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どこか儚げ美少女 Ver62

 管理者は語る。  「____問いかけ…」  犠牲者は耳を傾けた。  「私という存在を…犠牲者、あなたという物差しで測ると、どのような枠組みに該当するのでしょうか?……と、私という疑問があなたに問いかけます。」  ここはオアシス、そう呼ばれる土地で腰を下ろして座る二人。対する犠牲者、そんな急な問いかけに首をかしげた。  「……??、急にどうしたんです?、というか質問の意図が分からないのですが……?」  感情に乏しい管理者は少し考えた様子で固まったまま、そして再び口を開いた。  「私という存在は、あなたという単一の存在に対して相応しい行いを果たせているのでしょうか?……と、私という役割に急性的な不安を訴えます。」  昔から管理者の表情は乏しい為、一体どうして彼女がそんな事を思ったのか経緯を察する事は難しい。だが、しかし自分自身が答えるとしたならば……  「不死に限りなく近い肉体、尋常あらざる権能、そして何よりも昔のように飢えに苦しむ事も無ければ、死と隣合わせの恐怖に睡眠を妨害される事もない今の生活に私は満足しています。だから、私はそんな今をくれた管理者にも感謝していますよ?」  管理者を真っ直ぐに見つめ、そう告げた。対する管理者は、少しの間を置いて返答を返した。  「そう、ですか…。失礼、私という装置にあなたの心の機微を読み解く高次元的な検知機能は備わってはおりません、ですから"貴女"という固有の存在から"分析"という間接的な形式で得た情報ではなく、言葉という直接的な方法で得られる"意思"を確認したかった。……と、私という感情が率直に告げます。」  管理者の表情が少し暗くなった、なんとなく直感でそう感じたのだ。彼女という異質な存在とは、最初に出会った頃から数十年が過ぎた付き合いではあるが、こんな風に弱気を見せた事はなかったと今までを振り返ってそう思った。  「いえ…、本当は私と結んだ契約に対する後悔、私という存在に対する不満を知りたかった。……と、私という意思は弱音を吐露します。」  管理者が私から目を逸らした。そして犠牲者、そんな私はその言葉の意味を咀嚼するように考えにふける。  ____だがしかし、、、  「んー、特に不満とかは無いかな?、私は今の生活がすごく気に入ってる。そして管理者、貴女や今までに出会えた"管理塔のみんな"との日々が私という過去、この私が今までに失ってきた"代償"、そんな犠牲に支払ってきた代価を上回って余りあるだけの"未来"をあの日、あの瞬間の貴女が私に"犠牲者"という新しい名と共に、今この瞬間に至るまでの全てを私に与えてくれた。それだけで私は、今の私自身や貴女が大好きだって断言する事ができるの。そして、今までに語ってきた素敵で果てしなく続いていく理由を私に与えてくれたのは他の誰でもない管理者、"あなた"なのですよ…!」  犠牲者はそう言って笑ったのだ。その屈託のない笑顔から得られる情報は、管理者の"ちっぽけな不安"を吹き飛ばすには十分すぎる程に大きな輝きを発していた。  管理者の暗い瞳に小さな光が反射する、そして次にこう彼女は語り出した。  「理解、貴女という情報に含まれた誤記を直ぐにでも修正する必要がありそうですね。…と、私という表情が笑顔で語ります。」  管理者の両手、自身の顔に触れた。  ____グイッ…!  管理者は自身の両頬をその手で引き上げるように自身の口角を上げた。そんな様子に犠牲者は驚く、それは彼女が初めて見せた笑顔だからである。そして、それは確かに微かながらの変化ではあるのだが、間違いなく彼女という存在が自らの意思に基づいて見せた初めての笑顔なのである。  「そ…、そんなに驚かれてしまうと、少し恥ずかしいという感情が徐々に湧いてきます。…と、私という羞恥が現在の心情を明かします……。」  きっと、おそらく私の予想が正しければ、今の彼女が見せている笑顔は"照れ笑い"なのだろうと予測する事ができた。……と、私という犠牲者は自らの考えを述べたのである。  だがしかし____、、、  そんな幸せな日々は突然、残酷なまでに呆気なく崩れ去るものなのだろう。  