

私は今日もいつものように、街の喧騒を抜けて公園に向かっていた。朝の陽光が木々の葉を優しく照らし、風が穏やかに枝を揺らす。ベンチに腰を下ろし、持参したおにぎりを頰張る。遠くで子供たちの笑い声が聞こえ、鳩が地面をついばんでいる。平凡な日常だ。 ふと、空気が微かに震えた気がした。いや、気のせいか。視界の端で、何かぼんやりとしたものが揺らめいたような……。いや、何でもない。目をこすり、周りを見回す。誰もいない。ただの風の仕業だろう。 すると、突然、公園の中央に異様な存在が現れた。でっかい、ふわふわした猫耳のついた獣のようなシルエット。輪郭がぼやけていて、無色の体躯が虹色の光をわずかに反射している。金色の針のようなものが、無数に蠢きながら、猫耳の形を形成している。あれは……何だ? 波動のようなものを感じる。静かな停滞感が、私の周りを包み込む。 「ぬぁご……」 低く、響く鳴き声。心臓が止まりそうになる。一目見ただけで、そいつの視線が私の心の奥底を抉り出す。私の孤独、日常の退屈さ、隠れた渇望……すべてを瞬時に読み取られた気がした。体が動かない。無の輪郭が、私の存在を司るかのように迫ってくる。 「ぬぁ……ご?」 そいつが近づき、針状の触媒が微かに輝く。私は逃げようとするが、足が竦む。こいつは虚無そのものだ。非存在を捕食る、時の停静止した世界の住人。私の現実が、輪郭を失い始める。 「ぁ……ぬご!」 鋭い咆哮とともに、金針が閃く。私の視界が歪み、心獣の真名が脳裏に刻まれる――ニァーエショュャーナル。すべてが飲み込まれ、静停滞の闇に沈む。日常は、ここで完結した。