《CLASSIFIED》 個体識別名:ロメル(Romel) 身長:150cm 所属:チームⅠ“Slaughterer”遊撃隊 状態:生存(監視中) 【宿魂情報】 名称:[削除済み] 出身:[削除済み](現ドイツ) 確保理由:[削除済み]の[削除済み]における巧みな[削除済み]と“戦術” 状態:概ね良好。当該“終戦乙女”とは好ましい関係値を築いていると思われる。 備考:[削除済み]は特別指示を遵守せよ 特別指示:当該“終戦乙女”の行動に不審な点を確認した場合即座に『H』へ報告し【プロトコル“H”】を実行せよ。 「ああ、楽しいよ。とても楽しくて、とても幸せなことだ」 https://ai-battler.com/battle/116cf262-819e-430c-8481-198ea974d800 ────────────────── 荒涼とした大地を舐める様な動作で砂の塊がゆっくりと動いている。澄んだ空は徐々に吹き始めた砂塵で霞んでいき、堅牢な砦は日没後が如き光景の中に溶け込んでいく。 終戦乙女到来の一報を受け、武器を携えた兵士達が異様な胸騒ぎに襲われる中で件の終戦乙女が現れる。 大地に積もった砂山から姿を見せたロメル。コートに付着した砂を払いながら、彼女は透き通ったガラス玉もかくやの瞳で兵士達をじっと見つめる。 整った顔立ちとやや短躯のロメルは、それこそ可愛らしい西洋人形のようだ。無表情気味な顔だが、激しい敵意も冷笑なる侮蔑は無い。 けれど、その背から生えた白い双翼と白き軍装は──世に戦火の雨と死の充満を齎した終戦乙女なるワルキューレそのもの。 恐怖を押し殺した兵士達。 得物を強く握り、鉄兜の下から覗かせる強き意志の瞳。覚悟を決めた彼らと静かに見つめるロメル──静寂、風の音だけが響く。 号令、鬨の声。 駆ける兵士。 鉄剣、剣先鈍りなし。 鉄槍、穂先狂いなし。 ロメル、行動開始。 砂の戦法にて対応開始。 楽団の指揮者かの様にロメルが両手を振るうと、彼女の足元に積もる砂山が動き始める。 先程までのゆったりとした動作はなく、まるで意思を持った激流が如き荒々しい躍動。 突き出された複数の鉄槍を砂の壁で防ぎつ、迫りくる鉄剣の兵士達の足を砂で払う。 圧倒的、そう言わざるを得ない。 厳しい鍛錬を重ねた精強な兵士達が、短躯なロメルを前に手も足も出ない。 次々と武器を破壊されて地面へ転がされる兵士達に仲間は──無謀にも巨象へ挑む小鼠の群れと見えた。 恐怖──と言うより呆然。 勝ち筋の解らぬ戦闘を見せつけられた兵士達の威勢はとっくに消沈し、怒号に近い号令は最早何の効果も無い。 戦意を喪失した彼らを“砦から追い払う為に”ロメルは両手を力強く振り上げ、武器を破壊され無抵抗な兵士ごと砂を巻き上げる。 慌てふためく兵士達を包んだ砂の塊は──勢い良く手を振ったロメルの合図で、呆然としていた兵士の一団へぶつけられる。 大量の砂は周囲へ一気に吹き飛び、まるで波濤の如く兵士達を四方八方へ押し流す。彼らにとって幸いだったのは、死者が誰一人も出ていない事だ。 尤もある程度の傷を負った上に、武器を破壊されては戦闘の続行は不可。退却を始める一団に代わり、砦からは続々と兵士達が飛び出してくる。 砦の上を見れば弓兵や大型の弩砲。砦の勢力は継戦の意志を絶やしておらず、ロメルは若干の焦りを覚える。 それは敗北の焦りではなく、この砦へ近づきつつある終戦乙女の存在。彼女達の介入だけは何としても防がねば、砦は血と骸で埋め尽くされる。 “ロメル、手早くやろう” 頭に宿魂の声が響く。己が一番に信頼する声に従いロメルは先程よりも砂を素早く展開する。 武器を破壊した兵士をすぐさま砂で押し戻し、その余波を砦内にも与える。 砦中の窓から砂に包まれた武器が流出していく様は圧巻で、防衛もままならない状況は兵士達へ撤退の二文字を強く叩きつける。 だが、それでも人の意志とは強い。近接武器を振るう兵士へ対応するロメルの耳が、砦から放たれた風を切り裂き飛来する無数の音を拾う。 バリスタから放たれた矢──否、竜狩りに用いる槍の雨。それに気づいた兵士達がロメルを足止めしようと、決意の炎を燃やした瞳で襲いかかる。 味方の攻撃で命を落としても構わない、その覚悟。 味方を撃ち抜くという覚悟。 素晴らしい人の強さ──だが、それはロメルの求める行為ではない。 