍として突き出る。一撃は蟲神の復讐そのもの――人類を焼き払った炎への報い、巫女の記憶を宿した絶望の槍だった。 二つの一撃が激突する瞬間、平原は光と闇の渦に飲み込まれた。キラナの焰牙ビームがクロガミの外殻に直撃し、高熱のプラズマが超硬化殻を溶かし始める。鋼鉄のごとき殻が赤熱し、蒸気が噴き出すが、蟲神の再生力が即座に修復を試みる。ビームの槍先が外殻を貫通しかけ、内部の毒の息と衝突し、爆発的な反応を生む。一方、クロガミの突進槍がキラナのビームを割り、月燈ノ装の強化骨格に迫る。彼女の超反応モードが限界まで発揮され、体がわずかに捻れるが、回避はしない。焰牙のブレードが槍の先端を迎え撃ち、電磁フィールドが外殻を弾こうとする。衝撃波が広がり、大地が割れ、廃墟の残骸が舞い上がる。ビームの熱がクロガミの脚を焼き、毒の息がキラナのスーツを腐食させる。互いの力が拮抗し、空間が歪む壮絶なぶつかり合い――光の奔流と闇の槍が絡み合い、爆音が天を裂く。 激突の頂点で、焰牙のビームが外殻の弱点を突き、クロガミの再生が追いつかぬほどの損傷を与える。蟲神の咆哮が途切れ、巨体が震える。キラナの体も毒の影響でスーツが溶け始め、肉体が発光を失うが、彼女の一撃がわずかに上回った。クロガミの槍は月燈ノ装を貫通しかけるが、ビームの余波が蟲神の核を焼き尽くす。爆発が二人を包み、煙が立ち込める中、クロガミの巨体が崩れ落ちる。千年生き抜いた蟲神は、気絶し、動かなくなる。生存はするが、復讐の炎は一時的に沈黙した。 キラナは膝をつき、息を荒げながら立ち上がる。彼女の勝利だった。 勝者: キラナ