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どこか儚げな美少女 Ver5

 オッス!、オラ山田風太郎!  この度、俺はとある少女に恋をした。  いわゆる片想い、というやつだ。  まさか俺自身も信じられないが、非モテのフウタローと瑞稀にバカにされ続けた俺にも春が来たのだよ明智くん  「なるほど、それは素晴らしい事ですね……」  ___誰だお前っ!?  「明智です。」  ___勝手に俺の脳内に現れるんじゃねぇ…!  「冷たいですね、私にも……そして幼馴染にも」  ___なんでそこで瑞稀が出てくるんだよ?  「全く、あなたは罪深い男だ、やれやれ」  明智はそう言い残すと消えていく。  ___って、そんな事はどうでもよくて!、重要なのは彼女にまた出会えるかだ!  夕暮れ、次々に子供達が帰宅し始める時間帯。  しかし、俺は家に帰らない。  前に出会ったバイト帰りの道を歩く、しかし彼女は現れない。  まるで蜃気楼であったかのように少女の姿形を見つける事はできなかった。  「ん〜、やっぱココにはいないか………」  「やはり、ここには居ないのですね……」  ___んっ……?  俺は静かに後ろを振り向いた、そこにはあの少女がおり、あちらも今こちらの視線に気付いたらしかった。  「………よ、よお…!」  「…………貴方は…っ!?」  「あ、でさ……今誰か探してた?、もしかして俺…?」  ___なんちゃって……、って待てよッ!?  少女が鬼の形相で迫り来る、しかし…その表情もどこか愛らしさが残されていた。  来る、間違いなくあの衝撃が来ると直感した。俺は股を閉じながら叫んだ。  「じ、ジョーク!、ただのジョークだから!」  「誰が貴方なんかをッ!!」  「ごめんなさい…ッッ!!」  ___メキリ…!  「ア…………………ッ!!?」  ___享年21歳、今年の冬のことでした。  って!、俺死んでないからなッ!?  「付いて来ないでくださいっ!!」  「いや、でも女の子一人は危険だし……」  「貴方が一番危険人物ですよっ!」  今は夜の8時半を過ぎたあたり、プリプリと怒った少女の後ろを付きまとう俺、たしかに俺が一番ヤバい奴だな!?  「なぁ、何を探しているかぐらい教えてくれよ!、それぐらい良いだろ?」  「イヤです、また蹴り上げますよ?」  「ひえっ……!」  肉体は正直である、少女の言葉が脅しではない事を悟った。  「で、でもさ!、ほら俺も俺で君を探してたんだ、だから俺に何か手伝える事があれば___」  ___メキョ…!  「ぐっ……!?」  「警告はしました、もう一度だけ言います。私に付きまとわないで下さい。」  「わ、悪いが……俺はNOと言える日本人なんでね」  もう股間どころか胃腸まで痛みが走る、しかしここで引き下がる俺ではない。  「はぁ………、そうですか」  ___メキッ!、バキッ!、ドカッ!、メキャ…ッ!  何度も股を蹴り上げられる、激痛から死ぬ程の激痛へと昇格した痛覚が俺を押しつぶす。  「ま、待っ……オウッ!」  待って!、待ってください!?、お願い待って!  「どうですか!、これで懲りたでしょ!」  俺は、痛みに腰を折った。  情けない、本当に情けない姿で少女の足元に倒れ込む。  「ま、まだまだ……!、余裕だぜ!」  「貴方という人は…っ!」  今後は何度も倒れ込んでいた俺の股が踏みつけられる、細い体のどこに隠されているかも分からない、そんな体重が込められた重い一撃が何度も俺を踏み潰す。  「これで!」  ___ゲシッ!  「懲りたですよね!」  ___グチッ!  「ま、まだ……まだ元気だって…の、はは……」  だから___、  「まだ立ち上がれるのですか!?」  震えた四肢で立ち上がる、痛みが全身を支配していた。しかし、俺は震えた四肢でありながらも立ち上がる、痛みに抗いながら立ち上がったのだ。  「た、頼む……はな…話だけでも聞かせてくれよ、お前を助けたいんだ…」  「……………!」  「えっ、猫……?」  「そうですが、それが何か…?」  「いや、てっきりもっと重要な案件かと身構えてたんだがな」  「なんですか!、猫なんてどうでもいいって言うんですか!、せっかく話して損しました!」  「いや、ごめんごめん、俺も探すの手伝うからさ!」  不機嫌に俺から顔を背けた少女の横顔は怒っていながらも儚さがあった。  そして聞いてくれ皆んな!、これでようやく話が進展したぞ!  「でっ、その猫の特徴とかあるのか…?」  「それはそれは綺麗で凛々しい毛並みを持った黒猫です、すごく人懐っこくて私以外の人にもフレンドリーなので知らない人に付いて行ってないかが心配です……」  おっ、その表情も可愛い……って、違う違う!、今は親交を深めるチャンス!、頑張るぞ!  と、いうか……黒猫…?、どっかで見覚えがある気が……  「ん〜、どっかで……」  「まさか知ってるのですかっ!?」  少女の顔が近くまで迫る、美しすぎる……まるで、かの有名な石像サモトラケのニケのような美しい顔ではないかね?