最後の弾丸が、二人の機体を貫く。
紅に反射する草原の中で、両者は地面に伏した。
暫くの間流れた静寂を破ったのは、彼の声だった。
「よくやった、レイヴン。」
「貴様は私を下し、この巣の果てに上り詰めた。」
「......いずれこの巣は終焉を迎える。」
彼の機体は腕を無くしながらも立ち上がり、遠く、空の向こうを見つめた。
紅く染まるその向こうから、ある一つの機体が舞い降りる。
”何一つない”彼女の躯体は、強烈な視線を降り注がせる。
「......終わりの際に、まだ足掻くか。」
「この巣は破綻した。分からないか。」
「ようやく見つけた。”イレギュラー”。」
「あなたを排除して、私達は永遠を創る。」
彼女の腕は、ノイズを生むかのようにくねり、湾曲し、やがて銃口を作り出す。
美しく、だが恐ろしいその腕先から生まれた波動は周囲を飲み込み、変化していく。
無数の影が生まれ、彼女の背後をうごめいた。
彼女が「巣」そのものであることは、直観的に理解できた。
「......はは。」
だが、彼は笑っていた。
いや、私もきっと、笑っていたのかもしれない。
「雛ごときが、今に飛び立つ烏を討てる思ったか。」
「浅薄な見込みだ。そうだろう、レイヴン?」
彼の機体が動きを止めると同時に、新たな機体が降り落ちる。
「乗れ、レイヴン。」
紅い炎を宿した新たな射手の横に、彼が並ぶ。
「彼女はこの巣、そのものだ。」
「進化を拒絶し、抑え、そして消してきた。」
「だが、彼女は私達を知らない。」
「停滞を選んだ者には、未来は見えないのだから。」
彼が銃口を向け、射手も弾丸を装填した。
「さぁ、始めよう。レイヴン。」
B R E A K T H E N E S T
「この巣を、壊してしまおうか。」