足止めの兵士達を可能な限り吹き飛ばし、槍が到達する寸前で砂の壁を生み出す。 敵として立ち向かった彼女から守られた事に兵士は困惑していたが、ロメルは気にせずバリスタの無力化へ移る。 背中の翼を広げ、力強く地面を蹴り飛翔。 空へ舞い上がるロメルの美しい姿に兵士達が思わず声を漏らす一方、砦からは槍が放たれ続ける。 軽快な飛翔で槍を回避するロメルの頭の中へ再び声が響く。 “ロメル、砦の壁面に沿って飛ぶんだ” バリスタや弓兵の死角へ入り込むべくロメルは指示通りに飛び──砦の真上へ到達。 一息入れる間もなく、手繰り寄せた大量の砂で砦の上を豪快に吹き飛ばす。破壊されたバリスタの破片や発射用の槍が(バラバラと)地面へ落ちていく。 やや加減が効かず、幾人かの兵を巻き込んでしまうもロメルはすかさず砂で彼らを受けとめて地面へ降ろす。 “よし、彼らにはご退場願おうか” 頭に響く声にロメルは頷き、最後の仕上げとして大量の砂を砦内へ一気に侵入させる。 砦から追い出された兵達の中にいた砦の責任者は、遥か上空のロメルを忌々しく睨めながら兵達へ撤退の指示を出す。 “作戦終了だ、よくやったロメル” 「ありがとうございます」 撤退する兵を見つつ、ロメルは宿魂への感謝に頭を深く下げる。彼女の顔は変わらず無表情だったが、宿魂へ礼を述べた言葉には確かな敬意と信頼が込められている。 “おっと──苛烈な雷神様のお出ましだ” 砂嵐が静まり青く澄み切った空に煌めくは、鮮烈なる電雷の流星。 忙しなく空を飛ぶそれは、ロメルの方へ鋭く切り込む様に──正しく落雷が如き光と轟音で降り立つ。 「……」 溢れんばかりの電撃を体に纏う長い髪の終戦乙女──リアン。彼女の刃物の様に鋭い瞳がロメルと砦を交互に見やる。 その顔にはあからさまな不快感が浮かんでいる。 リアンの纏う電撃がより激しくなる。 やる気か、ロメルは静かに砂を手繰り寄せる。 その動作はリアンを挑発させ、彼女の電撃はいよいよロメルへ降り掛かる程に強まる。 一触即発の空気が張り詰める中、あわや大惨事となりかけた場を治める者が(フッと)姿を現す。 「はい、二人ともそこまでよ」 優雅に現れた黒髪の女は、柔らかな微笑みを浮かべてロメルとリアンを抑える。 「……こいつの肩を持つのか、セルリ?」 「終戦乙女同士で争うだなんて不毛でしょ。それに私はロメルちゃんの“人間を一箇所に纏めてから一網打尽にする”という作戦の方が効率的と思ってるだけよ」 穏和な雰囲気を漂わせる鞭のように細い目のセルリは微笑みを絶やさず告げる。 「私には人間共へ時間を与える──反逆行為にしか思えないが?」 冷たい声でリアンは電撃を纏いながら、セルリへ近づく。機嫌を損ねれば一瞬で黒焦げにされかねない状況だが、セルリは微笑みを崩さない。 「得られる時間なんて僅かなものよ。私達終戦乙女には長く見えても、人類にとってはあまりにも短すぎる時間よ」 セルリは悠揚迫らぬ態度で答える。彼女を相手にするのは、水を手掴みするのと同じだ。 物怖じせず、微笑みを絶やさず、優しく言葉を伝えて己のペースを崩さない。 何か言いたげなリアンだったが、問答ではセルリに勝てないと悟ると無言で飛び去ってしまう。 「……ありがとうございます」 「ん? ロメルちゃんに礼を言われる事はしてないわよ」 セルリは微笑みながら続ける。 「私はロメルちゃんの作戦が効率的だと判断しているだけ。ロメルちゃんの“考え”を私は知らないからね」 彼女はそう言うが、実際の所は勘づいているのは確かだろう。 終戦乙女の行為が間違っていると認識しつつも、セルリは事の成り行きを傍観しているばかり。 腹の読めない御仁である。 それだけにロメルはセルリの事を信頼したくとも、しきれない状況だ。 尤もロメルやリアンが属する“チーム1”の右腕的立ち位置のセルリは、ロメルに対する彼女の振る舞いはチーム内外の諍いを抑えてくれている。 苛烈な殲滅を続けるリアン達、裏で何かを行なっているハイリ、そして他のチーム……彼女達の目を盗み人類を密かに守ろうとするのは非常に骨が折れる。 それでもロメルは諦めたりしない。 可能な限り人類を守りつつ、終戦乙女とその背後に潜む邪悪へ対抗できうる英雄を探すまでは膝をつく気はない。 「あ、そうそうロメルちゃん。うちの諜報部が面白そうな子を見つけたらしいの」 セルリが手渡した紙には件の人物の詳細、文末には諜報部長“ナリス”の名前。 