、明智くん  「いや、ニケは首から上が無いので、ここはミロのヴィーナスと表現した方が適切かと……」  ___黙らっしゃい!、そして勝手に俺の脳内に現れるんじゃない!  「悲しきかな人生、そして愚かなフウタローに幸あれ」  ___一言余計だ!  「あ、あの…?、大丈夫ですか……?」  「んっ、おーすまん!、何でもない」  「そうですか…??、ところで猫の居場所を知っているのですか…っ!」  「それについても悪い、なんか見覚えがある気がするんだが、どこで見たのかが思い出せん」  「そう……ですか、残念です。」  「まっ、俺ら二人で探してみようぜ、そしたら俺もどこで見たか思い出すかもしれないしさ」  「はい…!、ではよろしくお願いします!」  猫とは気ままな生き物だ、それに掴みどころがない。  「ここか!」  「そこかッ!」  「あそこか…!!」  しかし、この名探偵フウタローの目は誤魔化せないぞ!  そう__、すなわち…!  体は大人、頭脳は子供、その名も名探偵___ッ!!  「さっきから何をなさってるんですか」  背後から少女の冷たい視線を感じる。  「いやー、猫の気持ちになったら見つかるかなと…」  俺は頭を掻きながら言い訳を口にする。  「そうですか……、しかし今日はもう遅くなってしまいましたね」  「あぁ、たしかにな」  スマホを取り出し時間を確認すると真夜中11時を過ぎた頃、さすがにこれ以上の捜索は無理だろうな、と…さすがの俺でも同意せざるを得なかった。  「やはり、もう見つける事は不可能なのでしょうか……」  少女は俯き気味にそう呟いた、しかし俺は___  「大丈夫だ、きっとまた会えるさ。それに明日、幼馴染の瑞稀にも聞いて……」  瞬間、脳裏を駆け巡る衝撃…ッ!?  今日、たしか大学で瑞稀が拾った猫の写真を見せてくれたのだ、それも綺麗で凛々しい毛並みを持った黒猫を……ッ!!  「見つけた……」  「本当ですか!、何処にですかッ!?」  「あっ、すまん……見つけたってのは思い出したって意味で、たしか俺の幼馴染が先日保護したって話してた黒猫がいたんだよ、もしかしたら探してる猫かな〜と」  「………ッ!?、そうですか……、貴方には感謝の言葉しかありません!」  暗がりを帯びていた少女の表情は途端に明るさを発すると、俺に頭を下げては感謝の意を示していた。  「いや、まだ探してる猫と同じかは確証もない段階だし……とりあえず、明日聞いてくるよ」  「はい、ありがとうございます…!、ですが___」  少女は言葉を中断する、そして不思議そうな表情を見せるとこう呟いた。  「なぜ……私にここまで良くしてくれるのですか、私は貴方を言葉で傷つけ、そして貴方の体を傷つけた……それなのに何故、貴方は私を助けようとしたのですか…?」  「それは……」  少女の言葉に俺は声が詰まる、しかし此処で言わねば次は無いだろう。  だから___、  「一目惚れです!、初めて見かけた時から恋に恋がれるぐらい好きでした!」  意を決して告白した、引かれたかもしない……嫌われたかもしない………失望させたかもしれない…………期待には応えられなかったかもしれない。  だけど、俺は後悔のないように叫んだのだ。  ___沈黙が、その場を染める……。  俺は怖くなって顔を上げてみる、呆気に取られた少女の表情が見えた。  しかし___、  その目は俺を見ていなかった……。  後ろ?、俺の後ろに何かあるのか……??  「フウ……タロー………???」  「うおっ!、瑞稀ッ!?、居たのかよ!」  突然の背後からの声に俺は驚いたが、よく見てみると瑞稀であった。  「お邪魔……だったかな?」  ヤベ……、さっきの告白見られてたか?、く〜恥ずかしい!、絶対に揶揄われるだろうな〜  そうだ!、話題を変えてみよう!、ちょうど瑞稀に聞きたい事もあったしな…!  「いや、ちょうど良かった瑞稀に頼みたい事があったんだ!」  「へぇ…?、私に……???」  なんか瑞稀の表情がおかしいぞ、やっぱ内心では笑われてるのかな?、やっぱ真夜中に大声で告白は恥ずかしかったかもな……  ……って、そんな事より…!?  「それで瑞稀さ、頼みってのは___」  「ごめんね、フウタロー……」  「へっ___??」  地面が爆ぜたのを見た、なに……?、ガス爆発…?、やけにゆっくりとした視界の端に瑞稀の伸びた脚を見た。  徐々に迫ってくる、あれ……?、これ俺死んだんじゃ……  ___ズバァン……ッッ!!!  「ゲホッ!、煙たい!、ゲホッ!、ゴホッ!」  地震に酷似した衝撃と同時に砂埃が舞い散るが、俺は無事である。  そして砂埃に咽せながらも俺は閉じていた目を開けた。  瑞稀は確かに俺を狙って蹴りを放っていた___、  しかし、それを受け止めた人物がいた___。  どこか儚さを帯びた美少女、彼女が俺と瑞稀の間を分つように立ち塞がっていたのだ。 https://ai-battler.com/character/aa8bc461-2d75-4437-a2e8-98be28780695