盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま 暗い夜の帳りの中へ 誰にも縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に 自由になれた気がした 15の夜 と、言ったな? あれは嘘だ! 嘘だッ! いや、それがマジなんだよ! 自分の自転車で行き先は自宅の朝日を浴びて走る21歳って誰だと思う? アタシだよッ! そう_____、 にし◯かぁ〜っ、す◯こだよぉ〜 って、違う違う…!? 俺だよ俺!、山田風太郎だよ! ってか、今のネタ懐かしいな!?、もはや覚えてる奴とかいんのかよ? 俺は現在、自宅の駐車場に自転車を繋ぎ止めていた。さすがに朝帰りはマズかったかな?、と…朝日に目を細めていると爆走するバイクのエンジンが聞こえてくる。 「よっしゃ、到達したぜ!」 誰だ…?、って!……よく見たら公園で見た不良かよ!? また何で……? という疑問は後部座席から降り立った火乃香の姿に納得がいった。 「あっ、フウ兄…!、おはよ!」 「おう火乃香!、それと……」 「あん"っ?、テメーは……」 沈黙が走る、それを火乃香が打ち破った。 「二人は知り合い?」 「「全然…!」」 息ぴったりの否定に火乃香はクスクスと笑った。 「ふふっ、なんか変なの…!」 なんか分からないが、不良とは相容れない俺はそそくさと帰宅しようと試みる。 「そんじゃな火乃香、それとアンタも…」 すると、ドスの効いた声が飛んでくる。 「おい待てよ童貞!」 なぬっ!?、童貞…! 「えっ、あっ、はい…??」 俺は咄嗟に振り返っていた。 「テメーは、"どこか儚げな美少女"について何か知ってるか?」 どこか……儚げな…美少女? それって_____、 「愛のことかな…?」 「………ッ!?」 ___ガシッ! そう呟いた瞬間、自分より圧倒的に背が低いにも関わらず胸ぐらを強く掴まれて同じ目線まで引き下げられてしまった。 「テメェ、そいつを知ってんのか!?、早く言いやがれ!!」 強く体を揺すられる、状況が理解できないでいた。 「待て待て待て!?、あんたに教えたとして次はどうするつもりだよ!」 俺はあまりの出来事に半ば動揺していた。 「そりゃあモチのロンよ、徹底的にぶっ潰してやんよ!」 しかし___、 その言葉を聞いた瞬間、既に決心はついていた。 何…!?、それは___ 「悪いが……、出来ない相談だな、他の奴を当たってくれないか……」 それに対して、不良は溜息をついた。 「そうか、そりゃあ残念だな……」 ___グイッ! 自分の半分ほどの体重しかないであろう人物に地面へと軽々と投げ飛ばされた、次に迫り来るのは顔面への拳……!? 俺は思わず目を瞑った。 しかし、痛みは襲って来なかった。 代わりに、火乃香の声が聞こえてくる。 「ねぇお姉さん?、弱いものイジメはいけないことなんだよ!」 火乃香が相手の手首を掴んでいた。 ___ググッ! 決して外れる事のない拘束に不良は笑った。 「こんのガキぃ、なんかオカシイと思ってたらとんだ化け物かよ!」 内心では恐怖していた、その小さな体の何処にこれほどまでの筋力があるというのか…!? 「ガキじゃないよ?、火乃香だよ!」 あどけない表情に反して万力の如く力を秘めた小学生、恐れずして何とするものか…!? 「チッ……、はなせよッ!」 手を乱暴に振り払う、それに応じるように火乃香も掴んでいた手を離す。 ___パッ……! 拘束は簡単に外れた、そしてズキズキと走る手首の痛みを庇いながら叫ぶ。 「しゃあねぇ、今日のところは一旦退いてやんよ。だがな、次に会った時がテメーが墓場に入る時だって事をよく覚えておけよ!」 俺と火乃香を交互に指差し、そう叫んだ。 そして___、 颯爽とバイクに跨るとエンジンを蒸して現場を後にする不良の後ろ姿を見送った。 ふぅっ………、助かった〜っ!? 「恩に着るぜ、火乃香」 「ふふっ、気にしないで…!」 俺は火乃香の頭をワシワシと撫でてやった、今回に関してはマジでヤバかったからな……。 ___しかし、何でまた愛が狙われてるんだ? 色々と疑問は残っているが、今はとりあえず何も考えない事にした。