オッス!、オラ山田風太郎! この度、俺はとある少女に恋をした。 いわゆる片想いというやつだ。 まさか俺自身も信じられないが、非モテのフウタローと昔から瑞稀にバカにされ続けていた俺にも、ようやく春というものが訪れたのだよ明智くん。 「なるほど、それは素晴らしい事ですね……」 ___誰だお前っ!? 「明智です。」 ___勝手に俺の脳内に現れるんじゃねぇ…! 「冷たいですね、私にも……そして幼馴染にも」 ___なんでそこで瑞稀が出てくるんだよ? 「全く、あなたは罪深い男だ、やれやれ」 明智はそう言い残して消えていく。 ___って、そんな事はどうでもよくて!、重要なのは彼女にまた出会うことだ! ____そして、 夕暮れ、次々に子供達が帰宅し始める時間帯。 しかし、俺は家に帰らない。 前に出会ったバイト帰りの道を歩く、しかし彼女は現れない。 まるで蜃気楼であったかのように、あの少女の姿形を見つける事はできなかったのだ。 「ん〜、やっぱココにはいないか………」 すると、不意に背後からの声____。 「やはり、ここには居ないのですね……」 少女の声、どこかで聞き覚えがある。 ___んっ……? 俺は静かに後ろを振り向いた、そこにはあの少女が立っており、あちらも今こちらの視線に気付いたらしく、その表情は驚きを隠せていなかった。 「………よ、よお…!」 とりあえず、挨拶は基本だよな? 「…………貴方は…っ!?」 少女が身構えた。 「あ、でさ……今誰か探してた?、もしかして俺…?」 この空気を和ませてみる。 ___なんちゃって……、って待てよッ!? 少女が鬼の形相で迫り来る。しかし、その表情はどこか愛らしさが残されていた。 来るぞ、間違いなくあの衝撃が来ると直感できたのだ。俺は股を閉じながら、こう叫ぶ。 「じ、ジョーク!、ただのジョークだから!」 両手を前に突き出し、少女を制止しようとするが無駄足に終わった。 「誰が貴方なんかをッ!!」 「ごめんなさい…ッッ!!」 ___メキリ…! 「ア…………………ッ!!?」 ___享年21歳、今年の冬のことでした。 って!、俺死んでないからなッ!? ____時は過ぎて、 「付いて来ないでくださいっ!!」 夕日が沈んだ時間帯、俺は少女の跡を追う。 「いやさ、女の子一人ってのは危険だろ?」 「そんな事を言ってる貴方の方がよっぽど危険人物ですよっ!」 今は夜の8時半を過ぎたあたり、プリプリと怒った少女の後ろを付きまとう俺の姿、たしかに俺の方が一番ヤバい奴だな!? しかし、ここで諦めてなるものか! 「なぁ、何を探しているかぐらい教えてくれよ!、それぐらい良いだろ?」 「イヤです、また蹴り上げますよ?」 「ひえっ……!」 俺の肉体は正直である、少女の言葉が脅しではない事を悟っていた。 ____しかし、 「で、でもさ!、ほら俺も俺で君を探してたんだ、だから俺に何か手伝える事があれば___」 ___メキョ…! 「ぐっ……!?」 「警告はしました、もう一度だけ言います。私に付きまとわないで下さい。」 ____しかし、 「わ、悪いが……俺はNOと言える日本人なんでね」 もう股間どころか胃腸まで痛みが走る。だがしかし、ここで引き下がる俺ではないのだ。 「はぁ………、そうですか」 少女の溜息、足先に力が込められる。 ___メキッ!、バキッ!、ドカッ!、メキャ…ッ! 躊躇のない、何度も無慈悲に股間を蹴り上げられては絶叫を挙げる俺の姿。股間からの痛みが激痛から、死ぬ程の激痛へと昇格した時点で俺の痛覚は内臓まで響いていた。 「ま、待っ……オウッ!」 待って!、待ってください!?、お願い待って! 「どうですか!、これで懲りたでしょ!」 俺は、痛みに腰を折った。 情けない、本当に情けない姿で少女の足元に倒れ込む。 ____だが、、、 「ま、まだまだ……!