眠れない、先程の出来事のせいで眠れる気がしないのだ。 「ハァー……散歩にでも行くか…」 ここ最近は特に冷えるからマフラーを……って、神様から貰ったやつだけど特に役立ってはいな……… 「うおっ……!?」 マフラーが首に巻き付いてきた、こいつマジで怖いな…! 「分かったよ、一緒に連れてくから怒るなって」 準備完了、俺は自室を出た。 今は公園を散歩している、夜明け前のせいか誰ともすれ違うことはない。 「そういえば……、最近になって膝ジイの被害を聞いてないな…?」 膝ジイとは、この公園で昔から通行人に膝カックンを食らわせる不審者の事である。昔、俺も一度だけやられたが、そのことに瑞稀が激怒して半殺しになるまで殴ってたのが原因で俺にはやらなくなった。 まぁ…変わり者だが、膝カックンを除けば普通のじぃさんだ。 「しかし、急に公園で見かけなくなった……って事は何かあったのか?」 そう疑問を口にしていると、とある人物が目に入る。 なんだっけ、あの変な服装?、たしか特攻服だっけな……? なんか、ベンチの方にヤンキーとか暴走族って部類の人物が踏ん反り返って座っていた。 晒が見えた、たぶん女性らしい。 顔が見えた、というか不良なのにメガネかよ…!、そこはグラサンとかコンタクトとかじゃないのか…? それに顔は少し……いや、すごく可愛いぞ! ___ギロッ! 「ア”っ?」 睨まれて目線を逸らす、しかし睨む姿も可愛かった。というか近くで見ると、最初は雰囲気で分からなかったが思ったより背は低いな…… 俺は面倒事に巻き込まれたくない為、そそくさとその場を後にした。 しかし、その背を見送る人物がいた。 「ったく、こんな時間に散歩かよ?……って、私も言える立場じゃねぇか」 先程のヤンキーである。 「ってか全然見つかんねぇな!、何処にいんだよ!?」 誰を探しているのだろうか?、ドカッ……とベンチにもたれた。その際にメガネがずれてしまい掛け直す。 「ジィさんの恨み、ぜってー晴らしてやるからよ……」 うちのジィさんは変わり者だ、毎日朝から晩にかけて他人に膝カックンを仕掛けるような人物だ。 こっちもこっちで家族だろうが見境なく膝カックンを食らわされたのは事実だが、うちにとっては唯一の肉親でもある。 だがな、それがあんな事に……… ざっと3週間前、うちのジィさんが病院に運ばれた。だがよ、あのジィさんがだぜ?、警察から毎回逃げ切るのは当たり前、しかもヤクザ相手に膝カックンだけで対抗してきたジィさんが簡単にやられるタマだとは思わねぇ…… それなのによ___、 あの日、夜中に病院から電話で呼び出された。 行ってみると緊急手術中で未だに意識不明なんだとよ、信じられるか? うちは信じたくなかったよ、だがな……どんなに見返しても現実は変わんねぇ……… どうにか一命を取り留めた、しかし今も寝たきりで意識も朦朧としている。 だがしかし、数少ない会話の中で聞き出せた事が一つだけある。 "どこか儚げな美少女に気をつけろ" ホントよぉ、最初なに言ってんのか分からなかったが、ダチに聞き回ってたら掴んだネタがある。 少し前からだが、この一帯で玉蹴りを繰り出す少女の噂があったらしい。話の流れは全て同じ、あちらからは手を出さない代わりに喧嘩を売れば一切の容赦がない玉蹴りが飛んでくる…… だから、この辺の奴らからは都市伝説のように扱われているらしい。 バカか…!?、だとしてもジィさんが負ける筈がねぇんだよ!、何かしら卑怯な手を使ったに違いねぇ、きっと…絶対に…… 「だからよ、会ったその時には絶対に許してやんねぇ……泣いて謝ろうが知った事か!」 んっ……?? おっ!、そう言えばまだ名乗ってなかったな……? うちはアバラ、"膝下 暴羅(ひざもと あばら)"だ! まぁ、ここら辺じゃあ『小鬼』って通り名の方がピンとくるかもしれねぇがな…? そんじゃあ、そういう事なんで…… そこんとこ、夜露死苦…! そう言うと、アバラはニカッ…と笑った。 https://ai-battler.com/character/99a0d09d-0e4d-4bb7-b376-e0234972de67