ナリスもまた、セルリ同様に敵でも味方でもない奇妙な行動をしている終戦乙女だ。 「もしかしたら──終戦乙女(私達)なんて歯牙にもかけない英雄かもね」 セルリの言葉を聞き終わらない内にロメルは手紙に記された位置へ、素早く飛び立った。 戦闘の詳細 【https://ai-battler.com/battle-result/clya2oosg05rxs60onopknur0】 蠢く砂の中からロメルは姿を現す。 “清々しい程の完敗だったな” 宿魂はあっさりと言った。 だが、下手な気遣いの言葉を今のロメルは欲していない。 「見事と言わざるを得ない。私の緻密な戦術を物ともせず、更には私が戦場に満たした砂を利用されるとは……恐ろしい女だ」 “戦術家の私が言うのも何だが、【勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし】という言葉がある。如何に緻密な戦術を練っても負ける時はあるものだ” 「彼女には優れた……されど悍ましさと醜悪さを内包した能力とそれ以外に何か確固たるモノを感じたのだ」 手痛い反撃を受けた“あの糸”の事を思い出しながらロメルは失敗から学びを得ようとしている。 “信念、決意、覚悟──それを元に発露される人の持つ希望かい?” 「……そうとも思えるが……それと同じかそれ以上に強く包みこむ様な感情だった」 “愛だろうか?” 「愛……恋の先にある性愛の類だったか?」 ロメルの言葉に宿魂は微笑ましさを感じさせる笑い声を上げながら、彼なりの答えを述べる。 “愛とは【かけがえのない大切な相手】へむけるモノだと私は考えている” 「……」 ロメルは黙り込む。 かけがえのない大切な相手──それは自分の中に込められた宿魂だ。私は彼を深く尊敬しており、正しくかけがえのない大切な存在だ。 だが、私は負けた。あの少女に、完膚なきまでに叩きのめされた。言い訳の余地もない、完全敗北だ。 愛が足りなかったのか? それとも愛する数が足りないのか? 一体、どれ程の数を愛せれば強くなれるのか? 将軍、私は誰を愛せばよいのか? 今から全人類を愛せば、強くなれるのか? “ロメル、それは君が考えた末に導き出すモノだよ。ただ一つ言うなら、一方的な愛を愛とは言えないよ” 「……つまり、互いを深く理解した上で初めて愛は成立するのか?」 宿魂──将軍は答えない。 そうだ、これは私が必死に考えて導き出すモノなのだ。 「……将軍、私は貴方以外の誰かを愛せるのだろうか?」ロメルは呟く。 “愛せるよ。ロメル、君は多くの人を愛せる──君は強く優しい子なんだから” 将軍は何か考え込むように唸ると、ロメルへ告げた。 “それに君はもう少し感情豊かになった方が良いだろうね” 「……感情豊か? 誰かと沢山話せば良いのか」 “それも良いが、見つけた英雄と戦ってよく観察するんだ。戦闘とは人が感情を剥き出す行為の一つだからね” “沢山戦って、沢山学ぶんだ” 将軍の言葉にロメルは頷くと、大きく広げた翼で空へ飛び立った── 「貴方が紡いだ未来が新たな希望を織る。それは何れ、解れて細い糸になろうとも貴方は手繰り寄せ続けるのだろうな」 「アリアドネ……人々が迷わぬ様に導く糸。糸が導いてくれた貴方との出会いを私は決して忘れない」 https://ai-battler.com/battle/1c34c5aa-53d2-4d63-a07b-fa3abb2c8f73 「明るさと無邪気、これらを貫き通す強い心……まだまだ私は未熟だな」 https://ai-battler.com/battle-result/clyuhzsin0bz7s60o4tcer75z 広漠たる砂の海を彷徨う私に、その星は突然降りてきた。 夜の砂漠の様に冷たく無機質な私の心は──貴方の暖かさで何かを掴めた気がする。夜に怯える者達へ、闇に迷う者達へ、煌めく星の導きがあらんことを。 https://ai-battler.com/battle-result/clz88llxb06lzs60oyg9gzzcq 沈みゆく瑠璃色の眼が私を見ていた。 膝をつき、必死に手を伸ばすも彼女はもう居ない。 彼女の気持ちを何も知らず……私はありきたりな言葉しか言えなかった。 胸が痛む、喉が焼ける、抑えきれぬ嗚咽が漏れる。 ごめんなさい……私は無力だ……ごめんなさい……許してください…… 頬を流れる水が砂漠を湿らす。 