俺は寝ぼけた顔で講義を受けていた、教授が何を言ってるか訳が分からんし興味もない。 「ねぇ……ねぇ、フウタローどうしたの?、今日はなんだか元気ないみたいだけど……」 フウタロー、この俺『山田 風太郎』の名前を読んだのは幼馴染の"引合 瑞稀(ひきあい みずき)"、なんだかんだ保・幼・小・中・高・大まで同じ進路のいわゆる腐れ縁だ。昔から根が真面目なのが彼女の長所であり、俺が苦手とする事である。 「まぁ、人助けってやつかな…?」 と、言っても股間を蹴り上げられただけだがな……。 「君がまた珍しいね、もしかして助けた相手は女性かな?、それも美人さん!」 「お、おう……よく分かったな…?」 「フウタローは美人に弱いからね、私は君の事なら何でも知ってると豪語できる自信があるわよ、エッヘン!」 「はいはい、そうですか……そう言ってる瑞稀も十分に美人さんだよ」 「へっ?、えっやだ…!?、もうフウタロ〜!」 ___バシンッ! 身構える間もなく飛んできたビンタ、こいつは昔から手が早すぎる。しかも物理的に速い!、だってコイツの家って数百年も続く武道一家だしな!? 「ハイソコ、静カニ!」 外国人講師ウィルの声が聞こえた、という事は……!? ___バコンッ! 「ぶっ……!」 俺の脳天を正確無比に撃ち抜く白チョーク、俺は西部劇さながらに後ろへ倒れ込んだ。 「フウタロー・サン!、毎回イッテマスガ!、授業中ハ静カニ!、ソレカラ瑞稀サンモ!、イイデスネ!」 「すみませんでしたウィル先生…!、ほらフウタローも頭下げて!」 俺は瑞稀に掴まれた頭で強引に謝罪させられる、こいつ力がマジで強い…!? 「ヨーロシ!、瑞稀サンニ免ジテ許シマス」 「ありがとうございます、ウィル先生…!」 「フフン、イインデスヨ瑞稀サン」 この女好き野郎め!、こいつ男には容赦ないくせに女にはめっぽう甘い、そこで紳士ぶるのかよ! 「フウタロー・サン、何カ申シマシタカ?」 ギラつく白チョーク、俺は直ぐにこう言った。 「い、いえ!、何も……ッ!!」 「ハァ〜、ようやく今日も授業が終わったぁ、フウタローはこれからどうするの?」 「俺は今日は暇だな、そんでお前は今日も看板娘か?」 「まぁね、毎日お客さんが来て大変なんだよ」 ___"看板娘" はいそこ!、エプロン姿の瑞稀を想像した奴は出てこい!、いいか絶対に違うからな!、あんなゴリゴリの脳筋女が接客できるわけないだろ! ___ボゴッ! 「ぐへっ!、み…瑞稀さん?、ナゼ俺ヲ殴ッタノデスカ……??」 「んー、女の勘!」 「いや、絶対それ格闘家の勘だろ!?」 「つまり、当たってたんだ」 「あっ、いや……そのですね」 「歯、食いしばってね」 「へっ?、瑞稀さん?、もしもし瑞稀さん!?」 「歯ァ食いしばれッ!、フウタローッ!」 「瑞稀さ〜〜〜〜ンッッ!!?」 つ……つまり看板娘とはな……、 瑞稀と帰り道の途中で別れた、赤く腫れた頬と鼻血が止まらない。 つ・ま・り!、看板娘とは己の身を賭して看板を死守する娘!、道場破りから代々看板を守ってきた娘に与えられる伝統ある称号にして役割なのである。 瑞稀の奴が何代目かは知らんが、あいつの道場は一度も敗れた事がないこの地域でも指折りの伝承、"不敗伝説"を誇る言わずもがな名家、そんな家で生まれ育った瑞稀は当代最強の格闘サラブレッドというわけだ! 「んー、もう少しお淑やかだったら美人で気配りができる良い嫁さんになるのになぁ」 ___ガサガサ! 「んっ、なんだ?」 ………目を凝らしたが草むらしか見えなかった。 「まっ、いっか…!」 俺は今夜、また彼女に会いに行く、どこか儚げな美少女……そんな彼女に会いに行くのである。 「まぁ、またあの子と出会えればだけどな」 そう言って俺は苦笑する、奇跡的にまた少女と出会える事を神に祈っておくとしよう………。 https://ai-battler.com/character/cc18c8eb-d648-46ee-a4a8-59814b09de4a