____俺、山田風太郎は思った。 神は本当に存在したらしい……。 俺は今、あのガードレールを飛び越えた先、その真下に広がる森を駆けていた。 しかし、神は時として残酷であるらしい……、 あの俺さ……、現在進行系で靴とパンツ一丁の状態で森を走ってるんだよね………。 どうして……、 どうして………? 「どうしてこうなるんだよ〜〜〜ッ!!?」 フウタローの叫び、真夜中の森に響き渡る。 説明しよう! 【ステップ① 崖から飛び降りる。】 「ア"ァ〜〜〜ッッ!!、死ぬ死ぬ死ぬッ!?」 山田風太郎は落下していた。 【ステップ② 木に引っ掛かる。】 「うおっ!?、シャツに引っ掛かったのか……!、あれ…?、枝が外れない?」 仕方ない、俺はシャツを胸元から引きちぎって脱出した。 【ステップ③ 再び木に引っ掛かる。】 「またかよッ!?、てか今度はズボンッ!」 し、仕方がない……これは仕方がない事なんだ…! 俺はチャックを開けるとズボンから這い出るように地面へと落下した。 【ステップ④ 無事着地】 いや、無事じゃねぇよッ!?、こちとら真冬に変態紳士みたいな格好させられてんだよ! ___ガクガクブルブル せめてマフラーぐらいは寄越せよ神様!、このままじゃ凍え死んじまうぞ! その瞬間、真冬の突風が吹き荒れて、俺の寒さに敏感な肌に突き刺さる寒波の嘲笑。 次の瞬間___、 「ぶへっ!?、なんだこりゃ………」 顔面に直撃した何かを掴む、何やら布っぽいのだが…… 「ってこれ、マフラー!?」 さっそく、嬉々として己の首元に巻いた。 あ、温ったけ〜〜ッ!! 「もしかして服とか貰えたりする?」 期待を込めて神様に聞いてみた。 ___ガンッ! 折れた小枝が頭部に直撃する、ダメってことね了解…… 一方、その頃____。 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、」 怖い…!、私は恐怖に駆られて暗い森を走っている。 その少女、伯内 愛(はかうち あい)は駆けていた___。 背後から迫り来る人外なる存在に恐怖していたのだ、その存在は彼女の背後に見える森の木々を幾つも薙ぎ倒しながら今もなお追い立ててくる。その姿はまるで人智を逸脱したとしか形容しようがない、そんな存在が雄叫びを挙げて迫り来る。 それに対してただ逃げるしかない愛、そんな彼女の右腕からは絶えず血が流れている事が分かる。 「ハァ、ハァ、ハァ、痛っ……!」 右腕を負傷した、崖から落ちた際に小枝に腕を切り裂かれたのだ。しかし、不幸中の幸いにも彼女が地面に叩きつけられる事はなく、どうにか森に伸びた無数の枝葉に引っ掛かることで事なきを得たのである。 だがしかし、状況は芳しくない。負傷した右腕から血がポタ…ポタ…と絶え間なく垂れ落ちていく。その地面に付いてしまった痕跡が、背後から迫り来る獣に暗く視界の悪い森の中でこれでもかと己の居場所を知らせてしまっているのだ。 「なんで…、なんで私は……」 ____愛は嘆いていた。 何故あの時、私だけでも逃げなかったのか……それぐらいのチャンスは十分にあったはずだ…… そして、何故あの男を助けたのか……?? 昨日、彼に告白されたから?、それとも彼のおかげで飼い猫が見つかりそうだったからか? 分からない……、もう今となっては私には分からないのだ…… 「でも、失いたくはなかった」 それだけは本心である___、 ふとした疑問、それだけの理由で私は自分自身の命を無駄に捨てられるというのか…? 否、では…この現状をどうやって説明すれば良いというのか……!? 私は複雑な感情を伴って理不尽な現実に押しつぶされていた。 これは理不尽、確かに理不尽な状況だ。 だがしかし、ふとした瞬間から逃げ惑う彼女の駆けた足取りが段々とゆっくり遅くなる。 ____彼女は、とある事を思考する。 理不尽……? 理不尽…………… 「理不尽……か…」 そんな呟き、とある少女は突然立ち止まり、改めて背後へと振り返る。その振り向いた矢先、見えたのは彼女自身を無惨に殺そうと追ってきた理不尽の権化、そんな者の姿がそこにはあったのだ。 愛は溜息を一つ、そして考える。 いつの事だったか、私はこの感覚を知っている。そして、それに抗う術を一つだけ知っているのだ___。 口先が勝手に動いた、それは何かの呪文を唱えるように自然と己の口から出た言葉である。 私は理不尽を押し付ける………! 「貴方に理不尽を押し付ける___!」 途端に脳が、肺が、心臓が一様に加速する。彼女の視界が入れ替わる、彼女の認識がすり替わる、彼女の常識が覆る。そんな瞬間、そんな刹那に起こった変化である。 ___バキリ 彼女の目線の先、佇む理不尽がその拳で近くにある大木を殴り砕いた様子を目視した。そして、その大木が音を立てて倒れていく姿を黙視したのだ。 彼女と獣、その双方の視線が搗ち合った。 狂気を、殺意を、害意を秘めた瞳が私という存在を無遠慮に見つめてくる。 私は、そんな理不尽な存在に対してこう叫ぶ。 「何見てんだよッ!!、クソムシがッ!!」 喉奥から叫んだ言葉、その鋭い声が敵の意志を威圧する。 私なら……私だからこそ、戦える! 覚悟を決めろ、心を固めろ。そして、硬く握りしめたその拳で眼前の敵に突き進め___ッ! 私は構えた、理不尽へと身構えた。血の滲むほどに強く握りしめた拳、その瞳が眼前の怪物を睨んでいた。 ____彼女は、心の中でもう一度叫ぶ。 私は理不尽を押し付ける……! 貴方に理不尽を押し付ける___ッ!! これは死闘の始まり、刹那に走った死闘の開始を告げる合図である。 https://ai-battler.com/character/5ae54540-8111-4b64-a17e-a75011743bfd