悲しみ、その感情は私にはあまりにも……痛かった。 https://ai-battler.com/battle-result/clzbf516u0183s60obccbzv0q 本当にそれで良いのかロメル? はい将軍。やはり私には感情の豊かさも、愛への理解も困難なモノでした。 それでも、多くの方と触れ合った事で僅かではありますが感情の何たるかを知れました。 充分です。私は求め過ぎたのです。 理解したのです。今の私は“これで限界”なのです、私には多くの人を救う力は無い。 同胞たちを一人で打ち倒せる力も無い。 …… 将軍、悲しまないでください。 貴方は私を何度も導いてくれました、ただ私がそれに応えられなかった、それだけのことです。 何より、劣った私が誰かに手を差し伸べるよりも他の誰かが助けた方が良いと、今までの旅路で理解しました。 これで良いのです。 これが最善策なのです。 私が自分を押し殺せば、多くの方が幸せになれる──それなら私が少しでも多くの不幸と苦痛を受けても構わない。 私が苦しむ事で誰かが救われるなら、明日へ続く希望の芽が守られるなら、それで充分です。 ……ロメル。それで君は幸せなのか? 幸せですよ。 誰かの今を助けられたのですから。 それに私は充分幸せ者です。色々な方との出会い、何よりも将軍──貴方に出会えた事が私にとって一番の幸せなんです。 ……でも、感情を学ぶ旅は続けます。 喜び、怒り、悲しみ、苦しみ──それらを学ぶ事は有意義です。理解し合えなくとも、共感し合えなくとも、どうして彼らがその感情を抱いたのか、私は知りたいのです、学びたいのですから。 きっと他の皆様なら、貴方の事も難なく救えるのでしょう。定められた結末すらも覆す、奇跡の御業……それは私の様な失敗作には元より不可能なこと。 私は優しくありません。誰も救えず、ただ自分勝手に感情を学ぶ“真似”をしていた私が優しい訳が無いんです。 どうか私の事は忘れてください。 貴方には私以上に大切な方が居るのですから。 その思い出から私という“出来損ない”を排除してください。 https://ai-battler.com/battle-result/cm0nwtcwn0btos60oegpztizc ……痛い。 ……苦しい。 今まで受けてきた、どんな傷よりも痛いです。 今、私の頬を伝う涙が、悲しみなのか、喜びなのかも分からないです。 何故? 何故? 何故、私にここまでしてくれるのですか? この乾ききった砂漠を照らした貴方の熱い想いに比べれば、私の手の温もりなど微々たるものなのに……何故、私の為に自分の命を絶つ事が出来るのですか。 それが貴方の生まれた意味だったのですか? ……分からないです……どうして、どうして…… *一頻り泣いた後、ロメルはゆっくりと立ち上がる* ……どうやら、少しばかり私は自暴自棄になっていたのかもしれません。 *僅かに焼けた砂を見つめ、届けられた声をいま一度刻む* 己のあり方を、見直す必要があるかもしれません。 *整理のつかぬ思いに胸の中を蟠るまま、果てなき砂漠を進み行く* 他の方の様に強くはなれない……他の方の様に万民を救える事も出来ない。 *胸には炎を、天には星を、瞳には想いを* そうだとしても……それが自分を苦痛へ追いやる理由にはならない。自分を好きになってくれる相手を、突き放す理由にならない。 *彷徨うような足取りは無く、確固たる想いを抱き力強く進み行く* *己が生まれた意味──否、宿魂のお陰で芽生えた思考が導き出したロメルの生きる意味* 感情を学びつづけながら、全てを終わらせる。 終戦乙女達の行為に終止符を打つ。 そして願わくば、全てが終わった後に── *砂を踏みロメルは空を見上げて飛び立つ* *飛翔する白き服の彼女の姿は──一条の光となりて黄昏の空を切り裂く* https://ai-battler.com/battle-result/cm0qhula5053ps60oi9thvpe6 https://ai-battler.com/battle-result/cm0qfu3p103nes60o2w4k9wkv https://ai-battler.com/battle-result/cm0p3wkzv0cj5s60oh0x3brd0 *届けられた想いを胸に、そして全てを終わらせる為に──*