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【菓子喰らいの獄卒番犬】ナベロス

10代前半〜中盤 身長158㎝ 終戦した事はおろか、国が滅んだ事すら知らされずに、秘匿された地下牢の看守として鞭を振るう少女。 3つの頭と、任された仕事を真面目にこなす厳格な性格の持ち主である為、『地獄の番犬』と恐れられている一方、稀に両端の首と喧嘩をしたり、差し入れの甘いお菓子に尻尾を振り大喜びする可愛らしい一面もある。 https://ai-battle.alphabrend.com/battle-result/cluqp3ske01ucs60osebcyjti https://ai-battle.alphabrend.com/battle-result/clupijf54028ss60ol7fv7luf https://ai-battler.com/battle-result/clxygqaet0098s60o0gl8h3ga ───────────────── 私は愚かだ。だから誰よりも頑張らなくてはいけない。もう2度と誰にも馬鹿にされないように。 私は愚かだ。だから誰よりも深く考えないといけない。もう2度と誰にも笑われないように。 私は愚かだ。頑張り方も、考え方も、正しさも、何1つ分からない。分からないのに進んでしまい、戻り方も分からない。 ───────────────── 私の生涯は孤独と劣等感そのものだった。 親の顔なんて知らない。知っているのは鎖の重たさと、上から降ってくる笑い声の冷たさだけだった。 朝から晩まで笑われ、怒鳴られ、蹴られ、たまに投げられる残飯を貪るだけの存在。 自分を取り巻く世界の事なんて何1つ分からなかった。何を言われているのかさえ、殆ど分からなかった。考える頭なんて無かったから、死にたいとすら思わなかった。 ただ、欲しいものはあった。時折窓の外から見える、並んで歩く人間達。あれが欲しかった。冷たくない、暖かい笑い声が。 雑巾を丸めて紐で括り、それを窓の外の人間に見立てて遊んだ。いつの間にかそれが私の唯一の娯楽であり、秘密の儀式となった。 捨てられた雑巾をこっそり拾い、それをもう1つ作った。いつしかそれらが唯一の友人になった。沢山遊んだ。名前だって付けた。それらと遊んでいる間だけ、私は1人だけれど、孤独ではなかった。 ───────────────── 何1つ分からなかった冷たい世界は、急に表情を変えた。聞いた事もないような凄まじい音と叫び声。わけもわからず蹲った。蹲っている間に誰もいなくなった。何かが焼け焦げた匂いと血の匂いに震えが止まらない。 止まらぬ震えの中、2人の友人を思い出した。瓦礫の中を懸命に探した。側から見れば、炎と瓦礫に包まれた世界の中で泣きながら雑巾を探す子供など滑稽だろう。でも私にとってかけがえのない友人であり、唯一私を肯定してくれる家族のような存在だった。 しかし、それらはとうとう見つからなかった。初めて感じた、何かを失った気持ちが心に穴を開けた。 失意の中、知らない大人達に引きずられ、訳もわからぬまま、新たな知らない世界に放り込まれた。 ───────────────── 【被験体データ】 No. 【S-24】 コードネーム: 【ナベリウス】 G棟でのコードネーム:【ケルベロス】 G棟の生体兵器からS棟の被験体に移行された為、コードネームが2つ存在する特異な被験体。 出身国は不明だが、粗末な服を着せられ鎖で繋がれていた写真が残されており、奴隷として輸入されたものと推測される。 G棟出身の為、当時の詳細なレポートは残っていないのが悔やまれる。 ───────────────── X月X日 G棟より移行。引き継ぎ事項は【ギフテッド】接種済との記載のみ。声掛けに対し反応はあるが理解できていない様子。食器やカトラリーの使い方を何1つ理解しておらず、食べ物は全て手づかみで貪った。