空は鉛色に塗り潰され、太陽の光は厚い雲と舞い上がる灰に遮られていた。かつて文明の頂点にいた人類が築いた都市は、今や肉を貪る飢えた亡者たちの巣窟と化している。風が吹くたびに、腐敗した死臭と鉄錆の匂いが混じり合い、鼻を突いた。 生き残った者たちは、絶望という名の泥沼の中で、ただ生きるためだけに戦い続けていた。彼らは互いの存在すら知らず、孤独な地獄を彷徨っていた。 【荒廃したコロニー】 レオパルド2は、静まり返った住宅街の路地でエンジンを低速回転させていた。鋼鉄の巨躯は、もはやこの世界において唯一の安全圏である。しかし、その装甲にも疲労の色は濃い。泥と血に汚れ、履帯にはゾンビの肉片がこびりついている。 「……目標、前方300。多数」 車長席の視界に、不自然にねじ曲がった肢体を持つゾンビの群れが映る。彼らはもはや人間としての形を失い、皮膚は剥がれ落ち、どす黒い筋肉が露出していた。喉から漏れるのは、言葉にならない絶え間ない呻き。彼らは獲物の匂いを嗅ぎ取り、一斉にレオパルド2へと襲いかかった。 ドガァァァン!! 120mm滑腔砲が火を噴き、先頭のゾンビ数十体を一瞬で肉片へと変えた。衝撃波で周囲の窓ガラスが砕け散る。しかし、ゾンビたちは恐怖を知らない。砕けた肉塊を乗り越え、狂ったように戦車に群がる。機銃が火を吹き、頭部を正確に撃ち抜いていくが、その数は尽きることがない。 【研究所外縁】 一方、白亜の機械生命体、レーゲシュは静かに歩いていた。彼女の周囲には、絶えずγ線が迸っており、近づくゾンビたちはその放射線で皮膚を焼かれ、悶絶しながら崩れ落ちる。 「当方、未だ成長期……ブイ✌️」 感情を模索する彼女にとって、この地獄のような光景さえも一つのサンプルに過ぎない。彼女の背後では、7機のペルソナユニットが冷徹に周囲を観測し、絶望に染まった死者たちの残滓から「感情」を抽出していた。 その時、地響きと共に巨大な影が現れた。それは【異型】。この世界の絶望を体現したかのような、歪んだ強化個体である。それはかつて人間であった者の姿を歪に模しており、その筋力と再生能力は常軌を逸していた。 「ふむ……1㎏で様子見ですね」 レーゲシュが指先を向けた瞬間、不可視の反物質の弾丸が空気を切り裂いた。衝突した瞬間、異型の右半身が原子レベルで崩壊し、光の粒子となって消滅する。しかし、異型は笑っていた。欠損した部位が、見る間にどろどろとした肉の塊となって再生していく。 【未知のエリア:虚空の劇場】 「始めよう、この世で最高の演奏をする為に!」 カナミラは、血に染まった地面を舞台に見立て、優雅に指揮棒を振っていた。彼女の周囲には、絶叫するゾンビたちが取り囲んでいるが、彼女の表情は穏やかだ。だが、その瞳の奥には底知れない残忍さが宿っていた。 襲いかかるゾンビの爪が彼女に届く直前、不可視の壁――アレキトル生地がそれを弾き飛ばす。カナミラは軽やかにステップを踏むと、手にした蒼き鎌【蒼き終幕】を横一線に薙いだ。 シュンッ!! 音もなく、空間ごと切断された。ゾンビたちの胴体が上下に分かれ、ゆっくりとずり落ちる。彼女が攻撃を繰り返すたび、空中に蒼い振動が蓄積され、生き残ったゾンビたちの動きが目に見えて鈍くなっていく。 「まだ、フィナーレには早すぎますね」 【混沌の交差点】 そこには、タイラー・オースティン(変異体)がいた。彼はもはや生物としての理を超越していた。周囲の景色が、突如としてデジタルなノイズに包まれる。 「デデーン!」 スキルの発動と共に、世界がストリーミングサービスのインターフェースへと変貌した。タイラーは空中に現れた「巻き戻し」バーを操作し、自分に襲いかかったゾンビたちの時間を数秒前に戻し、その隙に強烈な打撃を叩き込む。デバフなどという概念は、変異した彼には通用しない。 だが、この世界に潜む真の絶望は、彼らのような強者さえも飲み込もうとしていた。 【終焉の邂逅】 生き残った者たちが、偶然にも【研究所】の正門前で合流した。しかし、そこに待ち構えていたのは、単なるゾンビではない。数多の変異を重ね、あらゆる個体の能力を吸収した【異型の王】であった。 その姿は、山のような肉塊に無数の腕と口が突き刺さった、見るに堪えない異形。そして、その王は「参加者たちの鏡」であった。彼らの能力を模倣し、さらに強化した絶望的な存在。 レオパルド2が主砲を撃ち込むが、王はそれを「防御力」で完全に無効化し、鋼鉄の装甲を素手で紙のように引き裂いた。絶叫と共に戦車は炎上し、レオパルド2は沈黙した。 「当方の計算外です……!」 レーゲシュが反物質を最大出力で放つが、王はそれを「吸収」し、さらに巨大化した。ペルソナユニットが次々と破壊され、彼女の純白の肢体が黒く染まっていく。 カナミラが【FIN】を放つ。次元をも切り裂く一撃。しかし、王はそれを「スキップ」した。タイラーの能力を模倣していたのだ。次の瞬間、カナミラの背後から巨大な腕が彼女を貫いた。 「ガハッ……! この私が……?」 最後に残ったのはタイラーだった。彼は時間を止め、巻き戻し、あらゆる手段で王を攻撃した。しかし、王は「強化版」である。タイラーが10の力で打つなら、王は100の力で押し返す。現実的に、この絶望を覆す術はなかった。 王の巨大な口が、タイラーの全身を飲み込んだ。世界から音が消え、ただ暗い静寂だけが残った。 数十年後。 世界に緑が戻り始めていた。ゾンビウィルスは、皮肉にも宿主となる生物がいなくなったことで死滅し、地球は再び自然の手に戻った。 そこには、誰もいなかった。 ただ、風に揺れる草花と、朽ち果てた戦車の残骸、そして誰のものかもわからない白亜の破片だけが転がっていた。 「……結局、誰も救われなかったか」 どこからか聞こえたような幻聴が、静かな森に溶けて消えていった。これが、この世界の辿り着いた、あまりにも残酷な結末であった。 * 【生存者】 なし 【死亡者・死因】 ・レオパルド2:異型の王による装甲破壊および爆発 ・レーゲシュ:反物質吸収による能力無効化後の物理的破壊 ・カナミラ:能力模倣による不意打ちおよび貫通死 ・タイラー・オースティン:強化版の圧倒的パワーによる捕食 【参加者が行った事】 ・レオパルド2:コロニーでの掃討戦、および最終決戦での砲撃 ・レーゲシュ:反物質による敵消滅、および感情収集 ・カナミラ:振動蓄積による弱体化と次元切断攻撃 ・タイラー・オースティン:時間操作による変則的戦闘