、余裕だぜ!」 少女は呆れたように驚いた。 「貴方という人は…っ!」 今後は何度も倒れようが俺の股間を幾度となく執拗に蹴り上げていく。一体、その細い体のどこにそんな力が隠されているのだと言うんだ。そんな全体重の込められた重い一撃が何度も俺を蹴り潰す。 「これでッ!」 ___ゲシッ! 「懲りましたよね!」 ___グチッ! 痛みに泣いた、だけど未だに立ち上がる俺の姿がそこにはあったのだ。 「ま、まだ……まだ元気だって…の、はは……」 驚いた___、 「まだ立ち上がれるのですか!?」 そして、少女は無意識のうちに恐怖した。 震えた四肢で立ち上がる俺の姿、痛みが全身を支配する。しかし、俺はそんな四肢を震わせながらも立ち上がる、死ぬほど激痛に抗いながら立ち上がってみせたのだ。 「た、頼む……はな…話だけでも聞かせてくれよ、お前を助けたいんだ…」 少女は黙り込み、少し考えた様子で溜息をついた。 「はぁ………」 その後、少女から話を聞く事ができた。 「えっ、猫……?」 返ってきた回答は思いの外に規模が小さかった、だって猫探しなんだぜ? 「そうですが、それが何か…?」 少女が少し不満げに問い詰めた。 「いや、てっきりもっと重要な案件かと身構えてたんでな」 「なんですか!、猫なんてどうでもいいって言うんですか!、せっかく話して損しました!」 プリプリと膨らませた頬、少女が顔を背けてしまった。 「いやいや、ごめんごめん、俺も探すの手伝うからさ!」 不機嫌に俺から顔を背けた少女の横顔は怒っていながらも儚さがあった。 そして聞いてくれ皆んな!、これでようやく話が進展したぞ! 「でっ、その猫の特徴とかあるのか…?」 「それはそれは綺麗で凛々しい毛並みを持った黒猫です、すごく人懐っこくて私以外の人にもフレンドリーなので知らない人に付いて行ってないか心配してしまうぐらいです……」 少女の心配したような表情、可愛い。 おっ、その表情も可愛い……って、違う違う!、今は親交を深めるチャンス!、頑張るぞ! と、いうか……黒猫…?、どっかで見覚えがある気が…… 「ん〜、どっかで……」 「えっ、まさか知ってるのですかっ!?」 少女の顔が近くまで迫る、美しすぎる……まるで、かの有名な石像サモトラケのニケのような美しい顔ではないかね?、明智くん 「いや、ニケは首から上が無いので、ここはミロのヴィーナスと表現した方が適切かと……」 ___黙らっしゃい!、そして勝手に俺の脳内に現れるんじゃない! 「悲しきかな人生、そして愚かなフウタローに幸あれ」 ___一言余計だ! 「あ、あの…?、大丈夫ですか……?」 「んっ、おーすまん!、何でもない」 「そうですか…??、ところで猫の居場所を知っているのですか…っ!」 「それについても悪い、なんか見覚えがある気がするんだが、どこで見たのかが思い出せん」 「そう……ですか、残念です。」 「まっ、俺ら二人で探してみようぜ、そしたら俺もどこで見たか思い出すかもしれないしさ」 「はい…!、ではよろしくお願いします!」 いざ猫探しの始まりだ! ____こほん! 詰まる所、猫とは気ままな生き物だ、それに掴みどころがない。 「ここか!」 「そこかッ!」 「あそこか…!!」 しかし、この名探偵フウタローの目は誤魔化せないぞ! そう__、すなわち…! 体は大人、頭脳は子供、その名も名探偵___ッ!! 「さっきから何をなさってるんですか」 背後から少女の冷たい視線を感じる。 「いやー、猫の気持ちになったら見つかるかなと…」 俺は頭を掻きながら言い訳を口にした。 「そうですか……、しかし今日はもう遅くなってしまいましたね」 「あぁ、たしかにな」 スマホを取り出し時間を確認すると真夜中11時を過ぎた頃、さすがにこれ以上の捜索は無理だろうな、と…さすがの俺でも同意せざるを得なかった。 