前途多難。身体検査時、他の獣人には見られない首から肩にかけて謎のしこり有り。それが頭に見える事から、コードネームは【ケルベロス】との事。 X月X日 知能テストを試してみようにも言語不明瞭。読み書きはおろか、筆記用具の使い方すら理解していない。部屋の隅に置いてある掃除用具に反応。渡すと掃除を始めた。 X月X日 体力テスト施工。説明に非常に時間要する。結果としては獣人である為、かなり優秀な部類。報酬に菓子与える。初めは警戒して食べなかったが、半ば無理矢理口に入れると表情が一気に変わる。気に入った様子で尻尾を振っている。 X月X日 菓子をちらつかせると恐ろしい執着を見せる。報酬として設定すると驚異的な集中力を発揮。近頃は単語ではあるものの発語あり。学習速度は凄まじい。首から肩にかけてのしこり肥大化。鳴き声をあげ、しこりをさする様子あり。 X月X日 近頃、言語が明瞭。訪問するや否や話し相手を強く要求される。退室時は耳を折り曲げ寂しげな表情をするようになった。菓子の他、話し相手に執着する様子見せ、首のしこりに話しかける様子有り。要観察。 X月X日 首のしこりが新たに頭頂部のようになっている。本人に指摘すると右が「リウ」で左が「ケル」との事。友人関係であるとの発言あり。 X月X日 とうとう首のしこりより発語あり。【S-24】のコード割り当てる。左右の名前を言い間違えた研究員に対し憤慨する様子有り。菓子をちらつかせるとすぐに機嫌直る。 X月X日 運動場で他の被験体と殴り合いの喧嘩に発展している。事情聴取する。他の被験体である双子兄妹の妹の方に飴菓子で買収され、気に入らない被験体を殴るように仕向けられた様子。双子兄妹の担当、別途始末書提出済。 X月X日 戦闘訓練開始。菓子を報酬に設定した為、非常に意欲的。左右の首と話し合いながら縦横無尽に飛び回る。口から霧のようなもの噴射。生体兵器をいとも簡単に撃破。解剖室より、生体兵器からアルカロイド系の猛毒が検出されたとの報告あり。 X月X日 やや執着心強い面あるも、物事に意欲的で協調性があるため、████の地下牢の看守として働かせる。仕事内容すぐ覚え、忠実にこなす。 ───────────────── 陽の光も届かぬような蝋燭頼りの地下牢は、世界のどこよりも居心地が良い。 ここは誰も私を馬鹿にしない。囚人達の畏怖するような表情すら心地よい。 私を笑って怒鳴って蹴った奴らはこんなにも素敵な気持ちでいっぱいだっだんだ! 何より、あの日失った筈の友達だっている。 本当に素敵な気持ちだ。 でも正しいことなんて今でも分からない。 囚人達は悪い奴らだと教えられた。難しいかもしれないけれど、すごく悪い奴らなんだと。 たまに囚人の話を聞く。それぞれがそれぞれの理想を描いているようだ。すごく悪い奴らなりの矜持があるようだ。私にはそう言うものがないから少し羨ましい。 世界は私には難しい。だから私は目の前のことをこなすので精一杯だ。未来なんてわからない。 わかることなんて、囚人は悪い奴らで、悪い奴らは管理しないといけなくて、管理するために私達がいる事。そして甘い物を食べた時の全身に広がる素晴らしい気持ちだけだ。 悪い奴らはいい奴らになる為に、ここでいっぱい反省しないといけないらしい。でも囚人達の話を聞いていると、何がいい事で悪い事なのか分からなくなってくる……私は今も、ずっと愚かな存在なのかも知れない。 もしかしたら、愚かな私もここで反省しなきゃいけないのかも知れない。悪い事を反省する事を、罪を償うと言うらしい。 そして罪を償えば、失った権威や名誉を取り戻せるチャンスが出てくるらしい。頑張って罪を償えば私も愚かじゃなくなるだろうか?分からないけれど、リウもケルも言ってくれる。「私が1番頼りになるリーダー」だと。 ……欲しかったものはここに全部ある。だから全力を尽くそう。ここにいる悪い奴ら全員の罪を償わせ、失った権威を取り戻す為に。 愚かな私にできるのは、それだけだ。