___私は、恐怖した………。 こんばんは、いい月明かりが照らす日ですね。 私の名前は愛…、伯内 愛(はかうち あい)と申します。 実は私、最近は面倒事に巻き込まれてばかりなのです。 と、言いますのも…… 先日、家出した猫を捜索中に変質者に絡まれ、即座に撃退したはいいものの、その際にどうしてか告白されてしまい私は困惑……いえ、恐怖しました。 正直、イカれています……。 そして今日、再び件の変質者と遭遇してしまい、幾度となく撃退を試みたにも関わらず付き纏われてしまい大変でした。 それに私を助けたい、何度も手伝いたいと叫んでいて本当に怖かったです…。 ですが、そんな彼に根負けしてしまったのが私の敗因なのでしょうね。 現在は、もう夜に深く染まった時間帯、そんな時間まで彼と一緒に捜索を続けましたが、とうとう飼い猫を見つける事は叶いませんでした……。 しかし、彼は確かにふざけた行動は多かったものの、そこに悪意などはなく、私と一緒になって真剣に飼い猫を探してくれた彼に対する評価を少しばかり改める必要がありそうですね。 ____そういえば、彼の名前をまだ聞いていませんでした……。 それに……、昨日の告白の件についても…… そんな矢先の事でした____。 彼が飼い猫の居場所について分かったらしいのです…!、私はとても嬉しくて仕方がありませんでした。 だから彼に、お礼を言ったのです。 「ありがとうございます…!」 ですが___、、、? 私は言葉を中断すると、彼の顔を不思議そうに覗き込み、こう呟いた。 「なぜ……私にここまで良くしてくれるのですか、私は貴方を言葉で傷つけ、そして貴方の体を傷つけた……それなのに何故、貴方は私を助けようとしたのですか…?」 正直なところ、私はあまり魅力的な肉付きでもなければ、とても性格が良いと胸を張って言える訳でもありません。 むしろ、他者を傷つけてばかりの……こんな私に彼は何故…、どうして…?、あの時の彼はそんな私の事を好きだと言ってくれたのだろうか……? それが知りたかった____、 そんな瞬間のことでした___、 ___私は、恐怖したのだ………。 その時、彼が何かの言葉を叫んでいた事までは分かるのですが、私の心境はそれどころではありませんでした。 彼の背後の奥、その向こう側から放たれる殺気、私はそんな殺意に思わず目を見開いてしまいました。 敵の正体は第一に女性だという事だ、第二に彼の背後から歩み寄ってくるその者の姿を視認したのだ。 だがしかし、私自身はそれを人間の関わっていい領域の存在ではない事を瞬時に悟っていた___! 放たれる殺気、剥き出しの害意、そんな存在の彼女に対して同じ人間であるとは到底思う事が出来なかった。 ____そして彼のすぐ背後、そこに奴は立っていた。 「に、逃げて……」 死を悟るほどの気配、私は上手く動かせない口元でどうにか彼に逃げるように説得したかった。だけど、実際に私ができた事と言えば、恐怖に慄くまま化け物が彼の後ろで佇んでいる様子をただ震えて見ている事しか出来なかったのだ。 不意に彼もまた、その異様な気配に気づいたのか振り向いた___。 しかし、私の予想に反して彼はその存在に気さくに話しかけたのだ。 でも……、 その存在は相変わらずの脅威を身に纏い…、、、 彼を___ッ!! 咄嗟の事でした___、 私は一歩を踏み出す____。 私は本当にバカです、大馬鹿者です___! 自分一人だけ逃げれば良いものを、何で___! 敵の一撃、今この瞬間に放たれた地を割るほどの蹴りに合わせたカウンター攻撃、私は自分自身の出せる全身全霊の蹴りを全力でそれにぶつけたのだ。 ___ズバァン……ッッ!!! 瞬間、世界が揺らいだと錯覚した。そのあまりにも大きな衝撃に私の体は吹き飛ばされる。だがしかし、私はそんな衝撃を耐えるように彼と怪物との間に割って入るように立ち塞がった。 私の脚が悲鳴を挙げている、先程の一撃はなんて重たい蹴りであった事か…、ズキズキと痛む脚を庇うように少女は身構える。しかし、その体の震えが止まらない、それに呼吸が上手く続かないのだ。 でも___、 「ようやく希望が見えたんです、だから!、だからこそ彼は絶対に殺させません…!」 飼い猫が見つかる、という希望を彼は見せてくれたのだ。だから…、だからこそ私はそれに答えようと、こんな理不尽な状況に抗うことを決意したのだ。 怪物の表情が強張る___、 「希望…?、彼…??」 瞬間、視界から消えた。速い…!? ___ダッ! 瞬間移動とも言うべき速度、そんな速度で再び目の前に現れた怪物の拳が私の腹部で炸裂した。 「死ね……!」 鳩尾に感じた衝撃、鍛え込まれた拳が……、そんな剛金と差異のない程に鍛え込まれた拳から繰り出される一撃は、私の腹部の奥に隠れた内臓すらも巻き込んで爆ぜる。 ___ズバンッ! 「カハッ……!?」 吹き飛ばされる意識と肉体。しかし、その後ろは崖である……ッ!? ここは高台に位置する場所、咄嗟にガードレールを掴もうとした手先が呆気なく滑った。そんな少女は、苦痛に顔を歪ませて真下に見える森林へと落下していった。 だがしかし、それだけでは終わらない。 「殺す…!、殺す!、コロスッ!」 瑞稀、いや……怪物はガードレールに脚をかけて下へ降りようとしていたのだ。ブチ殺す、自らの手で確実に息の音を止める為に下へと落ちるのだ。 そんな時だった____、 「待て瑞稀___ッ!!?」 フウタローの声、瑞稀の動きが一瞬止まった____! あれ?、フウタローの声が聞こえた気が……それに私は、何を………?? 頭が上手く働かない、そのままフウタローの静止を振り切って瑞稀は崖下に消えていく。それは獣のような濁声を掻き鳴らした雄叫び、それと一緒に真下に見える暗闇へと身を投じて行ったのである。 フウタローは、この状況に悪態をつく。 「クソッ……何がどうなってる!?」 ガードレール越しに身を出して、真下の森を見下ろしたフウタロー。 今この瞬間、一体何が起きていたのか状況が全く飲み込めないのだ。だがしかし、このまま黙って見過ごせば間違いなくあの少女が死ぬと確信した。そして、このまま瑞稀を放置していれば、大切な幼馴染が……!、俺の知っている彼女が瑞稀ではなくなってしまうという確信があったのだ。 彼は御仏に祈るように手を合掌すると____、、、 「あーもー!、えぇいままよ!」 ____と、 目を瞑り、恐怖を押し殺してガードレールを躊躇なく飛び越えたのだ。 そして、彼の思考が死を悟る。 俺、山田風太郎は人生で初めて死を覚悟した。一度目は瑞稀の襲撃、二度目は今ちょうど崖下に飛び降りた瞬間である。 「イィヤァ〜〜〜〜ッッ!!?」 思わず出てしまった絶叫、だがしかし彼の内心は思いの外に冷静であった。 どうか神よ、もしも実在しているならば俺を無事に生かしてくれる事を祈ります。 そして、傲慢な願いではありますが___ いや___、 だからこそ、この瞬間だけはお聞き下さい。そして、その願いを必ず聞き届けて下さい。 あの二人を…!、俺の絶対に悲しませなくない大切なあの二人を………! どうか、お救い下さい___。 https://ai-battler.com/character/5bcc3af2-7acd-44a9-8704-ac5f058b0f1d