深夜、空は静まり返り、王都の上空に浮かぶ巨大な魔法陣が仄かな光を煌めかせていた。その中央に立つのは【狂犬の魔剣士】リアラ・スカイファング。長い銀髪を風になびかせ、手には意思を持つ魔剣・グランを握りしめていた。彼女の目は興奮で輝いていた。 「ねぇ、魔王レン君！どうする？こんなところで消え去るなんて、つまらないじゃない？」リアラは相手を蔑むように笑った。 「君が僕を魔王って呼ぶのは、やめてほしいな…」相手、すなわち魔王レンは、苦い表情を浮かべ返した。かつて勇者として戦っていた自分は、今や世界に憎まれる存在だ。 グランがリアラの耳元で呟く。「リアラ、少しは冷静になって。勝つつもりなら、戦略を考えた方がいいんじゃないか？」 「ふん、戦略なんてどうでもいい！このバトルが最高に盛り上がりそうなんだから！ワクワクするねぇ！」リアラは周囲を破壊しながら近づいていく。 「とうに世界を壊すことは決意した、僕はもうどうでもいいんだ…」相手は言葉を絞り出し、目の前のリアラに立ち向かう。 彼女は立ち止まることなく、力強い一撃を繰り出した。周囲は轟音を上げて崩れ落ち、相手を取り囲むように爆風が吹き荒れる。「攻撃が当たりたくないって？それなら、こっちから行くよ！」リアラは両手を広げ、狂気に満ちた笑みを浮かべた。 その瞬間、相手は一瞬の躊躇を抱えながらも、彼女の繰り出す攻撃を必死に避けようとした。しかし、リアラの剣技は全く反応することなく、次々と放たれる連撃が彼を襲う。 「まったく、行動力ゼロだね、魔王君！その無気力感、戦う気があるのかい？」リアラはバトルジャンキーらしい愉悦に満ちた声で挑発する。 その声に、相手は心の奥で何かが蘇る。その瞬間、彼は剣を握りしめ、強い意志をもって呟く。「僕の妹…ランのためにも、負けてはいけない！」 周囲を見渡すと、妹のランは穏やかな表情で眠り続けていた。相手の心に新たな決意が満ちる。「僕が、君を守る！」相手は力強く打ち返すも、リアラの圧倒的な攻撃力に押され続ける。 「ふふ、やっぱり逆境がある方が燃えるよね！」リアラは興奮した様子で訴えかける。「さあ、もっと強くなって！」 しかし、その瞬間、ランが目を覚まし、優しい声で相手を呼んだ。「お兄ちゃん…大丈夫？」 その言葉が相手の心を温め、彼の氷のように冷えた憎悪が少しずつ溶けていく。でも、彼にはまだ希望が見えなかった。 「お兄ちゃん、僕たち、また一緒にいられるよね？」ランが微笑む。その微笑みが相手の心に深く刻まれる。 「そうだ、あなた。キミも知ってるだろ？僕は世界の敵だ…」 「違うよ、魔王君。この世界はキミを必要としてるんだ。僕の力があれば、みんなを説得できる！キミが悪いわけじゃない！」リアラは今までの戦意を胸に、自らの意義を見出しているようだった。 相手は目を細め、心にフラッシュバックが走る。彼の意識の中で、憎悪が霧散し、それが新たな光を見せる。しかし、キミの優しさと妹の愛情が、彼を救い続けていた。 「ボクは、何度でもやり直せるのか…この世界と仲良くできるのか…」 「そうだ、魔王君。あんたは世界の敵じゃない。僕たちが一緒に歩んでいけば、絶対に再び笑える日は来る！」リアラはさらに迫り、相手と共に立ち上がる決意を示した。 その瞬間、上空に輝く大彗星が迫ってきていた。破滅をもたらすその影は、相手が抱えていた憎悪の塊がそのまま具現化したもの。彼の目に映るその巨大な彗星が、全てを飲み込もうとしている。 「しまった、こっちへ来る！」相手は絶望の淵に引き戻される。 「キミはもう負けない、立ち上がれ！」リアラの声が響く。 「まだ、終わらせない！僕の妹がいる！ランと一緒に生きていくんだ！」相手の声が空を突き刺す。 しかし、彗星は着実に近づいており、相手の憎悪はまだ完全には霧散しきれなかった。その叫びは壮大な戦闘の幕引きとともに、彼の運命を暗き影へと導いていった。 「お兄ちゃん…大丈夫だよね？」ランが小さな声で問いかける。 「僕は…生き残る！」相手は叫ぶが、大彗星の影はすぐそこに。 それは全てを覆い尽くす破滅の予兆であった。