周囲を焼き払う灼熱、疲労困憊の表情を覗かせる犠牲者の表情は心無しにも苦しげであった。  「わ、わわ、わたし……と、いう存…在は定義します。……と、#タシという機械が&gを#します。」  管理者、彼女は壊れかけたオルゴールのように歪な声を上げていた。およそ三千年前にまで遡る出来事、その悲劇の立会人こそが犠牲者なのである。壊れた管理者は、ひしゃげた手足で無理矢理に立っている、その意思なき瞳には血の涙が溢れていた。  犠牲者、その胸を鳴らす鼓動、それに含まれる痛みが彼女の心を引き裂いていく。  「ぎ、ぎぎ犠#者…?、、、、わわた私、はらやまdjp#」  管理者は血飛沫を上げた両腕を遠くに見える犠牲者へと伸ばす、それは何かを訴えるような……はたまた何かを懇願するような悲哀に満ちた姿であった。  管理塔、この世界の大部分が壊滅状態に陥った未曾有の大危機。そんな中、犠牲者は息を深く吐いて一歩を踏み出した。  「あぁ分かってるよ、管理者……」  その手に握られた白銀の槍、加えて己の歯までも強く噛み締めるように現状を深く飲み込んだ。進み続ける一歩に迷いはなく、その槍に宿るは一つの揺るぎない意思のみである。  ____ダッ……!  犠牲者は駆け出す、両腕を大きく振るって駆け出したのだ。槍を高く構えた、そして振りかぶる瞬間に見せた僅かな表情の隙間には大粒の涙、それが溜まらず流れる瞬間が映し出されていた。  その時、脳裏では管理者の言葉を思い出す。  "「貴女には来るべき時の導き手となってもらいます。……と、私という役割は貴女に期待しています。」"  管理者の語った、その言葉の真意を未だ犠牲者は知らない。だがしかし、今はただ己の最優先に為すべき事を成すまでだ。犠牲者の放った一撃、時間を凌駕した。  時間が極端に遅く、著しくズレて止まっていく違和感、そんな感覚の中で犠牲者は己が放った槍先が手先から徐々に加速を伴って離れていく様子を知覚する。離れた掌、そして指の先へと続く一連の動作、それは推進力を増していき、次の場面ではとうとう指から離れていった。  槍の行く先を無意識に追っていた、それは微かな放射線上を描いた矛先、管理者の心臓部へと狙い澄ました必中必殺の一撃であった。しかし、未だ時間は進まない。ふと、犠牲者の涙に濡れた視線が上に傾いた。管理者の首から上、その表情はどこか無表情でありながらも確かに笑っていたのである。  管理者の笑顔、緩慢な世界で一瞬だけ動いた表情。そして、世界は再び加速する。  白銀の槍、その心臓を狙い撃つ。  ____パッ…!  場面が切り変わる、ここは現在。晴天の下、犠牲者の槍先、私の心臓を狙い撃つ。  ____くっ…!  私は死に物狂い、迫り来る槍を真横に素早く飛んで回避する。着地の際の一回転、私は身を軽やかに両足で殺した衝撃と共に地面へと瞬時に着用する。頬の汗、それを腕で拭い取る。先程の一撃、そんなものに当たりさえすれば怪我どころでは済まなかっただろう。そんな風な思考が、皮膚から噴き出した汗粒の流れ落ちる速度に伴って加速度的に私の脳へと必死に訴える。  犠牲者の声____、  「先程から、ただの人間とは思えない身のこなし。あんた、本当に何者かな?」  槍を肩に担ぐように犠牲者はゆっくりと迫り来る、私は小さな固唾を飲んで後退する。  「まっ、そんなの今更どうでもいい事か」  犠牲者が…、消えた____ッ!?  反射的に頭上に構えた右腕、そこに走った痛みが真っ赤な血となって吹き出した。右腕に貫通した一撃、私の表情は痛みに歪む。  咄嗟に槍を振り払おうとした瞬間、槍の刃が返しとなって抜けない事に気づく。だがしかし、気づいた時には遅すぎた。  犠牲者の両腕に込められた力、槍を大きく真横に薙ぎ払う。抗えない力に宙を舞った私の肉体、右腕の筋繊維が千切れた音と共に紅い血潮が噴いて私を遠くへと吹き飛ばす。  受け身のままならぬ体勢、顔を歪ませ、この土地の中心に位置する泉へと不時着する。跳ねた水飛沫の一部に赤が移る、そして滲むような赤色が水中を静かに侵していく。この泉は意外と浅かった、どうにか届いた爪先で水中から大きく顔を上げていた。  ____プハッ!……、ハァ……ハァ  心臓が嫌に鳴り響く、これは死と隣り合わせに鳴り響く単なる雑音である。