「やはり、もう見つける事は不可能なのでしょうか……」 少女は俯き気味にそう呟いた、しかし俺は___ 「大丈夫だ、きっとまた会えるさ。それに明日は幼馴染の瑞稀にも聞いてみるからさ……」 その瞬間、脳裏を駆け巡る衝撃…ッ!? 待てよ!、たしか今日の大学の授業中に瑞稀がスマホで最近拾ったばかりの黒猫の写真を見せてくれた、それも綺麗で凛々しい毛並みを持った黒猫を……ッ!! 「み、見つけた……」 俺はあまりの衝撃に空いた口が塞がらなかった。 「本当ですか!、何処にですかッ!?」 少女が必死に問いかけてくる。 「あぁ、すまん……見つけたってのは思い出したって意味で、たしか俺の幼馴染が先日保護したって話してた黒猫がいたんだよ、もしかしたら探してる猫かな〜って」 少女は、どっと疲れが溢れ出したかのように安心で胸を撫で下ろした。 「そうでしたか……、貴方には感謝しなければなりませんね」 暗がりを帯びていた少女の表情は途端に明るさを発揮した、そして俺に頭を下げると感謝の意を示していた。 「本当に、ありがとうございます!」 俺は一旦落ち着かせようと少女をどうにか宥めてみせた。 「いやいや、まだ探してる猫かどうかも確証がない段階だし……とりあえず、明日聞いてくるからさ」 「はい、ありがとうございます…!、ですが___」 少女は言葉を中断する、そして不思議そうな表情を見せるとこう呟いた。 「なぜ……私にここまで良くしてくれるのですか、私は貴方を言葉で傷つけ、そして貴方の体を傷つけた……それなのに何故、貴方は私を助けようとしたのですか…?」 「それは……」 少女の言葉に俺は声が詰まる、しかし此処で言わねば次は無いだろう。 だから___、 「一目惚れです!、初めて見かけた時から恋に恋がれるぐらい好きでした!」 意を決して告白した、引かれたかもしない……嫌われたかもしない………失望させたかもしれない…………期待には応えられなかったかもしれない。 だけど、俺は後悔のないように叫んだのだ。 ___沈黙が、その場を染める……。 俺は怖くなって顔を上げてみる、呆気に取られた少女の表情が見えた。 しかし___、 その目は俺を見ていなかった……。 後ろ?、俺の後ろに何かあるのか……?? 「フウ……タロー………???」 「うおっ!、瑞稀ッ!?、居たのかよ!」 突然の背後からの声に俺は驚いたが、よく見てみると瑞稀であった。 「お邪魔……だったかな?」 ヤベ……、さっきの告白見られてたか?、く〜恥ずかしい!、絶対に揶揄われるだろうな〜 そうだ!、話題を変えてみよう!、ちょうど瑞稀に聞きたい事もあったしな…! 「いや、ちょうど良かった瑞稀に頼み事があったんだよ!」 「へぇ…?、私に……???」 なんか瑞稀の表情がおかしいぞ、やっぱ内心では笑われてるのかな?、やっぱ真夜中に大声で告白は恥ずかしかったかもな…… ……って、そんな事より…!? 「それでさ瑞稀、頼み事ってのは___」 「ごめんね、フウタロー……」 「へっ___??」 地面が爆ぜたのを見た、なに……?、ガス爆発…?、やけにゆっくりとした視界の端に瑞稀の伸びた脚を見た。 徐々に迫ってくる、あれ……?、これ俺死んだんじゃ…… ___ズバァン……ッッ!!! 「ゲホッ!、煙たい!、ゲホッ!、ゴホッ!」 地震に酷似した衝撃と同時に砂埃が舞い散るが、俺は無事であった。 そして、砂埃に咽せながらも俺は閉じていた目を開ける。 瑞稀は確かに俺を狙って蹴りを放っていた___、 しかし、それを受け止めた人物がいた___。 どこか儚さを帯びた美少女、彼女が俺と瑞稀の間を分つように立ち塞がっていたのだ。 https://ai-battler.com/character/aa8bc461-2d75-4437-a2e8-98be28780695