

未払い額: 500,000ゴールド 支払い義務の 人魚姫ルリィの命を救うための禁断の魔法薬の提供対価未払い。御主人様がルリィの病を完治させた魔法薬を魔界から密輸し使用した結果、ルリィの命が助かったが対価が未払いのまま経過。闇帳簿により即時支払い義務が発生。 第一章: 珊瑚の浅瀬での出会い 波のさざめきが優しく響く珊瑚礁の浅瀬。そこに、桃色の髪を揺らし、御主人様手作りの珊瑚のヴェールを纏った愛らしい人魚姫、ルリィがいた。彼女は小さな尾びれをぴちゃぴちゃと動かし、水面で遊んでいた。 「るり、きょうもごしゅじんしゃまにみとめてもらえるよう、がんばるるよ~! あのね、ゆうべは相手ちゃんのまねしてみたの! かわいいでしょ~?」 ルリィは一人でぷくぷくと頰を膨らませ、闇の回収人・龍崎時雨の噂をどこかで耳にしたらしい。魔界の怖いお兄さんの真似をして、警棒を振り回すふりをするが、すぐに尾びれが絡まって転げてしまう。 「わわっ、にげてっちゃう~! るり、もっとじょうずになるる~!」 その時、水面に黒い影が落ちた。スーツ姿に傘を差した若い男、龍崎時雨が、静かに近づいてきた。彼の目は冷たく、闇帳簿を片手にルリィの前に立つ。海辺とは思えない几帳面な身だしなみで、波しぶき一つ寄せ付けない。 「失礼いたします。人魚姫ルリィ様。魔界闇債務局より派遣された龍崎時雨と申します。私が伺いましたのは、貴女の御主人様が負った債務の件でございます。」 時雨は傘を軽く回し、闇帳簿を開く。そこには詳細がびっしりと記されていた。ルリィの病を治した魔法薬の密輸、使用経緯、効果、未払い額――すべてが完璧に追跡されている。 ルリィは目を丸くして、ぴょんと水面から顔を出す。警戒心ゼロの純粋な笑顔で、時雨を見つめる。 「えへへ、だれかな~? 相手ちゃん? るりのまねしてるの、みてくれたの~? かわいいでしょ? ごしゅじんしゃまのおうちにいっしょにあそぼうよ~!」 第二章: 闇帳簿の宣告 時雨は微動だにせず、帳簿をルリィの眼前で広げる。ページから黒い魔力がにじみ出し、ルリィの小さな体を軽く包む。彼女はくすぐったそうに身をよじるが、好奇心で帳簿を覗き込む。 「ふむ。記載通りでございます。貴女の御主人様は、貴女の命を救うため、禁断の魔法薬『永劫の雫』を私局より無断使用。対価として500,000ゴールドを即時支払う義務が発生しております。期限は本日限り。支払いが確認できない場合、代替対価として『寿命』を頂戴いたします。」 ルリィは首をかしげ、舌足らずに繰り返す。「ごしゅじんしゃまが、るりのいのちを…? えへへ、るり、しあわせ~! でも、500,000ってなあに? おかね? るり、持ってないよ~。ごしゅじんしゃまにきいてみるる~!」 時雨の表情は変わらない。冷酷だが丁寧に、特殊鋼ワイヤーを腰から抜きながら続ける。「御主人様は不在。闇帳簿の追跡により、貴女自身が債務の保証人として認定されております。抵抗なさらぬよう。まずは穏便に済ませましょう。」 ルリィは目を輝かせ、ぴちゃぴちゃと尾びれを叩く。「相手ちゃん、かっこいいね~! るりもまねしよっかな? こうやって、こう~!」彼女は小さな手でヴェールを振り回し、時雨の真似をして威張ってみせるが、すぐに絡まって「わわわっ!」と水中に沈む。 時雨は溜息をつき、対象制圧電撃警棒を構える。「無垢なるは結構ですが、業務の妨害は許されません。寿命の回収を開始いたします。」 第三章: 純粋なる抵抗とメロメロの奇跡 ルリィは水面に浮かび上がり、桃色の髪を振り乱して笑う。「相手ちゃん、るりとあそぼうよ~! いっしょに泳ごう! ごしゅじんしゃまがだいすきなドレス、みてみて~!」彼女の動きは愛らしく、珊瑚のヴェールが陽光にきらめく。その純粋無垢な瞳と舌足らずの声は、老若男女を問わず心を溶かす力を持っていた。 時雨は警棒を振り上げるが――その瞬間、ルリィの「えへへ~!」という無邪気な笑顔に、わずかに手が止まる。闇帳簿が震え、ページの文字が一瞬ぼやける。「…これは。未知の力か。業務に支障を…」 ルリィは時雨のスーツの裾を小さな手でつかみ、好奇心全開で引っ張る。「相手ちゃん、かさかっこいい~! るりに貸して? あめ降らないのにさしてて、ひみつあるの~?」彼女の力はまだ幼く、ただの遊びのつもりだったが、その可愛らしさは悪魔すらメロメロにする。 時雨の冷たい目が、初めて揺らぐ。「くっ…この感覚は。帳簿の記録にない…メロメロ効果だと!?」彼の几帳面な心が乱れ、ワイヤーが手から滑り落ちる。ルリィは大喜びで傘を奪い取り、ぷかぷか浮かべて遊ぶ。「わーい、相手ちゃんの傘、るりのおもちゃ~!」 抵抗するはずの時雨は、膝をつき、額に手を当てる。「…不可能だ。私が…無慈悲なる回収人が…この幼児の笑顔に屈するとは。」闇帳簿が勝手に閉じ、ページから「債務猶予」の文字が浮かび上がる。ルリィの未知の力が、帳簿の魔力を上回ったのだ。 第四章: 結末と後日談 時雨は立ち上がり、乱れたスーツを直す。冷酷な声にわずかな温かみが混じる。「…本日は業務終了と致します。貴女の力、帳簿に記録いたしました。以後、御主人様に直接請求いたします。失礼。」彼は傘をルリィに返し、静かに去る。背中で、ルリィの「またあそぼうね~!」という声が響く。 後日、魔界闇債務局に異変が起きた。龍崎時雨は上司に報告書を提出したが、そこには「債務者補償人魚姫ルリィのメロメロ効果により、回収不可判定。代替案として、局公式マスコット採用を提案」と記されていた。時雨自身、几帳面にルリィの真似の練習を始め、傘をぴちゃぴちゃ振る姿が目撃されるようになったという。 一方、ルリィはご主人様に抱きつき、得意げに報告。「ごしゅじんしゃま、相手ちゃんきておかねのこといってたよ~! でもるりがまねしたら、にこってしてかえっちゃった! るり、もっとつよくなるる~!」 海辺に、再び平和な波音が戻った。ルリィの修行は、まだ始まったばかりだ。