だがしかし、私を追い詰める終焉の鐘でもあるのだろう。  「どうした?、まだ死闘は始まったばかりだぞ」  遠くの地面、犠牲者の槍先が私の脳天を指し示す。私は固唾を飲んで水中を歩く、それが浅瀬になるにつれて自身の衣服に染み込んで重みとなって胸から腹部、腹から太ももに駆けてを水が滝のように滴っていくのを感じた。  私は先程に貫かれた右腕を確かめる。痛みに震えて言うことを聞かないが、なんとか拳を握る事ぐらいなら出来る筈だ。私は残された左腕を肩の位置まで引き上げた、そして右側を庇うように左側を前へと構え出したのだ。  ____犠牲者と、ふと視線が搗ち合った。  「私に貴女という存在を殺したい、という明確な願望などありはしない。だけど、私は貴女を殺す気で戦わなければならない義務があり、使命であり、約束がある。だから、、、」  犠牲者の構えた槍先、私へと迫り来る。  「だから…!、貴女も殺す気で抵抗しなさい!」  私の瞳が捉えた、初撃を回避し、次撃も回避する。そして、止まらない連撃を片腕で弾いてどうにか的を逸らしていく。振りかぶられた横槍一閃、私は空中に跳ねて回避する。  ____ドッ…!?  だが、着地と同時に受けた腹部の痛み、犠牲者の蹴りが私の肉体を素早く吹き飛ばす。あまりの痛みに踏み締めていた両脚から崩れ落ちる、口元から吐いた唾液がひどく乾燥した地面へと染み込んだ。  ____ゲホ…!?、ゲホ!ゴホ…!  地面へと屈するように折れた背中、私は咽せた肺で必死に息を吸い込んだ。すると、私の頬に当てられた冷たい刃先、犠牲者は淡々と語る。  「立て、私は未だに立っているぞ?」  ____グッ…!  手に思わず力が入る、大振りの拳と共に私は跳ね起きた。  「だが、遅い…!」  ____ズバッ!  何撃かの槍が私の急所を逸れて繰り出された、肩と脇腹、頬と太ももを穿った一撃に呆気なく体勢が崩れ去っていく。  だがしかし……、  ____グイッ!  私の胸元を掴んだ犠牲者の腕、強引に私を引き寄せる。  「真面目にやれ、じゃなきゃ本気で死んでしまうぞ!」  ____苦しい!  私は痛む手足で抗った、しかし上手く力が入らなかった。抗えば抗うほど、それに比例して無数の傷口から流れる血の量も増していく。  私の意識は……、そこで…遠…い……た、  とある昔、管理者は語った、ここに訪れる者について語ったのだ。  「その者は弱く、拙く、まだまだ成長途中の雛鳥のような存在です。しかし、昔の貴女のように強くなろうとする意思。そして、その為ならば自己の全てを犠牲にする、という覚悟を有しています。……と、私という知識が未来を語ります。」  犠牲者は、ただ黙ったまま言葉に耳を傾けた。  「きっと、その者は過去に恐怖を感じ、そして現在に思いがけぬ希望を託し、未来へと繋がる権能を手に入れるでしょう。…と、私という観測が不確かな将来を予想します。」  ____えぇ、もしかすると……その者は、、、  「いいえ、きっと"彼女"の手には必ず希望という武器が握られている事でしょう。」  ____と、私という未来があなたに願いを託します。  そう、これこそ____、  その来るべき者の名こそが____!  ____ギィン…!?  金属同士が奏でた不協和音、犠牲者の槍が大きく弾かれる。それに相対する者の左手に握られたそれは、一振りの剣であったのだ。  そして、それは誠に不可解な剣でもあった。その剣に刃というものは存在しない、正確には刃と言える部分が錆びて歪んで到底何かを切れる代物には見えなかったのだ。そして、古い柄の部分にはムカデが巻かれたような歪な造形が施されていたのである。  犠牲者は、その不自然な姿に固唾を飲み、冷や汗を垂らしていた。  「その……剣は…」  ここで誰かの声が二人の脳裏に木霊する、それは錯誤者が言い残した言葉の一幕である。  "「これは餞別だよ、今は持ち合わせがないから代わりに【何か】を君にあげる」"  錯誤者は笑う、そんな声、そんな笑い声がこの死闘の最中に響き渡ったのであった。 https://ai-battler.com/character/d8089b26-1690-4f95-83a3-65ea9c4f9841