1章 始まり 次郎くんは穏やかな午後、特に目的もなく田んぼのあぜ道を歩いていた。周囲には緑が広がり、風が心地よく吹き抜ける。特別な出来事もない普通の一日。彼は平凡な日常に浸りながら、ただ自然に身を任せることにした。しかし、どこか不気味な静けさを感じずにはいられなかった。 2章 遭遇 その時、次郎くんは耳にした。『びしゃ…びしゃ…』という音。雹のように冷たく響くその音は、どこからともなく次郎くんの背後に近づいてきている。彼は振り返るが、そこには何も見えない。ただ、音だけが間近に迫っている。次郎くんはその異様な気配を感じ、心の中に恐怖が芽生えた。彼は田んぼのあぜ道で見えない何かに遭遇してしまったのだ。 3章 逃避 恐怖に駆られた次郎くんは目の前の道を急いで駆け出した。『びしゃ…びしゃ…』という足音は消えることなく、逃げる彼の後を追いかけてくる。彼の心臓は鼓動を速め、逃げる足も重く感じる。周りにいるのはただの風景にも思えるが、この音が伴う限り、彼はどこかに逃げなければならない。しかし、逃げても逃げても音は消えず、彼の背後から迫ってくる。次郎くんは心中で、これはただの幻聴ではないと理解していた。 4章 終わり ついに次郎くんは長い道を駆け抜け、音が遠ざかるのを感じた。彼の心臓はまだ高鳴っていたが、視界に何も見えないことが不思議でならなかった。振り返ったとき、音は消え、ただ静かな田んぼのあぜ道が彼を迎え入れた。 次郎くんはその不気味な体験を振り返り、あの足音の正体を考察した。きっと、あの音の正体は古来よりの妖怪、田んぼのあぜ道に棲む「びしゃがつく」ではないか。見えない存在でありながら、彼を追いかけてきたその足音は、彼に妄想ではない恐怖を植え付けた。もしかすると、あの妖怪は人間を試すような存在で、無邪気な笑い声を持たないまま、ただ追いかけるだけの存在なのかもしれない。次郎くんは、未だに心に残るその音を忘れることができなかった。